2. 「50歳代で考えたい」年金を何歳から受け取るか?60歳から受け取れる「繰上げ受給」の注意点

50歳代のうちに考えたいのが、年金を何歳から受け取るかです。

公的年金は原則65歳からですが、希望すれば60歳から前倒しで受け取ったり、75歳まで遅らせたりすることもできます。

60歳から前倒しすることを「繰上げ受給」といいます。早くもらえる安心がある一方、見落とせない注意点があります。

2.1 1カ月0.4%の減額が、生涯続く

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繰上げ受給

出所:LIMO編集部作成

繰上げ受給では、受け取りを早めた月数1カ月あたり0.4%(昭和37年4月2日以降生まれの場合)年金が減額されます。60歳ちょうどまで早めると、最大で24%の減額になります。

気をつけたいのは、この減額が一生涯続き、あとから取り消せないことです。目先の受け取りは増えますが、長く生きるほど、受け取り総額では不利になりやすい選択でもあります。

2.2 繰上げには、ほかの制限もある

繰上げには、金額以外の注意点もあります。たとえば、繰上げ後は事後重症による障害年金を請求できなくなる、寡婦年金が受け取れなくなるなど、ほかの年金にかかわる制限が生じる場合があります。

「早くもらえる」という安心だけで決めてしまうと、あとで選択肢を狭めることになりかねません。50歳代のうちに、減額と制限の両方を知り、夫婦で慎重に考えておきたい選択です。

また、今回ご紹介した繰上げ受給とは反対に、66~75歳までの繰下げ受給も可能でこちらは年金が増額されますが、注意点もあるので詳しく調べてみるといいでしょう。

3. 元証券会社員からのアドバイス

50歳代・二人以上世帯の貯蓄は、平均1908万円・中央値700万円でした。この蓄えと年金の受け取り方をどう組み合わせるかで、老後の家計は変わります。繰上げを冷静に判断するために、今日からできることを3つお伝えします。

一つ目は、夫婦二人分の年金の見込み額を、ねんきんネットで確認することです。65歳から受け取った場合の額がわかると、繰り上げて減る分も具体的にイメージできます。

二つ目は、繰上げは「減額が生涯続く」と知っておくことです。60歳まで早めると最大24%減となり、取り消せません。目先の安心だけで決めないようにしましょう。

三つ目は、繰上げの前に、貯蓄や就労で60代前半をまかなえないかを考えることです。数年でも受け取りを遅らせれば、減額を避けられます。急ぐ前に選択肢を並べてみましょう。

宮野 茉莉子

証券会社でご相談を受けていたお客様は、その多くが60歳以上で、退職金の運用を控えた方々でした。60歳を迎えて「早く年金がほしい」と繰上げを考える方もおり、その気持ちはよくわかります。

ただ、繰上げの減額は生涯続き、取り消せません。しかも障害年金や寡婦年金などで制限が生じることもあり、あとで「知らなかった」と悔やむことも考えられます。

大切なのは、目先の安心だけで決めないことです。夫婦の年金見込み額を並べ、60代前半を貯蓄や就労でまかなえないかを先に考える。それでも必要なときにだけ、繰上げを選べば十分です。

まずは、ねんきんネットで65歳からの見込み額を確かめてみてください。判断の土台ができれば、あわてて繰り上げずにすみます。

受け取り方に、唯一の正解はありません。夫婦の事情に合わせて、納得できる形を選べば十分です。

大切なのは、減額と制限を知ったうえで、あわてずに決めることです。夫婦で見込み額を並べれば、その判断はぐっとしやすくなります。

4. まとめにかえて

今回は、50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額(1908万円)と中央値(700万円)を確認しました。2000万円以上の世帯が増える一方、貯蓄のない世帯も残り、老後を前に差が広がる年代です。

あわせて、繰上げ受給の注意点もみてきました。1カ月0.4%の減額が生涯続き、60歳まで早めると最大24%減で取り消せません。障害年金や寡婦年金などの制限が生じる場合もあります。

今日からできることは3つです。まず、夫婦二人分の年金見込み額をねんきんネットで確認すること。次に、繰上げ受給と繰下げ受給の制度と注意点を把握すること。

そして、繰上げを考える前に60代前半を貯蓄や就労でまかなえないか考えること。蓄えと年金を組み合わせ、受け取り方を、この秋から夫婦で考えはじめてみましょう。

参考資料

宮野 茉莉子