10. 50歳代に多い「候補が多すぎて、何から見て絞ればよいのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・鶴田 綾が伝えたいこと

非課税で運用できる制度の口座を開いたあと、いざ商品を選ぶ画面まで進んだところで手が止まってしまった、というお話をうかがうことがあります。並んでいる本数が多く、どこから見ていけばよいのかが分からない、という声です。

10.1 50歳代に多いお悩み相談は「候補が多すぎて、何から見て絞ればよいのか分からない」

50歳代(ご相談者)

非課税で運用できる制度の口座はすでに開いています。ただ、選べる商品の一覧を開いてみると候補が多すぎて、何から見て絞ればよいのかが分かりません。

ほかにも金融商品をいくつか持っていて、今あるものをどう整理するかと、これから何を選ぶかの両方で迷っています。老後のためのお金として続けていきたい気持ちはあるのですが、比べ方の順番が分からないまま止まっています。

相談の場では、一覧を上から順に見ていったものの、どれも似た説明に見えて決め手がつかまえられない、という声を聞くことが少なくありません。候補の数が多いこと自体よりも、見る順番が決まっていないことが迷いを長引かせている、という整理に行き着くことがよくあります。

10.2 【ファイナンシャルアドバイザー・鶴田 綾が回答】商品どうしを比べる前に、見ていく順番を決める

鶴田 綾

まずは、今保有している金融商品の一覧表を作成しましょう。そして、自分が老後資金にいくら必要なのか目標額を設定しましょう。
目標額に対して、今保有している金融商品で運用を続けて目標を達成できそうかも確認します。
また、保有している商品に偏りがないかも確認しましょう。例えば、投資しているものが株式だけで、投資先が米国ばかりであれば、アメリカ経済になにかあれば投資資産にも影響がでて一時的に資産が暴落することも十分ありえます。
あと、自分のリスク許容度についての把握も欠かせません。
なんとなく良さそうだからという理由で自身のリスク許容度を超えたものに投資をしてしまうと、リスクの高さへの恐怖心から投資を長く続けることができないからです。
「自分のリスク許容度を満たす」「保有している商品とは異なる特徴である」「目標金額を達成させるためのリターンが期待できる」などに焦点をあてて商品選びをしましょう。

10.3 ポイント1:そのお金をいつ、何のために使うのかを先に決めて、見る範囲を狭める

商品を見比べるところから始めると、比べる軸が定まらないまま候補の数だけが目に入ります。先に決めておきたいのは、そのお金をいつごろ、何のために使うつもりなのかという点です。老後の生活のために長く置いておくお金なのか、数年のうちに使う予定があるお金なのかで、そもそも見るべき商品の性質が変わってきます。

使う時期が決まると、「今の自分には向かない」と分かるものが出てきます。絞り込みというのは、良いものを探し当てる作業というよりも、この段階で見なくてよいものを外していく作業に近いといえます。すでに持っている金融商品がある場合も、同じように「これはいつ使うお金か」から見ていくと、新しく選ぶものと役割が重なっていないかが分かりやすくなります。

10.4 ポイント2:全部の中から探さず、制度の枠で対象になっているものから候補を並べる

世の中にある金融商品をすべて並べて比べようとすると、候補は膨大になります。ただ、非課税で運用できる制度には枠の種類があり、そのうち長期の積立を想定した枠では、一定の基準を満たしたものが対象として届け出られる仕組みになっています。つまり、自分でゼロから絞り込む前に、制度の側である程度の絞り込みがすでに行われている、と考えることができます。

対象となる商品の一覧は、金融庁が公表しています。どの枠を使うのかを決めたうえで、その枠で選べるものから見ていくと、最初に向き合う候補の数はかなり減ります。なお、制度の枠の内容や条件は改正されることがありますので、最新の内容は公的機関の情報や、口座を持つ窓口でご確認ください。

10.5 ポイント3:最後に残ったものを、値動きの幅と続けやすさで見比べる

ここまでで候補が数えられる程度まで減ったら、最後に見比べる軸を決めます。ひとつは値動きの幅です。どの商品も価格が変動し、投資したお金が購入時の金額を下回る、いわゆる元本割れの可能性があります。そのうえで、振れ幅が大きく出やすいものと、比較的なだらかなものがあります。もうひとつは、持ち続けているあいだにかかる費用です。長い期間持つつもりであれば、この点も比較の材料のひとつになります。

大切なのは、どれが一番増えるかを当てにいくのではなく、下がった局面でも手放さずにいられそうかという観点で見ることです。この順番で進めると、「どれが正解か」を探す問いから、「自分はどれなら続けられそうか」という問いに変わっていきます。ここまで来て決めきれない場合は、いったん少額から始めて、様子を見ながら考えるという進め方もあります。

候補の数そのものを減らすことはできませんが、見る順番を決めておくと、実際に目の前で比べる対象はぐっと少なくなります。相談の場で「頭が整理できた」と言っていただけるのは、多くの場合、新しい商品を知ったときではなく、この順番が見えたときです。

11. まとめにかえて

選べる商品が多いことは、本来は選択肢が広いという意味でもあります。それでも迷いが長引くのは、比べる順番が決まっていないまま、いきなり商品どうしを並べてしまうためであることが多いように感じています。使う時期を決める、制度の枠で対象になっているものから見る、最後に値動きの幅と続けやすさで比べる。この順番であれば、どれか一つが決まらなくても、次に何を確かめればよいかが分かります。

ここでお伝えしたのは、こう並べれば正解にたどり着くという手順ではなく、迷いにくくなる進め方の一例です。どの商品にも価格変動リスクがあり、順番を工夫しても元本割れの可能性がなくなるわけではないという前提は変わりません。また、どのような選び方が合うかは、収入や家族の状況、そのお金を使う時期によって変わります。ご自身の状況にあてはめた判断については、専門家に個別にご相談いただくことをおすすめします。

参考資料

鶴田 綾