2026年度は年金額が改定され、6月の支払分から新しい金額での振込が始まっています。あわせて2026年4月からは在職老齢年金の基準額も緩和され、働きながら年金を受け取る人をめぐる条件が変わりました。
秋にかけては、誕生月に届く「ねんきん定期便」で自分の加入記録を眺める機会もあります。そこに並ぶ数字を見て、老後資金の計算をやり直してみたものの、置いた前提を少し変えただけで答えがまるごと入れ替わってしまい、どれを信じればよいのか分からなくなる。そんな戸惑いは、決してめずらしいものではありません。
将来の見通しは、いくつかの前提を組み合わせて初めて1つの数字になります。裏を返せば、前提が変われば数字も変わるということです。この記事では、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、60歳代から80歳代までの平均年金月額を1歳刻みの一覧表で確認し、男女別の平均額と受給額の広がり、さらに2025年に成立した年金制度改正の内容までを整理していきます。
なお、2026年度の年金額や公的年金の仕組み、平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 2026年度の年金額は国民年金が前年度比1.9%増、厚生年金(報酬比例部分)が同2.0%増。ただし通知書に載るのは税金や社会保険料が引かれる前の「額面」で、手取りはこれより少なくなります。
- 65歳以降の平均年金月額は厚生年金が14万円~16万円台、国民年金が5万円~6万円台。64歳までの数字には繰上げ受給や特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人が含まれ、性質が違います。
- 厚生年金の平均は男性16万9967円・女性11万1413円。受給者は月額1万円未満から30万円超まで広く分布しており、平均という1つの数字だけでは見通しの前提として心もとない面があります。
1. 2026年度の年金額改定|通知書の「額面」と手取りが一致しない理由
まず、見通しを立てるときの土台になる2026年度の金額を確認します。改定内容と通知書の見方については、【2026年最新】60歳~89歳の年金一覧表!年代別の平均受給額と「手取り・非課税世帯」のリアル!年金口座の「凍結リスク」とは?から要点を引用します。
2026年度の年金額は、国民年金が前年度比1.9%増、厚生年金(報酬比例部分)が同2.0%増の増額改定となりました。国民年金(満額・1人分)は月額7万608円、厚生年金(モデル夫婦世帯・2人分)は月額23万7279円です。
ただし「ねんきん定期便」などに記載された金額は税金や社会保険料が引かれる前の「額面」であるため、実際の手取り額はこれより少なくなります。
老後の家計を試算するとき、この「額面」をそのまま収入欄に入れるか、天引き後の金額に置き直すかで、結論は同じ人でも変わってきます。何が引かれるのかについても、あわせて引用しておきましょう。
6月に届く「年金額改定通知書」「年金振込通知書」では、今年度の年金額と実際の振込額を確認できます。「年金振込通知書」には、介護保険料、公的医療保険料、個人住民税・森林環境税、所得税・復興特別所得税といった年金からの天引き(特別徴収)の内訳が記載されています。
なお、天引きには前年度の情報をもとに仮の金額を徴収する「仮徴収(4・6・8月)」と、確定額から仮徴収分を差し引いて調整する「本徴収(10・12・2月)」があり、10月以降に天引き額が増えて手取りが減るケースもあります。
同じ年度のなかでも、仮徴収の期間と本徴収の期間では振込額が動きます。1回分の振込額を12倍して年収を出すと、実態とずれる場合があるということです。
2. 公的年金の2階建て|「加入期間で決まる部分」と「報酬で変わる部分」
次に、年金額の個人差がどこから生まれるのかを整理します。制度の骨格については、【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金から要点を引用します。
日本の公的年金は、2階建て構造で、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金(会社員・公務員)となっています。
国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる基礎的な年金制度です。自営業やフリーランス、学生などが主に加入し、保険料は自分で納めます。受給額は加入期間に応じて決まりますが、満額でも月約7万円程度が目安です。厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金制度で、国民年金に上乗せして支給されます。保険料は給与から天引きされ、収入や加入期間によって将来の受給額が変わります。
1階は「何年納めたか」でほぼ決まる定額部分、2階は「いくらの報酬で何年加入したか」で動く部分です。見通しを立てるときに幅が出やすいのは2階のほうで、転職や離職、働き方の変更が挟まるほど、置く前提の数も増えていきます。
