もうすぐ9月、今年も残すところあと4カ月余りとなりました。

夏のボーナス明細や手元にある「ねんきん定期便」を見返し、ご自身の老後資金について改めて考えるのにちょうど良い時期ではないでしょうか。

自分が将来受け取る厚生年金の実額を正しく把握しているという方は、意外と少ないものです。

この記事では、公的年金の基本的なしくみを確認したうえで、厚生年金を月15万円以上受け取っている人がどのくらいいるのか、実際のデータをもとに見ていきます。

橋本 優理
ご相談では「自分の年金がいくらになるのか見当もつかない」というお声をよくいただきます。まずは制度の基本構造と、実際の受給額の分布を知ることが、老後の資金計画の第一歩になります。

なお、厚生年金の平均月額や受給額の分布データについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【厚生年金】2026年6月支給分から『標準的な夫婦世帯』の年金額が4495円アップ!支給日に『60万円(月30万円)以上』受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
【厚生年金】2026年6月支給分から『標準的な夫婦世帯』の年金額が4495円アップ!支給日に『60万円(月30万円)以上』受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
ココがポイント
  • 公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造で、加入状況によって老後の年金額に個人差が生まれる
  • 厚生年金を月15万円以上受け取っている人は、男女全体で49.8%にとどまる
  • 月15万円以上の割合は男性68.8%・女性12.3%と大きな差があり、性別による年金額の違いが浮き彫りになる

1. 厚生年金は「2階建て」構造|国民年金と何が違う?

公的年金のしくみは、「国民年金」と「厚生年金」の2つの年金制度から成り立つため、しばしば「2階建て構造」と表現されます。

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出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 【国民年金】1階部分

  • 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員一律、年度ごとに見直しあり(※1)
  • 年金額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降に満額の基礎年金(※2)を受給できる(未納期間分に応じて減額調整)

※1 国民年金保険料:1万7920円(2026年度の月額)
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:7万608円(2026年度の月額)

1.2 【厚生年金】2階部分

  • 加入対象:主に会社員、公務員など
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定する報酬比例制
  • 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せして支給)

国民年金の保険料は加入者全員が同じ額を支払います。一方で、厚生年金の保険料は報酬(給与・賞与)に応じて決められた額を支払う「報酬比例制」です。毎月の給与や賞与などの「報酬」に、所定の保険料率を乗じて保険料が決まるため、納付する保険料は人それぞれ異なります。

つまり、現役時代に「国民年金」または「厚生年金」のどちらに加入していたか、または、どちらの加入期間が長かったかにより、老後の年金額には大きな個人差が出るのです。

1.3 平均的な会社員なら、厚生年金はいくらになる?報酬比例部分を試算

厚生年金の報酬比例部分(年額)は、大まかに「平均標準報酬月額 × 5.481/1000 × 加入月数」で試算できます(2003年4月以降の本来水準の乗率)。仮に、平均標準報酬月額33.3万円(年収換算で約400万円程度)の人が、40年間(480カ月)厚生年金に加入し続けたケースを考えてみましょう。

報酬比例部分(年額) = 33.3万円 × 5.481/1000 × 480カ月 = 約86万8000円
月額換算:86万8000円 ÷ 12カ月 = 約7万2300円

ここに、国民年金の満額(2026年度:月7万608円)を上乗せすると、老齢基礎年金と厚生年金の合計は月14万2900円程度となり、記事後半で紹介する男女全体の平均月額(15万289円)に近い水準になることが分かります。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の受給額は加入期間や報酬水準によって変わります。正確な見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でご確認ください。

橋本 優理
報酬比例部分は「平均標準報酬月額」と「加入期間」の掛け算で決まるため、若いうちから厚生年金に長く加入しているほど有利になる仕組みです。転職や離職で加入期間に空白がある方は、その分を踏まえて見込額を確認しておくと安心です。

2. 厚生年金「月15万円」に届く人はどれくらいいる?平均月額から探る

厚生年金の年金額は、現役時代の収入や加入期間によって個人差が出ますが、その実態が気になるところでしょう。

厚生労働省の資料「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は男女全体で15万289円です。

公的年金は、原則として2か月に一度支給されるため、この平均額で考えると、一度の支給日に約30万円が振り込まれる計算になります。

では、この平均である月額15万円をクリアしている人は、受給権者全体でどのくらいの割合を占めるのでしょうか。

※下記の厚生年金の年金月額には国民年金(老齢基礎年金)部分を含みます。

2.1 【男女計】平均は15万289円、15万円ラインを超える人の割合は?

