2026年度の加給年金は、配偶者分の年額が24万3800円と示されています。8月にも年金の定期支払いがあり、手元に届いた通知をもとに、受け取っているお金の中身を見直しやすい時期にあたります。
公的なお金には、条件に当てはまっていても、申請しなければ受け取れないものが少なくありません。ただ、対象になりそうなものを一度に全部確かめようとすると、かえって手が止まります。やることが多いときは、期限のあるものから先に置く。この並べ方は、公的な手続きでも、手元にある契約でも変わりません。この記事では、老齢年金に上乗せされる2つの給付、60歳以降の働き方に関わる雇用保険の3つの給付、医療・介護・生活の負担を抑える4つの仕組み、そして2025年に成立した年金制度改正で示された見直しを順に確かめます。そのうえで記事の後半では、ここで扱った制度を並べ替えると、時期が向こうから決まる列にいくつ入るのかを独自に試算します。
なお、60歳・65歳以上の方が対象となる公的給付金に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 公的な給付は、要件に当てはまっていることと受け取りが始まることが分かれている。老齢年金も「年金請求書」を提出するところから振り込みが動き出す
- 2026年度の加給年金は配偶者分が年24万3800円、老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円と示されている。在職老齢年金で減額が始まる基準額は65万円へ引き上げられた
- 独自試算では、この記事で扱った13の制度を並べ替えると、時期が向こうから決まる列が5件、出来事をはさんで選べる方法が変わる列が4件、必要になった時点で確かめればよい列が4件になった
1. 手をつける順番が決まらない公的なお金|請求を済ませて初めて振り込みが動き出す
60歳・65歳以上を対象にした公的な給付の全体像は、「【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説」に幅広くまとめられています。ここでは、その入り口となる手続きの位置づけを確かめたうえで、順番の話に入っていきます。
1.1 最初の一歩にあたる「年金請求書」の提出|老齢・障害・遺族の年金に共通する手続き
老齢・障害・遺族の各年金は、生活を支える土台にあたる仕組みです。もっとも、受給資格ができたところで自動的に振り込みが始まる組み立てにはなっていません。
受け取りを開始するには、自分自身で「年金請求書」を提出し、請求の手続きを済ませることになります。要件を満たしている状態と、実際に振り込みが始まっている状態は、この一手間をはさんで分かれているということです。
1.2 期日が定められているものが混じっているため、並べる順番が効いてくる
給付金や補助金についても、国のものか自治体のものかを問わず、申請を経て受け取る形が基本になっています。書類が足りなかったり、期限を過ぎてしまったりすると、受け取れる額が減る、あるいは受け取れないまま終わるという結果になることもあります。
ここで効いてくるのが、並べる順番です。制度の中には、こちらの都合とは関係なく日付や期間が決まっているものが混じっています。そういうものを後ろに置いたままにすると、選べる方法そのものが手元から減ってしまいます。逆にいえば、日付が決まっているものについては、順番を自分で悩まなくても向こうから決まっているとも言えます。
数が多いときは、中身を細かく調べる前に、時期が決まっているかどうかという一点だけで前後を分けてしまう進め方があります。全部を一度に片づけようとするより、手が止まりにくい方法です。なお、期限の有無や長さは制度によって異なり、改正されることもあるため、最新の内容は所管の窓口でご確認ください。
2. 【老齢年金】加給年金と老齢年金生活者支援給付金|手続きの時期が年齢や所得で決まる2つの上乗せ
老齢年金を受け取っている方が一定の要件に当てはまる場合、本体の年金に上乗せして受け取れるとされている制度が2つあります。どちらも、関わってくる時期がある程度決まっているという共通点があります。仕組みと2026年度の金額を確かめておきます。
2.1 時期が決まっている「加給年金」|65歳到達などの時点で判定される上乗せ
厚生年金に20年以上加入していた方が65歳を迎えた時点で、生計を維持している年下の配偶者や子どもがいる。この状態にあてはまる場合に加算されるとされているのが加給年金です。位置づけとしては、年金版の家族手当にあたるものと説明されます。
加給年金が加算されるタイミングと要件
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
年金への上乗せが生じるのは、上記のタイミングで「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合です。判定される時点が決まっているという点が、この制度の特徴になります。
一方で、配偶者加給年金額が支給停止となる取り扱いもあります。配偶者の側が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)や退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受給する権利を持っている場合、あるいは障害厚生年金・障害基礎年金・障害共済年金などを受給している場合が、これにあたります。
