7. 50歳代に多い「増えた分を繰り上げ返済に回すか、運用に回すか決められない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・鶴田 綾が伝えたいこと

住まいの借入を返しながら本業以外の収入も得ている方から、増えた分の使い道について迷っているというご相談をいただくことは、よくあります。

7.1 50歳代に多いお悩み相談は「増えた収入の使い道を決めかねている」

50歳代(ご相談者)
住まいの借入を返しながら、副業でも収入を得ています。非課税の制度を使った積立や、債券での運用にも関心があります。急な出費に備える資金は、数カ月分を手元に確保しています。それでも、増えた分を繰り上げ返済に回すのか、運用に回すのか、決められないままです。

同じようなご相談は少なくありません。手元の備えはすでに整っているのに、返済と運用のどちらを先に置くかというところで判断が止まってしまう、という状態です。どちらを選んでも一定の効果があるからこそ、迷いが長引きやすいところでもあります。

7.2 【ファイナンシャルアドバイザー・鶴田 綾が回答】確かめる順番を決めると、迷いは整理しやすくなる

鶴田 綾
まずは、急な出費に備える資金について具体的な数字を算出しましょう。一般的に必要と言われる「生活費数ヶ月分」では、実際お金が必要になった時に不足する可能性があります。
あらゆる万一の際に備えられるだけの資金はいくらか改めて計算し、その分のお金を確保しましょう。
また、住宅ローンを返済中ということは住宅ローン控除などで減税の恩恵を受けられている可能性があります。繰上げ返済をすることで返済期間が短くなり控除を受けられなくなることもあるので、その点について借入先などに確認しましょう。
その上で、ローンの金利と運用した場合の期待利回りなどを比較しながら、「借金を減らせるという確実性」を取るのか、「資産を増やす期待ができる可能性」を取るのか判断しましょう。難しい場合は、IFAなどに相談しながら考えを整理すると安心です。

7.3 ポイント1:急な出費に備える資金が確保できているかを先に確かめる

最初に確かめていただくのは、急な出費が生じたときに使える資金が手元にあるかどうかです。ここが整わないまま配分だけを決めると、想定外の支出が起きたときに、運用している資産を値下がりした場面で取り崩したり、あらためて借り入れたりすることになりかねません。生活費の何カ月分を手元に置くかは、収入の安定度や家族の状況によって変わりますので、一律の目安をあてはめるより、ご自身の事情から考えていただく形になります。すでに数カ月分を確保できているのであれば、次の判断に進む土台はできていると考えられます。

7.4 ポイント2:返済を急ぐかどうかは、税制上の優遇が続く期間と条件しだいで変わる

次に見るのが、返済を急ぐかどうかです。住まいの借入には税制上の優遇が用意されている場合があり、その優遇が続いている間は繰り上げ返済を急がないという考え方もあります。返済を早めれば利息の負担は軽くなりますが、同時に優遇の対象となる残高も減っていきますので、両方を見比べたうえで判断する形になります。ただし、適用される期間や条件は、個々の契約の内容や制度改正によって変わります。ご自身のケースでどうなるかは、借入先や税務の窓口、専門家に確認していただくのが確かです。一般的な説明だけで判断せず、ご自身の条件に当てはめて確かめていただければと思います。

7.5 ポイント3:そのうえで、余裕が出た分の使い道をあらためて決める

そのうえで、余裕が出た分の使い道を考えます。優遇の期間が終わったあとや、家計に余裕が出てきた段階であらためて運用を検討する、という進め方も選択肢の1つです。値動きを受け入れて収益を狙う資金と、元本の安定を優先する資金では役割が違いますし、値動きが小さいとされるものにも価格変動はあり、元本割れが起きないわけではありません。それぞれの性質を確かめたうえで、ご自身の優先順位に合う配分を考えていく形になります。

返済と運用のどちらが正しいかという問いに、家計を問わず通用する答えはありません。手元の備え、優遇が続く期間と条件、そのあとの配分という順に確かめていくと、迷いは整理しやすくなります。

8. まとめにかえて

厚生年金の平均年金月額は全体で月15万円台、国民年金は月5万円台でした。都道府県別に並べると、厚生年金は最も高い県と最も低い県で月4万円を超える開きがあり、国民年金は5万円台から6万円台に収まっています。金額の決まり方が違えば、ばらつきの大きさも変わってくるということです。

こうした土台の数字は、これから用意する上乗せの大きさを考える出発地点として使えます。ただ、上乗せをどこから捻出し、どこへ振り向けるかまでは、公的な統計は教えてくれません。副業などで増えた収入の使い道は、そこを自分で決める場面にあたります。

記事のなかで示した試算は、金利と利回りを一定と置いた目安です。有利さの順番は、借入金利と想定利回りの大小によって入れ替わります。運用の成果は市場環境によって変動し、積立元本を下回ることもありますので、数字そのものより、何と何を比べれば判断できるのかという見取り図として使っていただければと思います。

適切な配分は、住まいの形、働き方、家族の状況によって一人ひとり異なります。まずはねんきん定期便やねんきんネットで見込み額を確かめ、あわせてご自身の借入金利を確認するところから始めてみてください。なお、制度や税制の取り扱いは改定されることがあり、適用される期間や条件も契約によって変わりますので、手続きに関わる部分は関連する窓口や専門家に確認のうえで進めてください。

参考資料

鶴田 綾