4. テレワークとリモートワークは何が違うのか

用語も整理しておきます。

国の統計や制度で使われるのは「テレワーク」です。国土交通省の調査では、雇用型のテレワークを「ICT等を活用して、普段出勤して仕事を行う勤務先とは違う場所で仕事をすること、又は勤務先に出勤せず自宅その他の場所で仕事をすること」と定義しています。

一方の「リモートワーク」は、国の統計や制度の文書では用いられていない呼び方です。企業や個人が日常的に使う呼び方で、指している中身はテレワークとほぼ同じです。

「在宅勤務」はさらに狭く、テレワークのうち自宅で行うものを指します。自宅以外のサテライトオフィスやカフェでの勤務も含めた総称がテレワーク、という関係です。

求人や社内規程を読むときは、この3語がどの範囲を指しているのかを確認しておくと誤解が減ります。

5. 地域と性別で、これだけ差がある

全国平均だけを見ていると見落とすのが、内訳の偏りです。

令和7年度の雇用型テレワーカーの割合を地域別に見ると、次のようになります。

  • 首都圏:37.7%
  • 近畿圏:25.0%
  • 中京圏:22.8%
  • 地方都市圏:17.2%

首都圏は東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県、地方都市圏はそれ以外の道県です。首都圏の37.7%に対し、地方都市圏は17.2%。2倍以上の開きがあります。

首都圏は令和2年度以降、3割超の水準を維持しています。リモートワークが定着したという実感と、まったく広がっていないという実感が同時に存在するのは、住んでいる場所によって見える景色が違うためだともいえそうです。

性別でも差があります。雇用型テレワーカーの割合は男性31.7%、女性17.8%。13.9ポイントの差です。

【図表2】雇用型テレワーカーの割合(居住地域別・性別/令和7年度)2/2

【図表2】雇用型テレワーカーの割合(居住地域別・性別/令和7年度)

各種資料をもとにLIMO編集部作成

職種構成の違いなど複数の要因が考えられますが、この調査からは理由までは読み取れません。

なお、地域別の数値については、令和7年度調査と令和2〜6年度調査とで居住地の把握方法が異なる旨が資料に注記されています。年度をまたぐ比較の際は留意が必要です。

6. 導入目的は「コロナ対応」から「人材確保」へ

企業がテレワークを導入する理由も変化しています。

総務省の調査で導入目的(複数回答)を見ると、令和7年は次のとおりです。これはテレワークを導入している企業に占める割合で、集計対象は1,371社。カッコ内は令和6年(1,235社)の数値です。

  • 新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため:61.6%(66.0%)
  • 勤務者のワークライフバランスの向上:53.8%(51.6%)
  • 業務の効率性(生産性)の向上:45.0%(46.9%)
  • 勤務者の移動時間の短縮・混雑回避:42.6%(40.8%)
  • 非常時(地震、台風、大雪、新型コロナウイルス以外の感染症の流行など)の事業継続に備えて:40.7%(45.3%)
  • 障害者、高齢者、介護・育児中の社員などへの対応:33.4%(27.3%)
  • 人材の雇用確保・流出の防止:23.9%(20.3%)

最も多いのは依然として感染症への対応ですが、前年から4.4ポイント下がっています。一方で増えているのが「障害者、高齢者、介護・育児中の社員などへの対応」で6.1ポイント増、「人材の雇用確保・流出の防止」が3.6ポイント増、「勤務者のワークライフバランスの向上」が2.2ポイント増です。

感染症対策として始めた制度を、人材の確保と両立支援の手段として使い直す。導入率が令和7年に反転した背景には、この目的の組み替えがありそうです。

7. 制度として使うときに確認したいこと

最後に、実務面での注意点にも触れておきます。

厚生労働省は「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を公表しています。労働時間の管理、中抜け時間の取扱い、費用負担、人事評価などについて考え方が示されており、テレワークを制度として運用する際の下敷きになるものです。

たとえば中抜け時間については、休憩時間として扱って始業・終業時刻を繰り上げ/繰り下げる方法や、時間単位の年次有給休暇として扱う方法などが示されています。いずれも、あらかじめ労使で話し合ってルールを決めておくことが前提です。

通信費や電気代の負担、いわゆる在宅勤務手当の有無も、会社ごとに扱いが分かれる部分です。

ただし、ガイドラインはあくまで考え方を示すものであり、実際にどう運用するかは各社の就業規則やテレワーク規程によって決まります。自社の制度で何がどこまで認められているのかは、必ず勤務先の人事・労務部門にご確認ください。

8. まとめにかえて

今回は、リモートワークの現在地を2つの統計から確認しました。

  • テレワークを導入している企業は50.1%で、前年から2.8ポイント上昇
  • 雇用型テレワーカーは25.2%、直近1年間のテレワーク実施率は16.8%
  • 首都圏37.7%に対し地方都市圏17.2%、男性31.7%に対し女性17.8%
  • 導入目的は「人材の雇用確保・流出の防止」「介護・育児中の社員などへの対応」が増加

企業側と個人側、どちらの数字も令和6年(度)を底にして令和7年(度)に反転しました。縮小一辺倒でも、完全な定着でもない。いまはそういう局面のようです。

自分の会社がどちらに動いているのかを考えるとき、全国平均は出発点にはなります。ただし地域や性別で大きく割れている以上、平均値がそのまま自分の環境に当てはまるとは限りません。

9. 【執筆者コメント】「なくなった」と「まだある」が両立する理由

リモートワークの話になると、体感がまったく噛み合わないことがあります。私自身はリモートワークで働いていますが、周囲には「もう全員出社」という人もいて、同じ時期の話とは思えないことがありました。

今回、地域別の数字を見て腑に落ちました。首都圏37.7%と地方都市圏17.2%。2倍以上違えば、見える景色が違って当然です。

興味深いのは、本来は場所を選ばないはずの働き方で、地域によって2倍以上の差がついている点です。どこに住んでいるかというより、どの会社に勤めているか、どの業種かに左右される部分が大きいのだろうと思います。

導入目的の変化も、印象に残りました。「障害者、高齢者、介護・育児中の社員などへの対応」が33.4%で前年から6.1ポイント増、「人材の雇用確保・流出の防止」が23.9%で3.6ポイント増。感染症対策として始まった制度が、働き続けられる環境を整えるための選択肢として位置づけ直されてきている、という読み方ができそうです。導入率が反転した背景としても、いちばん納得のいく変化でした。

それから、記事中でも書いた「50.1%と25.2%を引き算してはいけない」という点。正直に言うと、最初に数字を並べたときは私も引き算したくなりました。ただ、片方は会社を数え、もう片方は人を数えています。分母が違うものを並べて差を語ると、それらしいけれど中身のない話になってしまう。統計を扱うときに、いちばん気をつけたい部分だと思います。

参考資料

中沢 新