加給年金の年額(2026年度)
2026年度の年額として、加給年金には次の金額が示されています。
- 配偶者:24万3800円
- 1人目・2人目の子:各24万3800円
- 3人目以降の子:各8万1300円
これに加えて、配偶者の加給年金額には3万6000円から17万9900円の特別加算額が支払われます。額は老齢厚生年金を受給中の人の生年月日によって決まるため、同じ配偶者分でも1年あたりの金額には幅があります。
配偶者側へ移っていく「振替加算」
加給年金が終わるのは、配偶者が65歳を迎えたときです。ただし一定の要件を満たしていれば、そこから先は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」として一定額が引き継がれます。上乗せの相手が本人から配偶者へ移る、という流れになります。
2.2 前年の収入をもとに判定される「老齢年金生活者支援給付金」の仕組み
老齢基礎年金を受け取っている方のうち、所得や世帯収入が一定の基準を下回る方に対して、生活の底上げを目的に支給されるのが老齢年金生活者支援給付金です。根拠となる法律は年金本体とは別で、位置づけとしては「給付金」にあたります。
老齢年金生活者支援給付金の対象として示されている条件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)である
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
2026年度の給付基準額と改定の幅
2026年度の給付基準額は月額5620円で、前年度から3.2%の増額となりました。実際に受け取る額は、この基準額をもとに保険料の納付状況等をふまえて算出されます(下記①と②の合計額)。
給付額の算出方法
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円× 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
※保険料免除期間に乗ずる金額については、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変わることになっています。
2.3 受け取り始める時期をずらすときは、加給年金の扱いもあわせて見ておく
老齢厚生年金の受け取りを後ろにずらして待機している間は、原則として、その間に受け取れるはずだった加給年金も支給停止となる取り扱いがあります。配偶者の年齢や待機した期間によっては、受け取らなかった加給年金の総額が小さくない金額になり、増額分と差し引きでどうなるかが変わってきます。
なお、老齢基礎年金だけを繰り下げて、老齢厚生年金は65歳から受け取るという選び方をした場合には、厚生年金の受給にともなって加給年金を受け取ることができるとされています(この場合、厚生年金そのものの増額はありません)。増額率だけで判断せず、世帯全体で受け取れる額を並べてから決めるという順番が取れる部分です。取り扱いは制度の改正によって変わることもあるため、最新の内容は所管の窓口でご確認ください。
3. 【雇用保険】再就職手当・高年齢雇用継続給付・高年齢求職者給付金|働き方の変化と時期が結びつく3つの給付
働き続ける方に関わる、就労に結びついた給付についても確かめておきます。シニアの就労を支える制度は整いつつありますが、一般的には60歳を境に収入が下がる傾向があるとされています(※)。就職活動や就労の継続が、若い頃と同じようには進まない場合もあります。
ここでは、雇用保険に関連する手当や給付金を3種類取り上げます。いずれも、離職や再就職といった出来事をはさんだ時期に関わってくるものです。
※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円
3.1 「再就職手当」で額を決めるのは、基本手当の支給残日数
再就職手当は、早期の再就職を後押しするための手当です。「失業~再就職」「失業~事業開始」までの期間が短いほど、支給額が多くなる組み立てになっています。時期が額に直結するという点で、順番の前のほうに来やすい制度です。
再就職手当を受けるための対象と要件
- 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
支給残日数に応じて分かれる給付率
- 手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なります。(1円未満の端数は切り捨て)
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の70%」
このほか、再就職手当を受け取って再就職先で6カ月以上雇用され、かつ再就職先での6カ月間の賃金が離職前の賃金よりも少ない場合には、「就業促進定着手当」の対象になるとされています。こちらは6カ月がたってから関わってくるもので、確かめる時期が後ろにずれます。
