2. 退職前後で変わる生活費と貯蓄。60歳代は「老後生活の入り口」、70歳代は「本格的な取り崩し」に

60歳代と70歳代では、家計の局面が変わります。一般的に60歳代は退職金が入り、年金の受け取りが始まる転換期です。

60歳代で仕事を続ける方も今は多いですが、70歳代になると退職し、貯蓄からの取り崩しが本格化する時期です。年代差をふまえて備えを整えることが、老後の安心につながります。

60歳代の平均2683万円・中央値1400万円は、退職金なども加わって厚くなった状態と考えられます。ここで使い方を決めずにいると、70歳代で取り崩しが進んだとき、想定より早く目減りしかねません。

70歳代の中央値が1178万円と60歳代より下がるのは、さまざまな要因が考えられますが、貯蓄の取り崩しの可能性も考えられます。

だからこそ、60歳代のうちに「1年にいくらまで」という上限を決めておくことが効いてきます。まず年金の手取りで生活費がどこまでまかなえるかを確かめ、足りない分を貯蓄から補う設計にしましょう。上限を決めて管理すると、想像以上の貯蓄の目減りを防ぐこともできます。

また、「お金の置き場所をどこにするか」が老後資金を変える場合もあります。リスクは取りにくい年代ですが、情報収集を重ね、可能な範囲で検討するのも一つでしょう。一点、運用する場合には、資産を取り崩しをすることも考え、金額や金融商品、投資方法などを考えたいものです。

あわせて、どちらか一人になったときの家計も一度考えておくと安心です。遺族年金にも受給要件がありますから、早めに見通しを共有しておくことが、二人の備えになります。年金は生活の土台の一つですから、制度を早くから調べておきましょう。

3. 元証券会社員からのアドバイス

60〜70歳代二人以上世帯の貯蓄は、平均2683万・2416万円、中央値1400万・1178万円でした。退職前後の家計を整えるために、今日からできることを3つお伝えします。

一つ目は、夫婦二人分の年金の手取りを確かめること。生活費をどこまでまかなえるかがわかると、取り崩しの必要額が見えてきます。

二つ目は、1年に取り崩す上限を決めること。60歳代の厚い時期に決めておくと、70歳代で慌てずにすみます。

三つ目は、どちらか一人になったときの家計も見ておくこと。年金は世帯で減ることがあるため、早めに見通しを共有しておきましょう。

宮野 茉莉子

証券会社でご相談を受けていたお客様は、その多くが60歳以上で、退職金の運用を考えていた方々でした。「まとまった資金の置き場所をどうすべきか?」「大切なお金だから減らしたくないけど、取り崩しを考えると運用をして増やしたい」と悩まれる方も多かったです。

60歳代のうちに取り崩しは「1年にいくらまで」を決めておくことが、蓄えを長持ちさせるコツです。また、資産運用をする場合でも、早いうちから情報収取を行い、自身の納得いく運用を考えましょう。先延ばしにしてしまうと、すぐに1年、3年、5年と経ってしまいます。

また、夫婦世帯は二人分の年金が土台になりますが、どちらか一人になれば年金は減ることもあります。早めに見通しを共有しておくことが、二人の安心につながります。

まずは、夫婦の年金手取りと取り崩しの上限を、一度紙に書き出してみてください。数字にすると、これからの使い方が落ち着いて決められます。

大切なのは、完璧を目指すことではなく、続けられる形にすることです。今日できる小さな一歩から始めれば十分です。数字を一度書き出すだけでも、これからの見通しはぐっと立てやすくなります。

4. 60歳代は老後資金の貯め方・使い方を決める年代に

今回は、60〜70歳代二人以上世帯の平均貯蓄額(2683万・2416万円)と中央値(1400万・1178万円)を確認しました。70代で中央値が下がるのは、取り崩しが進むためとみられます。

退職前後の家計は局面が変わるので、家計管理も難しくなりますが、一つ一つ見える化して対処していくことが大切です。60歳代は老後資金の貯め方・使い方を決める年代として、じっくりと家計や貯蓄に向き合うといいでしょう。ここで具体的に考えたことが、70歳代、80歳代…へと生きてきます。

今日からできることは3つです。まず、夫婦二人分の年金手取りを確かめること。次に、1年に取り崩す上限を決めること。

そして、どちらか一人になったときの家計も見ておくこと。退職前後のお金の見通しを、夫婦で一度整理しておきましょう。

参考資料

宮野 茉莉子