9月は、年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」の請求書が、対象になった方へ順次送られ始める月です。手続きをしないと受け取れない仕組みのため、この時期は問い合わせが増えます。
一方、現役世代の相談では、老後に向けて積み立てを始めたいものの、毎月まわせる金額がごくわずかで踏み切れない、という声をよくうかがいます。少ない金額では意味がないのではないか、まとまった資金ができてからのほうがよいのではないか。そう考えて時間だけが過ぎてしまう、というケースも少なくありません。
この記事では、老後の収入を下支えする年金生活者支援給付金について、2026年度の給付額と支給の対象になる人、そして請求の手続きを整理します。公的年金がどのくらいの水準なのかを確かめたうえで、自分で備える部分をどう考えるかを見ていきます。
なお、年金生活者支援給付金の制度内容や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準以下の年金生活者を支える仕組みとして2019年に始まりました。2カ月に一度、公的年金に上乗せして支給されます。
- 2026年度の給付額は前年度から3.2%の引き上げ。老齢年金生活者支援給付金の基準額は月額5620円で、この金額どおり受け取れる場合、1回の支給で約1万1000円、年額では約6万7000円になります。
- 受け取るには請求の手続きが必要です。すでに年金を受け取っている人で新たに対象になった場合、毎年9月1日以降に請求書が順次送られます。
1. 少額でも積立を始める前に|公的年金の受取額には人による開きがある
毎月まわせる金額をどう決めるかは、老後にどれだけの収入が見込めるかによって変わります。まず確かめておきたいのが、その土台にあたる公的年金の水準です。
平均的な金額については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認します。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。
年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
厚生年金は現役時代の報酬と加入していた期間で金額が動きますので、同じ年齢でも受け取る額は一様になりません。国民年金だけの場合は、納めた月数が金額を左右します。
ここで押さえておきたいのは、平均に自分を当てはめても見込み額とはずれる場合がある、という点です。土台が高い人ほど自分で備える部分は小さくてよく、土台が低い人ほどその部分は大きくなります。積み立てにまわす金額を決めるときの基準は、平均ではなく自分の見込み額のほうにあります。
2. 年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」|2026年度の基準額は月額5620円
公的年金の水準を確かめたところで、年金に上乗せされる仕組みも見ておきましょう。この給付金は、年金収入やそのほかの所得額が一定の基準を下回る年金生活者を支えるために、2019年に始まりました。支給は2カ月に一度で、公的年金の振込に上乗せされる形で届きます。
受給中の年金の種類によって、給付金は次の3つに分かれます。それぞれに支給要件と支給額(基準額)が設定されています。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
2.1 2026年度の支給金額|前年度から3.2%の引き上げ
2026年度の給付金額は、前年度から3.2%の引き上げとなりました。金額は次のとおりです。
【2026年度】
- 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5620円
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
このうち老齢年金生活者支援給付金は、基準額をそのまま受け取れるとは限りません。この基準額に基づき保険料納付済期間等に応じて、実際の給付額が計算される仕組みになっています。
ここに並べた金額は、いずれもひと月あたりの水準です。振込は2カ月分をまとめて年金に上乗せする形で行われますので、基準額どおりに受け取れる場合、1回あたりでは約1万1000円。1年分に置き換えると約6万7000円という計算になります。
なお、「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円です。基準額どおりの金額になるとは限らず、実際に受け取っている人の平均はこれよりも低い水準にとどまっています。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。
3. 年金生活者支援給付金を受け取れるのはどのような人か
ここからは、年金生活者支援給付金の支給要件についても見ていきましょう。以下の所得基準額は、令和8年10月分から適用されるものです。
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」を受け取れるのは、それぞれの基礎年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中で、前年の所得が491万8000円以下の人です。
判定には障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれず、扶養親族等の数に応じて所得基準額は変わります。
なお、老齢年金生活者支援給付金のみ、本人の所得以外に「年齢」と「世帯全体の状況」が支給要件に加わります。次で整理していきましょう。