3.2 60歳到達時との比較で判定される「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が就労を続ける際に、賃金が60歳到達時よりも減少した場合に支給される給付金です。比べる相手が60歳到達時の賃金になるため、その時点の記録が判定の土台になります。
高年齢雇用継続給付が支給される条件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
- 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
支給率と、年金との調整で生じる支給停止
- 支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%
老齢年金を受給しながら、厚生年金に加入して「高年齢雇用継続給付」を受け取る場合には、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する金額が支給停止となる取り扱いがあります。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%
3.3 「高年齢求職者給付金」は一括で支給されるという違い
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が失業した際に支給される給付金です。離職した年齢によって、関わってくる制度が入れ替わる部分にあたります。
高年齢求職者給付金の対象と要件として示されている内容
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
被保険者であった期間で分かれる支給額
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
受け取り方にも違いがあります。65歳未満が受け取る「失業手当」は4週間に一度ずつ失業認定を受けてから給付されるのに対し、高年齢求職者給付金は一括で支給されます。
3.4 60歳代前半は、手続きに着手する順番が受け取る総額に響く場面がある
雇用保険の基本手当(失業手当)をハローワークでの手続きを経て受給する場合、求職の申込みを行った日の属する月の翌月から、失業給付の受給期間が経過する月、または所定給付日数を受け終わる月のいずれか早い月までの期間、65歳未満に支給される「特別支給の老齢厚生年金」が全額支給停止となります。
失業手当の日額より年金のほうが高かった場合には、結果として受給総額が目減りするケースもあり得ます。60歳代前半の退職では、基本手当の受給総額と、支給停止される特別支給の老齢厚生年金の総額を並べたうえで、どちらの手続きから進めるかを考えるという順序が取れます。
なお、65歳到達日以後に退職した場合は「高年齢求職者給付金」となりますが、65歳以降の老齢年金は雇用保険の給付と調整されないため、同時に満額受給できるとされています。65歳未満での受給とは扱いが大きく異なる部分です。
4. 【医療・介護・生活】負担に上限を置く4つの制度|先に手続きをしておくか、あとから申請するかで分かれる
60歳代、70歳代と年齢を重ねるにつれて、家計に重くのしかかってくるのが医療費と介護費用です。こうした出費が家計を圧迫するのを防ぐため、公的医療保険や介護保険には上限額の機能や払い戻しの仕組みが用意されています。ここで見ておきたいのは、先に手続きを済ませておくものと、あとから申請するものが分かれているという点です。
4.1 「高額療養費制度」は事前の手続きの有無で立て替えの重さが変わる
ひと月(月の初めから終わりまで)にかかった医療費の自己負担額について、年齢や所得に応じて定められた「自己負担限度額」を超えた分が、あとから払い戻されるとされている制度です。
一般的な所得層(70歳未満・年収約370万〜約510万円)の場合、ひと月の自己負担限度額の基本は「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」と示されています。
ここで順番が効いてきます。事前の手続きをしないままだと、退院時に窓口でいったん大きな金額を立て替え払いすることになり、払い戻し(還付)を受けられるのは3〜4ヶ月後になります。一方、2026年現在では、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくか、マイナ保険証を利用することで、窓口で支払う額を最初から上限額までにとどめることが可能とされています。入院の予定が見えた時点で先に済ませておく側の手続き、ということになります。
4.2 「高額介護サービス費」で計算に入らない費用がある
介護保険サービスの利用で支払った自己負担額(1割〜3割)を1カ月分合計し、所得に応じた上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻されるとされている制度です。
あわせて押さえておきたいのが、「介護施設での食費・居住費(部屋代)・日常生活費」や「特定福祉用具購入費・住宅改修費」は、この計算対象から完全に除外されるという点です。
上限があるからと見込んでいると、対象外の食費や居住費が毎月10万円以上加算され、資金が足りなくなる要因になりえます。上限が置かれる範囲と、その外側に残る費用を分けて見ておくところが確かめどころです。
