3. 選ぶと暦年課税には戻せない
この制度の最大の分かれ道がここです。
3.1 その贈与者からの贈与はすべて対象になる
国税庁は、一度選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできないとしています。
選択した相手を特定贈与者、その財産を相続時精算課税適用財産といいます。父について選択したら、その後の父からの贈与はすべてこの制度で扱われることになります。
3.2 他の人からの贈与は暦年課税のまま
相続時精算課税を選択した受贈者が、特定贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を控除した後の金額に、贈与税の税率を適用して計算します。
つまり、制度を選んだ相手とそれ以外の相手で、計算が分かれます。同一年中に2人以上の特定贈与者から贈与を受けた場合、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格であん分することになります。
4. 相続のときに合算して精算する
制度の名前のとおり、最後に相続税で精算します。
4.1 贈与時の価額で加算される
特定贈与者が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額に相続時精算課税適用財産の贈与時の価額を加算して相続税額を計算します。
令和6年1月1日以後の贈与により取得した財産については、贈与を受けた年分ごとに、贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額が加算されます。基礎控除額の分は加算されないということです。
4.2 払いすぎた贈与税は還付される
相続税額は、それまでに贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額と、相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算し、そこから既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
相続税額から控除しきれない贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。贈与の段階で払った20%が、相続税より多ければ戻ってくる仕組みです。
5. 手続きには期限がある
選択するには届出が必要です。
5.1 翌年2月1日から3月15日まで
相続時精算課税を選択しようとする受贈者は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を、受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに提出する必要があります。
特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額が110万円を超えるなど、贈与税の申告書を提出する場合には、この届出書と一定の書類を贈与税の申告書に添付して提出することになります。
5.2 判断は専門家に確認する
どちらの課税方式が有利かは、財産の額や構成、贈与を何年続けるか、相続税がかかる見込みかによって変わります。暦年課税には生前贈与加算という別の仕組みもあり、単純な比較はできません。
戻せない選択ですので、試算をしたうえで判断したいところです。具体的な計算は税理士や所轄の税務署に確認してみてください。
6. まとめにかえて
相続時精算課税は、その年の1月1日で60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子や孫などへの贈与について選択できる制度です。贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
令和6年1月1日以後の贈与には年110万円の基礎控除が適用され、これとは別に限度額2500万円の特別控除があります。超えた部分には一律20%の税率がかかります。
ただし一度選択すると、その贈与者からの贈与は暦年課税へ戻せません。届出の期限は翌年2月1日から3月15日までです。判断に迷うときは税理士や税務署に相談してみてください。
参考資料
和田 直子