3. あと5年、10年で何ができるか。厚生年金の月額から逆算する50歳代の老後計画をファイナンシャルアドバイザー・橋本優理に聞きました

50歳代の方からは「老後まであと5年、10年しかないが、今から準備を始めて間に合うのか」というご相談を数多くいただきます。ここでは、ご自身が受け取れる厚生年金の月額を確かめたうえで、残された期間で何ができるかを逆算していった一事例をもとに、考え方の順番をご紹介します。

3.1 子どもの独立で余裕ができた一方、定年までの年数が見えてきた50歳代

お子さまが独立し、毎月まとまった金額を貯蓄に回せるようになる一方で、定年までの年数が現実的な数字として見えてくるのがこの年代です。公的年金だけで暮らせるのか、退職金と合わせて足りるのかが分からないまま、ご相談の場では次のような声を耳にします。

50歳代のお客様
子どもが独立して、ようやく貯蓄に回せる余裕が出てきました。ただ、夫はiDeCoと企業年金に入っていて、私は個人年金保険だけ。年金がいくら受け取れるのかも把握できていません。この年齢から資産運用を始めても、もう遅いのではないかと不安です。

こうしたご相談では、まず年金の見込額と退職金を並べて、老後の収支をシミュレーションすることから始めます。漠然としていた不安が具体的な金額として見えると、「50歳代からでも取れる手はある」と受け止め直せる方が少なくありません。試算は前提の置き方によって結果が変わるものですが、数字の輪郭がつかめること自体に意味があります。

3.2 【ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が回答】商品選びの前に、年金という土台を確かめる

橋本 優理
もう遅いと諦める前に、残された時間でできる手を打つことが大切です、
まずは将来受け取れる年金の概算を知ったうえで、現在の資産と合わせて、老後何年間生活ができそうかを考えてみましょう。
不足分を、残りの5年・10年でどう準備するかが大切です。
今ある資産を有効活用し、別の資産に置き換えたり、投資信託などで資産運用に取り組んだり、さまざま方法があります。

大切なのは、いきなり商品を選ぶことではなく、受け取れる年金額という土台を確かめてから、足りない分を残された期間で埋めるという順番で考えることです。ご相談の場では、次の3つの手順をご案内しています。

3.3 ステップ1:ねんきん定期便で厚生年金の月額を確認し、不足額を逆算する

はじめに、年金の見込額と退職金、企業年金やiDeCoの残高を書き出し、想定する生活費との差額を計算します。総額ではなく「毎月いくら足りないか」で捉えると、必要な準備額が現実的な数字になります。なお、公的年金の見込額や受給の要件、退職金・企業年金の取り扱いは、加入期間や働き方、勤務先の制度によって一人ひとり異なり、制度改正で変わることもあります。金額や条件を思い込みで判断せず、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所などの公的窓口、勤務先の担当部署でご自身の状況を必ずご確認ください。

3.4 ステップ2:残された5年・10年という期間を「時間の分散」に使う

次に、期間の使い方です。まとめて投じるのではなく毎月一定額を積み立てることで、価格が高いときも安いときも買い付けることになり、購入単価を平準化できます。新NISAのつみたて投資枠や成長投資枠は、この年代からの積立にも活用できる選択肢の一つです。ただし、非課税制度の利用条件や上限額、税制上の取り扱いは改正されることがあります。最新の内容は、金融機関の窓口や公的な情報でご確認ください。

3.5 ステップ3:資産の置き場所を分散する

そのうえで、資産の置き場所を分けて考えます。株式や投資信託に加えて債券などの安定的な資産も組み合わせ、投資先の国や地域も分けておく。資産をミルフィーユのように層で重ねるイメージを持つと、どこか一つが値下がりしても全体への影響を抑えやすくなります。どの配分がふさわしいかは、必要な資金の額と使う時期によって変わるため、誰にでも当てはまる一つの正解があるわけではありません。

なお、投資信託や債券、変額保険などの運用商品は元本が保証されておらず、相場や為替の変動によって元本を下回る可能性があります。使う時期が近い資金は預貯金など安定的な形で確保し、余裕資金の範囲で運用に回すことが、この年代では特に重要です。

ここでご紹介したのは一事例であり、必要な老後資金も前提条件も、家族構成や働き方、退職金や企業年金の有無によって一人ひとり異なります。年金・税制にかかわる制度は改正されることがあり、要件・金額・期限はご自身の状況で変わります。実際の判断にあたっては、公的窓口で最新の情報をご確認のうえ、契約内容や解約条件も踏まえて、専門家に個別にご相談ください。

4. まとめ|厚生年金の実額を知り、老後の資金計画に活かす

公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造で成り立っており、加入していた制度や加入期間によって、老後に受け取れる年金額には大きな個人差が生まれます。

厚生年金を月15万円以上受け取っている人は、男女全体で49.8%。男性は68.8%である一方、女性は12.3%にとどまるなど、性別による違いも大きいのが実態です。

平均や分布はあくまで全体像を知るための目安であり、ご自身の受給額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認するのが確実です。実額を把握したうえで、不足が見込まれる場合は、繰下げ受給や資産形成など、早めに選択肢を比較検討していきましょう。

参考資料

橋本 優理