4.3 「高額医療・高額介護合算療養費制度」は8月から翌年7月までを1年として見る
医療費と介護費用の自己負担額を1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)分まとめて世帯で合算し、基準額を超えた場合に払い戻しを受けられるとされている制度です。
年間単位での計算になるため意識から離れやすいのですが、支給対象となる世帯には原則として医療保険者から案内が届くとされています。ただし、計算期間の途中で「75歳になり後期高齢者医療制度に移行した」「退職して会社の健康保険から国民健康保険に切り替わった」といった保険の異動があった場合には、データが分断されて案内が届かず、自ら過去の保険者に申請して合算手続きを行わないと時効(2年)で消滅してしまうことがあると説明されています。保険が変わった年は、順番の前のほうに置いておきたい制度です。
4.4 「臨時給付金・自治体の支援」は税法上の扶養状況が判定に影響する
「住民税非課税世帯」を対象として、政府や自治体が物価高騰対策の名目で7万円や10万円の臨時給付金を支給することがあります。
この給付金は、その時々の補正予算や地方交付金を活用した一時的なものです。募集の期間が区切られているぶん、案内を見かけたときに確かめる側に入ります。
判定については、「住民税が課税されている方(別居の家族などを含む)の税法上の扶養親族等のみで構成されている世帯」は、世帯分離をして住民票上は非課税の単身世帯になっていても、給付の対象外(不該当)とされる点が示されています。つまり、住民票上の世帯状況にかかわらず、税法上の扶養状況が判定に影響します。
4.5 世帯分離を選ぶ前に確かめておきたい保険料の扱い
世帯を分ければ住民税非課税世帯になり、上限も下がり、給付金の対象にもなる。そうした説明を目にすることがありますが、実際には別の側面もあります。世帯を分けた結果、勤め先の健康保険の扶養から外れ、国民健康保険料と介護保険料が単独で請求されることになり、差し引きで負担が増える場合もあります。
負担を軽くする仕組みは、税金や社会保険料の負担が増える側とセットで並べてから見るという順番が取れます。どちらに転ぶかは世帯の状況によって変わりますので、取り扱いは制度や自治体によって異なる点も含め、最新の内容は所管の窓口でご確認ください。
窓口での負担や払い戻しの区分は、年齢が上がった時点でまた別の枠組みに切り替わります。75歳以降の負担割合と高額療養費のつながりについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法
5. 施行が先の見直しも、いまの段階で置き場所を決めておく|2025年6月成立の年金制度改正
2025年6月に成立した「年金制度改正法」は、働き方や家族構成が多様になっている現状に年金制度を対応させることを、大きな柱のひとつに据えたものとされています。盛り込まれた内容としては、いわゆる「106万円の壁」撤廃に関連する社会保険加入要件の拡大のほか、遺族年金に関する見直しも挙げられています。
施行の時期が先の内容を含むため、いま何かを決める必要はありません。ただ、どの年代のどういう状況が対象になるのかだけ押さえておくと、そのときに調べ直す手がかりになります。
5.1 男女で扱いが分かれていた遺族厚生年金は、2028年4月から変わる
現在の遺族厚生年金のしくみでは、受給者の性別によって次のような差がありました。
現行の遺族厚生年金で示されている男女差
- 女性
- 30歳未満で死別:5年間の有期給付
- 30歳以上で死別:無期給付
- 男性
- 55歳未満で死別:給付なし
- 55歳以上で死別:60歳から無期給付
この男女差については、解消に向けた見直しが2028年4月から施行される予定とされています。
2028年4月から施行予定とされている仕組み
男女それぞれについて、「原則5年間の有期給付」の対象になるかどうかを分ける要件が細かく定められています。
- 女性:施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのは、「18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です。(※既に遺族厚生年金を受給している方や、2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けません。)
- 男性:新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、「18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方」です。
- こどもがいる場合:18歳年度末までのこどもがいる場合は、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります。
5.2 「有期給付加算」と5年目以降の給付継続について示された内容
配慮が必要な場合に受け取れる給付についても、金額と要件の両面から中身が具体化されました。
- 有期給付の増額:有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
