3. 遺族厚生年金の額はどう決まるか

判断の材料として、金額の決まり方も見ておきます。

3.1 報酬比例部分の4分の3

遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。老齢基礎年金は含まれません。

なお厚生年金保険の被保険者である間に死亡したときなど一定の要件による場合は、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月未満のときは300月とみなして計算します。300月は25年にあたります。

3.2 65歳以上は2つの計算を比べる

65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、2つの額を比較します。

1つは死亡した方の報酬比例部分の4分の3の額、もう1つは死亡した方の報酬比例部分の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額です。高いほうが遺族厚生年金の額になります。

4. 65歳以上は支給の形が決まっている

受け取り方についても、選択の余地は限られています。

4.1 老齢厚生年金が優先される

平成16年の年金制度改正により、平成19年4月1日からは、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある方は、老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。

自分自身が納めた保険料を年金額に反映させるための仕組みです。どちらを受けるか選ぶのではなく、扱いが決まっている形になります。

4.2 古い受給権者には選択制が残る

平成19年4月1日前に遺族厚生年金を受ける権利を有し、かつ同日においてすでに65歳以上だった方は、平成19年4月1日前と同様に3つの組合せから選択することになります。

老齢基礎年金と遺族厚生年金を受給する、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給する、老齢基礎年金と遺族厚生年金の3分の2と老齢厚生年金の2分の1の合計を受給する、の3つです。3つ目は遺族厚生年金の受給権者が死亡した方の配偶者である場合に限られます。

5. 手続きで見落としやすい点

実務的な注意点も挙げておきます。

5.1 裁定請求が必要になる

遺族厚生年金の受給権者が、老齢厚生年金、退職共済年金または遺族共済年金を受ける権利を有するときは、遺族厚生年金の支給額の決定のため、これらの年金の裁定の請求が必要です。

遺族厚生年金の額を決めるために、自分の年金の請求も必要になるということです。片方だけ手続きをすればよいわけではありません。

5.2 第1号期間があれば別の給付も

国民年金の第1号被保険者期間がある方が死亡した場合は、別途、寡婦年金や死亡一時金を受給できる場合があります。

遺族厚生年金だけを見て終わらせず、亡くなった方の加入歴を確かめておきたいところです。該当しそうな場合は年金事務所で相談してみてください。

6. まとめにかえて

原則として66歳に到達した日以前に遺族年金等を受け取る権利を有した場合は、老齢年金を繰り下げて受給することができません。待機期間中に権利を得た場合は、その時点で増額率が固定されます。

令和7年の法律改正により、令和10年3月31日時点で遺族厚生年金の権利があり65歳に到達していない方、つまり昭和38年4月2日以降生まれの方は扱いが変わります。老齢厚生年金は遺族厚生年金を請求していない場合に限り、老齢基礎年金は請求の有無にかかわらず繰下げ請求ができるようになります。

繰り下げるかどうかは、遺族年金の権利の有無で前提が変わります。自分がどの扱いになるかは、年金事務所で確認してみてください。

参考資料

村岸 理美