装備を揃えるのにお金がかかる、という印象のある登山。実際のところ、年間でどれくらいの費用がかかっているのでしょうか。
そんなときに参考になるのが、公益財団法人日本生産性本部が毎年発表している「レジャー白書」です。余暇活動ごとに、年間で何回楽しみ、いくら使っているかが集計されています。
今回はこの資料から、登山にかかる費用を確認していきます。
- 登山の年間平均費用は4万7100円、年間平均活動回数は8.2回
- 1回あたりに換算すると約5744円
- 同じ観光・行楽部門の国内観光旅行は年4.5回で12万9200円
1. 登山の年間平均費用は4万7100円
まずは数字を見ていきましょう。
日本生産性本部が公表している「レジャー白書2025」(速報版)によると、余暇活動として「登山」を行っている人の年間平均活動回数は8.2回。年間平均費用は4万7100円という結果になっています。
なお、登山の参加率は5.1%です。観光・行楽部門は全12種目ですが、そのなかで実際に登山を行っている人は、それほど多い層ではありません。
年間4万7100円を12か月で割ると、月あたり約3925円です。
活動回数8.2回で割ると、1回あたり約5744円になります。交通費、食料、行動食、山小屋やテント場の利用料などを含めた金額として見れば、妥当な水準といえるでしょう。
2. 国内観光旅行は年4.5回で12万9200円
比較のために、同じ部門の他の活動も見てみましょう。
登山と同じ「観光・行楽部門」のうち、参加率がもっとも高い「国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)」の年間平均活動回数は4.5回で、年間平均費用は12万9200円でした。参加率は48.3%で、調査対象108種目の全体のなかでも3年連続で1位となっています。
- 登山:年8.2回/4万7100円/1回あたり約5744円
- 国内観光旅行:年4.5回/12万9200円/1回あたり約2万8711円
回数では登山が1.8倍多く、費用では国内観光旅行が2.7倍高い。1回あたりで比べると、国内観光旅行は登山の約5倍という計算になります。
登山は「回数を重ねやすく、1回あたりの費用は抑えられる」余暇であることが、数字からもわかります。
3. 登山が「回数型」の余暇である理由
1回あたり約5744円という金額は、日帰り登山であれば十分に現実的な水準です。
日帰りであれば、宿泊費がかかりません。交通費と食料代が主な支出になります。都市近郊の山であれば、電車とバスで往復数千円ということも珍しくないでしょう。
以前ご紹介したレジャー白書のデータでは、テレビゲーム(家庭での)が年48.9回で1万4900円(1回あたり約305円)、外食(日常的なものは除く)が年18.6回で6万5300円(1回あたり約3510円)でした。
登山はこれらの中間に位置します。ゲームほど手軽ではありませんが、旅行ほど身構える必要もない。休日の過ごし方として、続けやすい性格を持った余暇だといえます。
4. 初期費用と継続費用を分けて考える
ただし、この4万7100円という数字を見るときには注意点があります。
登山には、装備という初期投資が必要です。登山靴、ザック、レインウェア、防寒着。本格的に揃えれば、初年度は数万円から十数万円程度の出費になることもあるといわれます。
一方、これらの装備は数年にわたって使えます。登山靴なら数年、ザックやレインウェアはさらに長く使えるものもあります。
ここで押さえておきたいのが、レジャー白書における年間平均費用の定義です。これは「その余暇活動を行った人」一人当たりの平均であり、まったく登山をしない人は分母に含まれていません。つまり4万7100円は、登山を行った5.1%の人のなかでの平均額ということになります。
そのうえで年間平均費用4万7100円は、装備を揃えたばかりの人と、既に持っている人をならした数字です。始めたばかりの年はこれを上回り、装備が揃った後の年は下回るという振れ幅があると考えられます。
始める際は、いきなりすべてを揃えるのではなく、レンタルを利用して必要なものを見極める方法もあります。
5. 安全に関わる部分にはお金をかける
登山は、費用を抑えることが必ずしも得策とは限らない活動でもあります。
とくに登山靴とレインウェアは、安全に直結する装備です。滑りにくいソール、足首を保護する構造、確実な防水性能。これらは価格に反映される部分であり、安価なもので代用すると事故のリスクが高まります。
一方、ウェアの一部や小物類は、手ごろな価格帯のもので十分な場合もあります。
- 優先して投資するもの:登山靴、レインウェア、ザック
- 段階的に揃えるもの:防寒着、ヘッドランプ、ストック
- 代用できるもの:日常のインナー類、小物
年間4万7100円という平均のなかで、どこに配分するか。安全に関わる部分を優先するという考え方が、結果的には長く楽しむことにつながります。
なお、山岳保険への加入や、登山届の提出といった安全対策も忘れずに。制度や必要な手続きは山域や自治体によって異なるため、事前に各自治体や関係機関の情報を確認してください。
6. まとめにかえて
今回は「レジャー白書2025」(速報版)から、登山にかかる費用を確認しました。
- 登山の年間平均費用は4万7100円、年間平均活動回数は8.2回
- 1回あたりは約5744円
- 国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)は年4.5回で12万9200円(1回あたり約2万8711円)
回数を重ねやすく、1回あたりは抑えられる。登山は、そんな性格の余暇活動だといえそうです。
7. 【執筆者コメント】山に囲まれて暮らしながら、まだ登っていません
私は群馬県に住んでおり、家の周囲はぐるりと山に囲まれています。それでも、自分から登りに行くことはほとんどありません。近くにあるものほど後回しになりがちなのは、登山に限った話ではないのかもしれません。
一方で、登山グッズを眺めるのは好きです。ザックの容量やレインウェアの防水性能を比べているうちに、それなりの時間が経っていることがあります。登る予定がないのに道具の知識だけが増えていくのは、順序が逆だという自覚はあります。
そのせいか、本文で触れた「初期費用と継続費用を分けて考える」という整理は、身に覚えのある話でした。1回あたり約5744円という数字よりも、最初に何をどこまで揃えるかのほうが、始める前のハードルとしては大きいように思います。
安全に関わる装備は削れないと書いた手前、自分が始めるとしても同じ判断になるはずです。そのうえで、まずはレンタルで必要なものを見極めるという方法があると知って、少し気が楽になりました。
年間4万7100円という平均額は、思っていたよりも手が届く水準に見えます。窓から見えている山を、そろそろ一度登ってみてもいいのかもしれません。
参考資料
中沢 新