決算の数字は伸びているのに、株価は一直線に上がってくれない。そんな銘柄に心当たりのある読者は少なくないだろう。
日立製作所<6501>の直近1年は、その手触りに近い。稼ぎ出す現金の規模は、この5期ではっきり変わった。一方で株価のほうは、上げては戻す往復を繰り返している。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
1. 昨秋に一段切り上がったあと、往復に転じた株価
1/1
出所:各種資料をもとに筆者作成
2025年9月末の終値は3,900円台だった。それが翌10月末には5,300円台まで一段切り上がっている。
そこから先は、上昇一辺倒ではない。2025年11月末と12月末は4,900円台で足踏みし、2026年1月末に再び5,300円台へ戻した。
2026年2月末は5,200円台。3月末には4,400円台まで下押しし、4月末は4,800円台、5月末は5,100円台と持ち直したものの、6月末にまた4,400円台へ沈んだ。
直近は7月末が5,200円台、2026年8月時点の終値が5,300円台である。
起点の2025年9月末と比べれば3割強の上昇であり、水準そのものは確かに切り上がった。ただし中身は、昨秋の一度の大きな上昇と、その後の往復に分かれる。
2025年9月末以降の月末終値を並べると、5,300円台に届いた月末が二度あり、4,400円台まで下げた月末も二度ある。ボラティリティは相応に高い。
この振れを一つの材料に帰すのは難しい。相場全体の地合いや、電力・データセンタ関連への思惑が入れ替わり意識された可能性はある。ただ、そこは断定できるものではない。
会社側の数字がどう動いたのかを、先に押さえておこう。
2. 増収8%の裏で、減損と売却益が同じ期に載った
2026年3月期通期の売上収益は10兆5,867億円で、前年度比8%の増収となった。
会社によれば、ビルシステム事業における新設昇降機の需要減少などの減収要因はあったものの、強いパワーグリッド需要を取り込んだエナジー、堅調な国内デジタル需要を取り込んだデジタルシステム&サービスが増収を牽引した。米国相互関税の影響として▲240億円も明示している。
売上総利益は3兆1,795億円と13%増え、販売費及び一般管理費の伸びは7%にとどまった。売上原価の売上収益に対する比率は1ポイント下がって70%である。増収と原価率の改善が同時に効いた形だ。
営業利益は1兆1,993億円、営業利益率は11.3%になる。電気機器の業種中央値が6.7%であることを踏まえれば、水準は明らかに高い。
もっとも、この期の損益は単純ではない。減損損失は前年度から593億円増え、1,515億円に膨らんだ。会社はデジタルシステム&サービスにおけるファイルストレージ事業ののれん減損などによると説明している。
その一方で、事業再編等損益は1,318億円の利益となり、前年度から1,022億円改善した。空調事業の合弁会社の株式売却に伴う利益が主因だという。
減損と売却益が同じ期に並ぶ。事業の入れ替えを続ける会社の損益計算書は、こういう見え方になりやすいと考えられる。
結果として税引前当期利益は1兆2,731億円、親会社株主に帰属する当期利益(IFRS)は8,023億円まで伸びた。ROE(自己資本利益率)は12.9%で、業種中央値の7.4%を大きく上回る。