厚生年金の年金月額分布2/3

厚生年金の年金月額分布

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

【男女全体】厚生年金の平均年金月額:15万289円

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金を月額15万円以上受給している人は、男女全体の受給権者の半分に満たない49.8%です。厚生年金を受給していない人も含めて計算すると、この割合はさらに低くなります。

2.2 【男女別】男性68.8%・女性12.3%、なぜここまで差が出るのか

では、男女別に見るとどうでしょう。

厚生年金保険年金月額階級ごとの受給権者数2/3

厚生年金保険年金月額階級ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

【男性】厚生年金の平均年金月額:16万9967円

  • ~1万円:3万446人
  • 1万円以上~2万円未満:1万257人
  • 2万円以上~3万円未満:5404人
  • 3万円以上~4万円未満:5185人
  • 4万円以上~5万円未満:1万4747人
  • 5万円以上~6万円未満:3万9134人
  • 6万円以上~7万円未満:13万4214人
  • 7万円以上~8万円未満:23万186人
  • 8万円以上~9万円未満:26万278人
  • 9万円以上~10万円未満:26万99人
  • 10万円以上~11万円未満:29万8838人
  • 11万円以上~12万円未満:37万6357人
  • 12万円以上~13万円未満:45万6689人
  • 13万円以上~14万円未満:54万9337人
  • 14万円以上~15万円未満:65万7775人
  • 15万円以上~16万円未満:76万4713人
  • 16万円以上~17万円未満:85万3718人
  • 17万円以上~18万円未満:92万6462人
  • 18万円以上~19万円未満:95万5327人
  • 19万円以上~20万円未満:91万3998人
  • 20万円以上~21万円未満:82万204人
  • 21万円以上~22万円未満:68万2702人
  • 22万円以上~23万円未満:50万9842人
  • 23万円以上~24万円未満:34万1191人
  • 24万円以上~25万円未満:22万4720人
  • 25万円以上~26万円未満:14万7563人
  • 26万円以上~27万円未満:9万2856人
  • 27万円以上~28万円未満:5万4156人
  • 28万円以上~29万円未満:2万9810人
  • 29万円以上~30万円未満:1万4935人
  • 30万円以上~:1万8801人

【女性】厚生年金の平均年金月額:11万1413円

  • ~1万円:1万2953人
  • 1万円以上~2万円未満:3880人
  • 2万円以上~3万円未満:2万9993人
  • 3万円以上~4万円未満:6万3025人
  • 4万円以上~5万円未満:6万1945人
  • 5万円以上~6万円未満:6万9313人
  • 6万円以上~7万円未満:18万892人
  • 7万円以上~8万円未満:34万8764人
  • 8万円以上~9万円未満:54万1901人
  • 9万円以上~10万円未満:75万1358人
  • 10万円以上~11万円未満:81万3990人
  • 11万円以上~12万円未満:69万5128人
  • 12万円以上~13万円未満:52万2466人
  • 13万円以上~14万円未満:37万4169人
  • 14万円以上~15万円未満:27万1489人
  • 15万円以上~16万円未満:20万322人
  • 16万円以上~17万円未満:14万7604人
  • 17万円以上~18万円未満:10万5489人
  • 18万円以上~19万円未満:7万1561人
  • 19万円以上~20万円未満:4万8617人
  • 20万円以上~21万円未満:3万3387人
  • 21万円以上~22万円未満:2万1931人
  • 22万円以上~23万円未満:1万4116人
  • 23万円以上~24万円未満:8813人
  • 24万円以上~25万円未満:5491人
  • 25万円以上~26万円未満:3233人
  • 26万円以上~27万円未満:1811人
  • 27万円以上~28万円未満:927人
  • 28万円以上~29万円未満:479人
  • 29万円以上~30万円未満:223人
  • 30万円以上~:482人

月額15万円以上の年金を受給している割合は、男性で68.8%に上るのに対し、女性ではわずか12.3%にとどまっています。

2.3 平均以下でも「繰下げ受給」で15万円ラインを超えられる?試算してみる

女性の平均月額(11万1413円)のように、月15万円に届かないケースでも、受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を使えば月額を増やせます。仮に月13万円の受給見込みの方が、65歳から68歳まで3年間(36カ月)受給を繰り下げたケースを試算してみましょう。

13万円 ×(1 + 0.7% × 36カ月)= 13万円 × 1.252 = 約16万2800円

繰下げ受給は1カ月あたり0.7%ずつ増額される仕組みのため、3年間繰り下げるだけで月額は約3万2800円増え、15万円のラインを超える計算になります。ただし、繰り下げている間は年金を受け取れない点、生涯の受給総額は受給開始年齢と寿命の関係によって変わる点には注意が必要です。あくまで一定の前提を置いた試算であり、実際の増額率や見込額はねんきん定期便等でご確認ください。

公的年金は老後の生活設計の基盤となりますが、それだけで十分かを把握することが大切となります。ぜひ「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を確認し、早めの資金計画を立てるようにしましょう。

橋本 優理
男女差の背景には、勤続年数や雇用形態、賃金格差など複数の要因が絡んでいます。ご自身やパートナーの見込額を早めに確認し、不足が見えた場合は繰下げ受給や資産運用など、取れる選択肢を早いうちから比較検討しておくことをおすすめします。

監修者コメント

熊谷 良子

厚生年金は「加入期間×報酬水準」で決まる報酬比例制のため、平均額や分布だけを見て一喜一憂するのではなく、ご自身の加入履歴に照らして考えることが大切です。特に、転職やパート期間が長い方は、国民年金のみの加入期間がどれだけあったかによって、老後の受給額に大きな差が出ます。

男女差についても、賃金格差だけでなく、出産・育児による離職やパート就労期間の長さが厚生年金の加入期間・報酬水準に影響している側面があります。

ご自身の年金記録は「ねんきんネット」でいつでも確認できるので、まずは現状を正確に把握したうえで、繰下げ受給や就労継続、資産形成など、取れる選択肢を早めに比較検討することをおすすめします。