9. 30歳代に多い「示された数字をどこまで信じてよいか」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・筒井 亮鳳が伝えたいこと

保障を兼ねた保険の契約手続きを進める場面では、示された試算の見方をめぐって迷いが生まれることがあります。ここからは、資産形成の相談の場でよくあるご相談を、一般的な事例として紹介します。特定の個人のお話ではなく、同じような迷いを抱える方も多いテーマとしてご覧ください。

9.1 30歳代に多いお悩み相談は「契約手続きの途中で、示された数字を信じてよいのか分からなくなった」

30歳代(ご相談者)
いま、保障を兼ねた保険の契約手続きを進めているところです。ただ、途中で手が止まってしまいました。将来の受取率がどのくらいになるのか、元本割れすることはないのか、気にしはじめるときりがありません。見せていただいた試算の表は分かりやすいのですが、この数字をどこまで信じてよいのか迷っています。

手続きが進んでから迷いが出てくるというご相談は、日頃からよく受けるものです。表そのものへの疑いというより、その表をどう読めばよいのかが分からない、という戸惑いが背景にあることも少なくありません。

9.2 【ファイナンシャルアドバイザー・筒井 亮鳳が回答】示された表は予測ではなく、置いた前提を数字に翻訳したもの

筒井 亮鳳
保険に限らず資産運用をするにあたってはリスクはつきものになってきます。リスクと一概に言っても為替リスクや株価変動リスクや早期解約リスクなど様々なものがあります。改めて自分自身がどれくらいの期間運用できるのか、預貯金にはどれだけ残しておくといいかを考えておく必要があります。そのため「示された数字をどこまで信じてよいか分からない」と決めつける前に、その表は前提の置き方しだいで結果が動くものだと捉え直し、低い成果が続いた場合まで見ておき、そのうえでご自身が受け入れられる範囲を決めることが、手続きを続けるか一度止めるかを落ち着いて考える手がかりになります。

9.3 ポイント1:示された数字は、前提の置き方で動く

試算の表は、これから起きることを言い当てた予測ではなく、「一定の成果が続いたと仮定したら」という前提を数字の形に置き換えたものです。前提が変われば、支払う保険料が同じでも、示される到達額は変わります。参考として過去の運用の記録が添えられることもありますが、それは過去にそうだったという記録であって、これから同じ動きになると約束するものではありません。数字そのものを読む前に、その数字がどんな前提の上に立っているのかを先に確かめる。相談の場では、そこから話を始めることが多いです。

9.4 ポイント2:低い成果が続いた場合まで見ておく

前提が確かめられたら、次は示された表のなかで最も低い前提の行を見て、その結果でも受け入れられるかどうかを考えます。さらに、その低い水準が一時的ではなく長く続いた場合はどうかというところまで広げておく。保障を兼ねた保険は運用の成果によって受け取れる額が変わる仕組みですので、解約する時期によっては払い込んだ金額を下回る、いわゆる元本割れの可能性もあります。良い前提と悪い前提の両方を並べておくと、自分が何に迷っているのかがはっきりしてきます。

9.5 ポイント3:受け入れられる範囲を、自分の言葉で決める

そのうえで、どこまでの振れ幅なら受け入れられるのかを、自分の言葉で決めておきます。このとき、利回りの数字だけを取り出して投資商品と横並びに比べると、保障という役割の部分が計算から抜け落ちてしまいます。保険は保障とセットになった仕組みで、支払った保険料のすべてが運用に回るわけではないためです。「保障として備えたいのはどこまでか」と「値動きを受け入れて増やしたい資金はどれくらいか」を先に分け、それぞれの役割ごとに考えていく。そのうえで、手続きを一度止めて内容を確かめ直すという選択もあります。

前提の置き方も、受け入れられる範囲も、家族構成や働き方、いま備えている保障の内容によって変わります。表の数字を1つに決め打ちせず、複数の前提を並べて幅で眺めておくと、契約したあとに相場が動いても判断の軸が残ります。契約内容や税制の取り扱いで判断に迷う点があれば、契約先の担当窓口や専門家に確かめておくとよいでしょう。

10. まとめにかえて

年代別の一覧表や男女別の平均額は、いま年金を受け取っている人たちの実績です。将来の自分の金額そのものではありませんが、どの程度の水準が現実に支給されているのかを知る材料にはなります。

そのうえで上乗せ分を考えるとき、想定利回りをどこに置くかで到達額は大きく振れます。今回の試算でも、積み立てた金額は同じなのに、年利1%と年利7%では結果が2倍以上に開きました。数字が動いた理由は運用の巧拙ではなく、前提の置き方です。

シミュレーションは、決め打ちの答えを出す道具というより、前提を目に見える形にするための道具だと考えると扱いやすくなります。低めの前提でも暮らしが回るかを確かめ、制度改正や働き方の変化があれば置き直す。その繰り返しが、見通しの精度をゆっくりと上げていきます。

なお、必要額も適切な前提も、家族構成や働き方、お住まいの制度の適用状況によって変わります。公的年金の見込み額は「ねんきんネット」や年金事務所で自分の記録から確認できます。税制や社会保険の取り扱いについては、勤務先の担当部署や専門家にご確認ください。

参考資料

筒井 亮鳳