3. 【60歳代の年金一覧表】64歳と65歳のあいだに段差ができるわけ
ここからは、いまのシニア世代が実際にどれくらいの老齢年金を受け取っているのかを、1歳刻みの一覧表で見ていきます。
年齢別の平均額は、将来の自分の受給額を当てはめるための数字ではありません。ただ、どの程度の水準が現実に支給されているのかという「相場観」を持つ材料にはなります。
なお、記事内で紹介する厚生年金の月額には、国民年金の月額部分が含まれています。
3.1 厚生年金|60歳代の平均月額(1歳刻み)
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
3.2 国民年金|60歳代の平均月額(1歳刻み)
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
65歳から69歳を見ると、厚生年金は14万円台から15万円台、国民年金は6万円台に収まっています。
いっぽう64歳までの数字は、繰上げ受給(※1)を選んだ人や、特別支給の老齢厚生年金(※2)の報酬比例部分だけを受け取っている人の金額です。65歳以降とは中身が異なるため、平均額も低めに出ています。この段差を「加齢とともに年金が増える」と読むと、前提の置き方を誤ることになります。
※1 繰上げ受給:老齢年金を60歳~64歳までで前倒しして受け取ること。繰上げた月数に応じて年金が減額(0.4%/月)され、一度決まった減額率は生涯変わりません。
※2 特別支給の老齢厚生年金:昭和60年の法改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度。年齢など一定条件を満たす場合に受け取ることができます。
4. 【70歳代の年金一覧表】平均月額がほぼ横ばいで推移する年代
続いて、70歳代の各年齢の平均月額です。
4.1 厚生年金|70歳代の平均月額(1歳刻み)
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
4.2 国民年金|70歳代の平均月額(1歳刻み)
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
70歳代は、厚生年金が14万円台から15万円台、国民年金が5万円台後半から6万円台という水準です。年齢が1歳変わっても金額の動きは小さく、ほぼ横ばいで推移しています。
5. 【80歳代の年金一覧表】上の年齢ほど平均が高く出る背景
次に、80歳代の各年齢の平均月額を確認します。
5.1 厚生年金|80歳代の平均月額(1歳刻み)
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
5.2 国民年金|80歳代の平均月額(1歳刻み)
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
80歳代は、厚生年金が15万円台から16万円台、国民年金が5万7000円台から5万9000円台です。厚生年金は年齢が上がるほど平均が高くなる形になっています。
ただし、ご紹介したデータはどれも「その年齢の平均」にすぎません。実際の年金額は現役時代の働き方や保険料の納付状況によって一人ひとり異なり、同じ年齢でも大きく開きがあります。
6. 【男女別の年金一覧表】平均という1つの数字では見えない広がり
公的年金の受給額は、現役時代の加入状況をそのまま反映するため、個人差と男女差が生じます。
ここからは60歳以上のすべての受給権者について、平均額と、その平均がどんな分布から生まれているのかを見ていきます。
6.1 厚生年金|男女の平均差と受給者の分布
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※上記の金額には国民年金の部分が含まれています
厚生年金の受給者数(月額1万円刻み)
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均は全体で15万円台ですが、男性は16万円台、女性は11万円台と、男女で約6万円の開きがあります。現役時代の給与水準や厚生年金への加入期間の差が影響していると考えられます。
分布に目を移すと、月額1万円未満の層から30万円を超える層まで、受給者は非常に広い範囲に散らばっています。キャリアや収入がそのまま年金額に映る厚生年金では、平均という1つの数字が代表しているものは思いのほか少ない、ということでもあります。
6.2 国民年金|男女差が小さく収まる仕組み
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の受給者数(月額1万円刻み)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金は男女ともに6万円台が中心で、分布上のボリュームゾーンは「6万円以上7万円未満」です。満額(2026年度は月額7万608円)に近い金額を受け取っている人が多いことがうかがえます。