- 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件:5年間の有期給付終了後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、概ね月額20〜30万円を超えると全額支給停止となります。
見直しの対象には遺族基礎年金も含まれています。同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れなかったケースについて、2028年4月からは、こどもが単独で遺族基礎年金を受け取れるようになるとされています。
5.3 働きながら受け取る年金の減額基準が65万円に引き上げられた
働きながら年金をもらうと年金が減額される「在職老齢年金」の仕組みについては、就労意欲を阻害しているとの指摘があり、減額される基準額が65万円に引き上がりました。
これらは施行の時期が先の内容を含みます。期限の有無や長さは制度によって異なり、改正されることもあるため、最新の内容は所管の窓口でご確認ください。
6. やることが多いときは、期限のあるものから先に置く|公的な手続きでも手元の契約でも並べ方は同じ
ここまで見てきた制度を並べると、関わってくる時期の決まり方が一様ではないことが分かります。日付や期間が制度の側で決まっているもの、離職や退職といった出来事をはさんで扱いが変わるもの、必要になった時点で確かめれば足りるもの。この3つが混ざっています。
数が多いときに順番がつかないのは、判断の材料が足りないからではなく、比べる物差しが決まっていないことが多いようです。制度の重要さで並べようとすると、どれも大事に見えて動けなくなります。一方、時期が決まっているかどうかという一点だけなら、中身を細かく調べる前でも仕分けられます。
そして、この並べ方は公的な制度に限った話ではありません。手元にある契約についても、更新の時期が決まっているもの、勤め先が変わったときに手続きが要るもの、いつ確かめても内容が変わらないものが混ざっています。前の2つを先に置き、残りは後ろに回す。整理の仕方としては同じ形になります。
なお、運用の要素を含む契約では価格変動リスクがあり、受け取る時点の値動きによって金額が変わり、元本割れとなる場合もあります。あらかじめ額が決まっているのか、そのときの状況によって変わるのか。この違いも、公的な給付と手元の契約を並べて見るときの手がかりのひとつになります。
7. 手をつける順番をめぐって相談の場で挙がりやすい3つの疑問
ここでは、公的な給付の手続きについて相談の場で挙がりやすい質問を3つに絞って整理します。いずれも該当するかどうかは人によって変わるため、実際の判断は所管の窓口で確かめる前提でお読みください。
7.1 配偶者の社会保険の扶養と失業手当は、どの数字で判定が分かれるのか
分かれ目になるのは、失業手当(基本手当)の「日額」です。失業手当は非課税なので所得税の計算には入りませんが、健康保険の扶養審査においては「収入」として厳格にカウントされます。基準となるのは、60歳未満なら日額3612円(年収換算130万円未満)、60歳以上なら日額5000円(年収換算180万円未満)です。これを超えている場合、手当を受給している期間中は配偶者の扶養に入れず、自分で国民健康保険に加入して保険料を支払うことになります。退職の前に日額の見込みを出しておくと、どちらの手続きから進めるかを決めやすくなります。
7.2 役所から案内が来ない場合、確かめる順番をどう考えればよいのか
案内が来ないことが対象外を意味するとは限りません。年金生活者支援給付金のようにハガキが届くものもありますが、加給年金、高年齢雇用継続給付、失業手当などは、すべて「自己申告(申請主義)」だと説明されています。条件を満たしていても案内が送られない制度があるということです。順番としては、いま自分に近い出来事がある制度から、年金事務所やハローワークで尋ねてみるという進め方があります。
7.3 特別支給の老齢厚生年金と失業手当のどちらを選ぶかは、何を比べれば決まるのか
比べる材料は2つです。ひとつは個別の「年金額」、もうひとつは「失業手当の日額・給付日数」。この2つを並べて計算してみないと答えは出ません。現役時代の給与が高く、失業手当の日額も高い方であれば、ハローワークで手続きをしたほうが多くなります。反対に、給与が低めで年金加入歴が長い方の場合は、失業手当を受けずに年金をもらい続けたほうが、合計の受取額では多くなることもあります。順番としては、退職前に最寄りの年金事務所で年金見込額を出し、そのうえでハローワークの失業手当計算ツール等で試算してみる、という進め方があります。
8. 【独自試算】この記事で扱った制度を3つの列に並べ替えると、それぞれいくつになるか
ここまで、いくつもの給付と制度が並びました。そこで、この記事で扱ったものを「時期が向こうから決まる列」「出来事をはさんで選べる方法が変わる列」「必要になった時点で確かめればよい列」の3つに並べ替えると、それぞれいくつになるのかを数えてみます。金額の計算ではなく、並べ方の基準を決めて仕分ける試算です。
置いた前提は次の5点です。ここでの仕分けは、この記事に書かれている内容だけを手がかりにした整理であり、どれを先にすべきかを決めるものではありません。期限の有無や長さは制度によって異なり、改正されることもあるため、最新の内容は所管の窓口でご確認ください。