3.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記1~3の要件をすべて満たす人です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は82万4100円以下
なお、老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
また「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」は「補足的老齢年金生活者支援給付金(※)」の支給対象となります。
※補足的老齢年金生活者支援給付金:1956(昭和31)年4月2日以後に生まれた方で82万6500円を超え92万6500円以下である方、1956年4月1日以前に生まれた方で82万4100円を超え92万4100円以下である方に支給されます。所得が増えるにつれて、補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は減ります。
4. 請求の手続きをしないと受け取れない|9月から順次届く請求書
この給付金は、要件を満たしたからといって自動的に年金へ上乗せされるものではありません。受け取るには、こちらから請求の手続きを行う必要があります。
すでに年金を受け取っている方が、所得が下がったことで新たに対象となった場合は、毎年9月1日以降、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送られます。
4.1 すでに年金を受け取っている人に届く緑色の封筒
※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。
これから65歳を迎える方の場合は、届き方が異なります。誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書へ同封される形で給付金の請求書が送られます。必要事項を書き入れ、老齢基礎年金の請求書とあわせて提出する流れになります。
4.2 2年目以降の手続きと、金額を確かめられる通知書
この給付金は、一度請求書を出しておけば、支給要件を満たしているかぎり2年目以降の手続きは要りません。そのまま継続して受け取れます。
継続して支給されるかどうかは前年の所得をもとに判定され、その結果は毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。対象から外れた場合には「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届きます。
なお、その年度(4月分から)にいくら支給されるかは、毎年6月上旬に届く「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」と「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確かめられます。
年金にまつわる制度には、このように請求してはじめて受け取れるものが少なくありません。届いた書類を確かめる習慣が、そのまま受け取れる金額につながる場面もあります。
年金の上乗せや医療・介護に関する給付金など、60歳・65歳以上の方が申請して受け取れるお金の全体像についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説
5. 【独自試算】月3000円・5000円・1万円を20年積み立てると到達額はどこまで動くか
公的年金の水準と、上乗せの給付金という仕組みを確かめました。ここからは、自分で備える部分を少額から始めた場合に、どのくらいの金額に届くのかを1つの試算として並べてみます。
前提は次のとおりです。
- 積立期間:20年(240カ月)
- 想定利回り:年3%。月利は年利を12で割るのではなく、1.03の12分の1乗から1を引いた約0.2466%を使用
- 毎月末に一定額を積み立て、分配金などは再投資されるものとする
- 途中で金額の増減や引き出しは行わないものとする
- 税金・手数料・物価の変動は考慮しない
この前提で、毎月の金額を3通りに置き換えます。
- ケースA:月3000円を積み立てる(元本72万円)→ 約98万円
- ケースB:月5000円を積み立てる(元本120万円)→ 約163万円
- ケースC:月1万円を積み立てる(元本240万円)→ 約327万円
ケースAでは、20年で積み上げた元本72万円に対して、到達額は約98万円。差にあたる約26万円が運用によって上乗せされた部分にあたります。ケースBでは元本120万円に対して約43万円、ケースCでは元本240万円に対して約87万円が上乗せ分となりました。
金額の大小にかかわらず、上乗せ分は元本のおおむね3分の1程度という同じ比率で並んでいます。これは、どのケースも同じ20年という期間を運用に回した前提を置いているためです。金額が小さいと効果が薄れるという関係にはなっていない、という見方ができます。
一方で、この試算はどの金額を選ぶべきかを示すものではありません。年3%という利回りが20年間そのまま続くという前提そのものが、あくまで仮のものです。実際の運用では価格が上下し、想定を下回る年も、上回る年もあります。20年の途中で取り崩せば、結果は上の数字とは別のものになります。
また、到達額の絶対値だけを見れば、月1万円のケースが最も大きくなります。ただし、家計に無理のある金額を設定して途中で止めてしまえば、その期間の運用も止まります。続けられる金額から始めて、収入や支出の状況が変わったところで見直していくという進め方も選べます。
※上記は一定の利回りが続いたと仮定した場合の目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。実際の運用では価格が変動し、元本割れとなる可能性があります。税金・手数料は考慮していません。金額はいずれも概算です。



