14. 50歳代に多い「積立の掛金をいくらにすれば控除が活きるのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・橋本 優理が伝えたいこと
税制の優遇がある制度で積立を始めたあと、年末調整の時期が近づいてから控除の扱いが気になってくる、というご相談は少なくありません。ここでは、ファイナンシャルアドバイザーが日頃の面談でよく受けるご相談のひとつを、個人が特定されないよう内容を一般化したうえで取り上げます。
14.1 50歳代に多いお悩み相談は「積立の掛金をいくらにすれば控除が活きるのか分からない」

すでにいくつかの契約をお持ちの方ほど、新しく始めた積立が年末調整とどうつながるのかが見えにくくなりやすいものです。相談の場でも、税制の優遇という言葉がひとつの意味で使われていないことが、迷いのもとになっている場面によく行き当たります。
14.2 【ファイナンシャルアドバイザー・橋本 優理が回答】2つの優遇を分けたうえで、効き方と掛金の変更可否を順に確かめる
それぞれの制度や商品の仕組みを理解したうえで、運用益が非課税になるのか、掛金が所得控除になるのかを整理しましょう。
また、制度や金融商品によって、毎月の掛金を変動できるか、解約したときの扱いがどうなるのかも異なります。
年末調整の時期に慌てないためにも、これを機に制度の仕組みを再度確認しておきましょう。
14.3 ポイント1:運用益が非課税になる仕組みと掛金が所得控除になる仕組みは別のもの
相談の場でまず分けてお話ししているのが、この2つです。どちらも税制の優遇と呼ばれますが、優遇が働く場所が違います。ひとつは、積み立てたお金を運用して利益が出たときに、その運用益に税金がかからないという仕組みです。もうひとつは、払い込んだ掛金そのものがその年の所得控除の対象になり、所得税や住民税を計算するもとになる金額が小さくなるという仕組みです。前者は運用の結果に対して働くもので、利益が出なければ優遇される部分もありません。後者は運用の結果とは関係なく、払い込んだという事実に対して働きます。年末調整で書類に記入することになるのは、後者のように掛金が控除の対象になる仕組みのほうです。運用益が非課税になる仕組みは、年末調整の書類に書く場面が生じない扱いになっているものもあり、ここを同じものとして考えていると、書くべき欄が見つからずに戸惑うことになります。まずは、自分が持っている仕組みがどちらの性質のものなのかを一つずつ確かめる。この整理が最初の一歩になります。
14.4 ポイント2:所得控除の効き方は収入や他の控除の状況によって変わる
掛金が所得控除の対象になると聞くと、掛金を増やせばそのぶん税の負担が軽くなる、と受け取られることがあります。ただ、実際にどれだけ効くかは、その方の収入の状況と、すでに使っている他の控除の状況によって変わります。所得控除は、税額そのものを直接差し引く仕組みではなく、税額を計算するもとになる金額を小さくする仕組みです。そのため、もともとの収入がどれくらいか、家族の状況によってどんな控除が使えるか、保障を兼ねた契約や社会保険料などですでにどれだけ控除を使っているか、といった条件によって、同じ掛金でも結果は変わってきます。相談の場では、この点を先にお伝えしたうえで、年末調整の書類に何を書いてきたかをご一緒に確かめる、という進め方をすることが少なくありません。いくら軽くなるかを先に見積もろうとすると、前提の置き方ひとつで数字が動いてしまい、かえって判断が難しくなります。ご自身の場合にどう効くのかは、勤務先の担当部署や公的機関が出している情報でご確認いただくのが確かなやり方です。
14.5 ポイント3:掛金は途中で変えられるかどうかも含めて決める
金額を決めかねているというお声には、決めたら動かせないのではないか、という心配が含まれていることがあります。そこで確かめておきたいのが、掛金を途中で変えられる仕組みなのか、変えられるとしてどのような手続きや条件がつくのか、という点です。変更ができる仕組みであれば、はじめから上限まで使い切ることを考えるより、続けられる金額から始めて、収入や家計の状況を見ながら調整していくという進め方も選べます。反対に、変更に制限がある仕組みであれば、決める前に確かめておく必要があります。あわせて、いつから引き出せるのか、どの時期にどう受け取ることになるのかも、始める前に見ておきたい部分です。積み立てた資金を運用に回す部分には価格の変動があり、元本割れとなる可能性があります。加入できる条件や払い込める金額の範囲、受け取るときの税金の取り扱いは制度によって定められており、改正によって変わることもありますので、実際に金額を決める前には、勤務先の担当部署や公的機関の情報でご確認いただきながら進めていただければと思います。
相談の場では、優遇の大きさを比べる前に、自分が持っている仕組みがどちらの性質のものかを分ける、という順番に行き着くことが少なくありません。使える控除も適した掛金も、収入や家族の状況によって変わりますので、個別の判断については、状況を確かめながら専門家とご一緒に進めていただければと思います。
15. まとめにかえて
税制の優遇という言葉は、いくつかの異なる場面で使われます。運用して得た利益に税金がかからないという意味で使われることもあれば、払い込んだ掛金がその年の所得控除の対象になるという意味で使われることもあります。同じ言葉でも、優遇が働く場所が違えば、年末調整で書く欄があるかどうかも変わってきます。
そして、掛金が所得控除の対象になる仕組みであっても、その効き方は一律ではありません。収入の状況、家族の状況、すでに使っている他の控除の状況によって、同じ掛金でも結果は変わります。掛金を増やせばこれだけ軽くなる、と一律に言い切れるものではない、という点は押さえておきたいところです。
金額を決めるときには、掛金を途中で変えられるかどうか、いつからどのように受け取ることになるのかもあわせて確かめておくと、あとから見直しやすくなります。運用に回した部分には価格の変動があり、元本割れとなる可能性もあります。加入できる条件や払い込める金額の範囲、受け取るときの税金の取り扱いは制度によって定められており、改正によって変わることもありますので、勤務先の担当部署や公的機関が出している情報でご確認のうえ、個別の判断については専門家に相談しながら進めていただければと思います。
参考資料
- LIMO「【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説」
- 総務省「個人住民税」
- 神戸市「住民税(市県民税)とは」
- 神戸市「住民税(市県民税)がかからない人」
- 神戸市「いくらまでの収入なら住民税(市県民税)が課税されませんか?」
- 総務省「個人住民税」
- 厚生労働省「高額療養費制度について」
- 大阪市「介護保険料の減免及び軽減について」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化」
- NHK「受信料免除の対象となる方について」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- 国税庁「扶養控除」
- 国税庁「一時所得」
橋本 優理
