9. 50歳代に多い「やることが多すぎて、何から手をつければよいのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・奥田 朝が伝えたいこと

お金まわりで「やったほうがよさそうなこと」は、年数がたつほど少しずつたまっていきます。契約しているものが増え、制度を使った積み立ても始まり、そのうえで見ておいたほうがよいものが重なると、どれも大事に見えて順番がつけられなくなります。相談の場でも、内容が難しくて分からないというより、数が多くて手をつける場所が決まらない、という声をよくいただきます。

9.1 50歳代に多いお悩み相談は「やることが多すぎて、何から手をつければよいのか分からない」

50歳代(ご相談者)
やったほうがよさそうなことが多すぎて、何から手をつければよいのか分かりません。契約しているものが複数あって、何が何だか分からなくなっています。制度を使った積み立てもしていますし、そのほかにも見ておいたほうがよいと聞いたものがいくつかあります。どれも気にはなるのですが、全部となると手が止まってしまって、そのままになっています。

数が多いときに順番がつかないのは、判断の材料が足りないからではなく、比べる物差しが決まっていないからであることがほとんどです。物差しさえ決まれば、同じ量のままでも並べ替えることはできます。

9.2 【ファイナンシャルアドバイザー・奥田 朝が回答】急ぐものから順に並べ替えれば、量は変わらなくても手はつけられる

奥田 朝
「やることが多すぎてどれから手をつけていいか分からない」と決めつける前に、まずは冷静にお金の全体像を整理してみましょう。具体的には、税金の支払いや保険の満期など放っておくと選べなくなる期限のあるものを先に置きます。次に、毎月の固定費など出ていくお金を止められるものを置きます。そして、今すぐ急いで決めなくてよいものは思い切って後ろに回してしまいましょう。このように自分の中であらかじめルールを決めておくことが重要です。全部を一度に抱え込まずに一つ一つ優先順位をつけて取り組んでいくことが近道になります。

9.3 ポイント1:期限があるもの、放っておくと選べなくなるものを先に置く

最初に前へ出すのは、こちらの都合と関係なく期日が来てしまうものです。手続きに申請の期間が決まっているもの、届いた書類に返送の日付が書かれているもの、ある年齢や退職といった時期を過ぎると選べる方法が減ってしまうもの。こうしたものは、後回しにすると選択肢そのものが手元から消えてしまいます。逆にいえば、期日のあるものについては、こちらで悩まなくても並び順が向こうから決まっているということです。中身を細かく調べる前に、日付が書かれているかどうかという一点だけで先頭に寄せてしまってかまいません。なお、期限や条件は制度の改正で変わることがありますので、最新の内容は公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。

9.4 ポイント2:毎月出ていくお金を止められるものを次に置く

期日のあるものを抜き出したら、次は毎月お金が出ていっているもののうち、こちらの判断で止めたり減らしたりできるものを置きます。ここを2番目にするのは、動かした結果が翌月にはもう手元に表れるからです。効果が見えると次に進みやすくなりますし、何をどう動かしたかも記録に残ります。ただし、止める前に、それが何のために始めたものだったかを一度確かめてください。保障と一体になっている仕組みは、支出を止めるとその保障もなくなります。数を減らすこと自体を目的にせず、いまの自分に必要かどうかで一つずつ見ていくほうが、あとで困りにくくなります。

9.5 ポイント3:すぐに決めなくてよいものは後ろに回し、全部を一度に片づけようとしない

残ったものの多くは、今日決めなくても困らないものです。値動きのあるものをどう扱うか、将来の受け取り方をどうするかといった判断は、期日に追われているわけではありません。こうしたものは受け取れる額がそのときの状況によって変わり、場合によっては元本を下回ることもありますので、急いで結論を出すより、落ち着いて考えられるときまで待ってよいものです。後ろに回すというのは、放っておくことではなく「いまは決めない」と自分で決めることです。そのように置き場所を決めておけば、気になるたびに思い出しては手が止まる、ということも起こりにくくなります。3つに分けたうえで、まずは1番目の列にあるものを1つだけ片づける。それで十分に前へ進んでいます。

相談の場でも、やることの数が減ったわけではないのに、並べ替えただけで表情が変わる方は少なくありません。量そのものより、どこから始めればよいか分からない状態のほうが負担になっているのだと思います。

10. まとめにかえて

やるべきことがいくつも重なると、どれも同じ重さに見えて手がつけられなくなります。そういうときは、内容を深く調べる前に、期限があるもの、毎月出ていくお金を止められるもの、すぐに決めなくてよいものの3つに分けてみてください。分ける作業だけなら、中身が分からないままでもできます。全部を一度に終わらせる必要はありませんので、先頭に来たものから1つずつ手をつけていけば十分です。どれをどう扱うかはご家庭の状況によって変わりますので、判断に迷う場面では、個別の事情をふまえて専門家に相談することもご検討ください。

参考資料

奥田 朝