- 仕分けの対象は、この記事で取り上げた給付・制度に限る。ほかの制度は足していない
- 列1の手がかりは、日付・期間・計算期間が制度の側で決まっていると記事に書かれているかどうか
- 列2の手がかりは、離職・退職・受け取り開始といった出来事をはさむと、選べる方法や金額の見え方が変わると記事に書かれているかどうか
- 列3は、上のどちらにも当たらず、必要が生じた時点で確かめても内容が変わりにくいもの
- 具体的な申請期限や時効の年数は、記事に書かれているもの以外は補わない
この記事で取り上げた給付・制度を書き出すと、全部で13になりました。
- 老齢年金の本体(受け取りの開始)
- 加給年金
- 振替加算
- 老齢年金生活者支援給付金(補足的老齢年金生活者支援給付金を含む)
- 失業手当(基本手当)
- 再就職手当
- 就業促進定着手当
- 高年齢雇用継続給付
- 高年齢求職者給付金
- 高額療養費制度
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 住民税非課税世帯を対象とした臨時給付金・自治体の支援
列1:時期が向こうから決まると書かれているもの … 5件
- 再就職手当(基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あることが要件とされ、就職までの期間が短いほど額が多くなる)
- 高額療養費制度(事前に「限度額適用認定証」を申請するか、マイナ保険証を利用しておくと窓口の支払いを上限額までに抑えられる)
- 高額医療・高額介護合算療養費制度(毎年8月1日〜翌年7月31日が計算期間。保険の異動があった場合は自ら申請しないと時効(2年)で消滅してしまうと書かれている)
- 住民税非課税世帯を対象とした臨時給付金・自治体の支援(その時々の補正予算や地方交付金を活用した一時的なものとされている)
- 高年齢求職者給付金(離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あることが要件とされている)
列2:出来事をはさむと、選べる方法や見え方が変わると書かれているもの … 4件
- 老齢年金の本体(「年金請求書」の提出から受け取りが始まり、受け取り始める時期をずらすかどうかの選択がある)
- 加給年金(65歳到達などの時点で判定され、繰り下げの待機中は原則として支給停止となる取り扱いがある)
- 失業手当(基本手当)(手続きをすると特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止となる期間が生じる)
- 高年齢雇用継続給付(60歳到達時の賃金との比較で判定され、支給要件を満たした時期によって支給率が異なるとされている)
列3:必要になった時点で確かめても内容が変わりにくいもの … 4件
- 振替加算(配偶者が65歳を迎えたあとに引き継がれる)
- 老齢年金生活者支援給付金(前年の収入と世帯の課税状況で判定され、ハガキが届くものとして挙げられている)
- 就業促進定着手当(再就職先で6カ月以上雇用されてから関わってくる)
- 高額介護サービス費(介護サービスを利用して自己負担が生じてから関わってくる)
13件を並べ替えると、5件・4件・4件という分かれ方になりました。割合にすると、時期が向こうから決まる列がおよそ38%、出来事をはさんで変わる列がおよそ31%、必要になった時点で確かめればよい列がおよそ31%です。
この並びから見えてくることが3つあります。ひとつめは、列1に入った5件については、順番を自分で考えなくてもよいという点です。日付や計算期間が制度の側で決まっているので、こちらが悩む余地がありません。中身を調べる前に、日付が書かれているかどうかという一点だけで先頭に寄せてしまえます。
ふたつめは、列2の4件が「カレンダーではなく、きっかけで並ぶ」という点です。離職、退職、受け取りの開始。こうした出来事が近づいてきたときにまとめて確かめる、という置き方が合います。日付が決まっていないぶん、いつ見るかを自分で決めておかないと、そのまま流れていきやすい部分でもあります。
みっつめは、列3の4件を後ろに回してよいという点です。ここに入ったものは、必要が生じてから確かめても内容が大きく変わりにくいものです。後ろに回すというのは、放っておくことではなく「いまは見ない」と決めておくことです。置き場所さえ決めておけば、気になるたびに手が止まる、ということも起こりにくくなります。
13件のうち9件が列1と列2に入りましたが、これは9件を今日じゅうに片づけるという意味ではありません。該当しない制度は、そもそも列から外れます。働いていない方に雇用保険の給付は関わりませんし、介護が始まっていなければ介護の制度も出番がありません。自分に関係するものだけを残すと、実際に並ぶ数はもっと少なくなることがほとんどです。
どれを最初に置くかは、年齢、働き方、世帯の状況によって変わります。ここでの並べ方はあくまで記事の記述にもとづく目安であり、実際の取り扱いを示すものではありません。期限の有無や長さは制度によって異なり、改正されることもあるため、最新の内容は所管の窓口でご確認ください。