収入にかかわらず保険料が定額であるため、厚生年金と比べて個人差が小さいのが国民年金の特徴です。前提を置くという観点では、1階部分のほうが振れ幅の小さい変数だといえます。
7. 2025年成立の年金制度改正|働き方をめぐる前提が動く4つの見直し
公的年金は受け取る段階だけの話ではなく、働き方やキャリアの選び方とも地続きです。制度が変われば、見通しを立てるときに置いていた前提そのものが書き換わります。
2025年6月13日、国会で年金制度改正法が成立しました。見直しのうち、働く人の仕事と暮らしに関わりの深いものを取り上げます。
7.1 短時間労働者の加入要件|賃金要件と企業規模要件の撤廃
- 賃金要件の撤廃:3年以内にいわゆる「年収106万円の壁」撤廃へ
- 企業規模要件の撤廃:10年かけて段階的に対象の企業を拡大(※)
※2025年7月時点では「51人以上」
7.2 個人事業所の適用拡大|2029年10月から従業員5人以上の全業種へ
- 2029年10月から個人事業所の社会保険の適用対象(※)が、従業員5人以上の全業種に拡大(2029年10月時点における既存事業所は当面除外)
※2025年7月現在「常時5人以上の者を使用する法定17業種」は加入必須。(法定17業種とは:①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業
7.3 在職老齢年金|減額の基準額が月51万円から65万円へ
2026年4月から、年金が減額される基準額(※)が「月収51万円(2025年度の金額)から65万円」に緩和されました。働きながらでも年金を満額もらいやすくなります。
※支給停止調整額(年金が減額される基準額):年金を受給しながら働くシニアの「賃金+老齢厚生年金」の合計がこの金額を超えると、年金支給額が調整される。
7.4 標準報酬月額の上限|月65万円から75万円へ段階的に引き上げ
厚生年金などの保険料や年金額の計算に使う賃金の上限(※1)を「月65万円から75万円」へ段階的に引き上げ(※2)。従来よりも現役時代の賃金に見合った年金を受給できるようになります。
※1 標準報酬月額:厚生年金や健康保険の保険料、年金額を計算するために、月々の報酬と賞与を一定の幅で区切った基準額のこと
※2 2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円に引き上げ
想定する利回りを変えると積立の結果がどこまで動くのかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【月3万円×20年】預金と新NISAの資産差はいくら?「利回り5%の積立投資 VS 金利0.3%の銀行預金」シミュレーションで徹底比較
8. 【試算】月2万円を25年|想定利回りを1%・3%・5%・7%に置き換えると到達額はどう動くか
ここまで見てきた公的年金は、前提の振れ幅が比較的小さい収入です。いっぽう、上乗せとして自分で積み立てる部分は、想定利回りをどこに置くかで結果が大きく変わります。同じ積立額でも到達額がどれだけ違ってくるのか、試算で並べてみましょう。
8.1 置いた前提
- 毎月2万円を25年間(300カ月)積み立てる
- 積立元本は合計600万円
- 想定年利は1%・3%・5%・7%の4パターン
- 月利は「(1+年利)の12分の1乗-1」で求め、毎月末に積み立てて複利で運用が続くものとする
- 税金・手数料・インフレの影響は考慮していない
8.2 想定利回り別の到達額(25年後・目安)
- 年利1%:約681万円(元本600万円に対して増えた分は約81万円)
- 年利3%:約887万円(同 約287万円)
- 年利5%:約1171万円(同 約571万円)
- 年利7%:約1566万円(同 約966万円)
積み立てた金額は4パターンとも同じ600万円です。それでも、年利1%と年利7%では到達額に約885万円の差が生まれます。差額が元本そのものを上回るということで、結果を動かしていたのは積立の努力ではなく、置いた前提のほうだと分かります。
この到達額を、65歳から20年(240カ月)かけて取り崩す前提で月あたりに直すと、年利1%なら約2万8000円、年利3%なら約3万7000円、年利5%なら約4万9000円、年利7%なら約6万5000円が目安です(取り崩し中の運用は考慮していません)。国民年金の平均月額が5万9310円であることを思うと、前提の置き方ひとつで「上乗せが1階部分に届くかどうか」という水準まで振れることになります。
ただし、これはあくまで一定の利回りが25年間続いたと仮定した場合の計算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。実際の運用では価格が上下し、途中で大きく値下がりする局面もあります。取り崩しを始める時期の相場によっては、受け取れる金額が積立元本の600万円を下回る、いわゆる元本割れが起きる可能性もあります。数字を1つに決め打ちせず、低めの前提でも暮らしが成り立つかを確かめておく。試算の使い道は、そのあたりにあります。



