昇進すると給料はいくら増えるのか。
社内の等級表を見れば自分の会社の答えは分かりますが、それが世間の水準と比べてどうなのかは見えません。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」には、部長級・課長級・係長級・非役職者それぞれの賃金が公表されています。令和7年の結果から確認していきます。
- 役職別の賃金は部長級63万5800円、課長級52万9200円、係長級39万9200円、非役職者31万500円
- 非役職者を100とすると部長級204.8、課長級170.4、係長級128.6
- 同じ役職でも男女差があり、課長級では月7万1100円の開きがある
1. 部長級63万5800円、課長級52万9200円
まず全体の水準から見ていきます。
【図表1】役職別の賃金と非役職者との格差(令和7年)1/2
各種資料をもとにLIMO編集部作成
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者のうち雇用期間の定めのない者について、役職別の賃金は次のとおりでした。
部長級が63万5800円、課長級が52万9200円、係長級が39万9200円、そして非役職者が31万500円です。
部長級と非役職者の差は月32万5300円。課長級と非役職者では21万8700円、係長級と非役職者では8万8700円の差になります。
非役職者を100とした指数で見ると、部長級204.8、課長級170.4、係長級128.6。部長級はおよそ2倍という水準です。
対前年の増減率は、部長級が1.4%増、課長級が3.4%増、係長級が3.4%増、非役職者が2.5%増。上げ幅がいちばん小さかったのは部長級でした。
2. 昇進の「1段」ごとの増え方は一定ではない
役職の段階を上がるごとに、いくら増えるのかも見ておきます。
非役職者から係長級で8万8700円、係長級から課長級で13万円、課長級から部長級で10万6600円。
最も伸びるのは係長級から課長級への1段です。管理職としての責任がはっきり変わるところで、賃金の段差も大きくなっています。
ただし、この賃金は所定内給与額です。残業代や賞与は含まれていません。
役職が上がると時間外労働の扱いが変わることがあり、労働基準法上の管理監督者に当たる場合は時間外割増賃金と休日割増賃金が支払われなくなります。昇進前に残業代を受け取っていた人ほど、実際の手取りの増え方はこの数字より小さくなる可能性があります。
役職別の賃金を見るとき、いつも確かめたくなるのが「所定内給与額」という条件です。残業代も賞与も入っていません。毎月決まって支払われる部分だけを取り出した数字です。
年収のイメージで見ると、実態より低く感じられるはずです。逆に、月々の手取りと並べると高く見えます。税や社会保険料が引かれる前の金額だからです。同じ数字なのに、何と比べるかで印象が反対に振れます。
指数で見ると部長級は204.8で、非役職者のおよそ2倍です。ただしこれも所定内給与額どうしの比較なので、賞与の差が大きい会社ではもっと開きますし、残業代が厚い職場では逆に縮みます。
平均値を自分の数字と並べるときは、まず何と何を比べているのかを確かめる。地味な手順ですが、ここを飛ばすと実感とずれてしまいます。役職ごとの金額を見る前に、自分の明細のどこを取り出すかを決めておくほうが早いのかもしれません。
3. 同じ役職でも、男女で6万〜7万円の差
男女別の数字も公表されています。
【図表2】役職別・男女別の賃金(令和7年)2/2
各種資料をもとにLIMO編集部作成
男性は部長級64万2400円、課長級54万1400円、係長級41万900円、非役職者33万2100円。女性は部長級57万8300円、課長級47万300円、係長級36万5700円、非役職者28万100円です。
差額を見ると、部長級で6万4100円、課長級で7万1100円、係長級で4万5200円、非役職者で5万2000円。同じ役職でも開きがあります。
ただし、この差の要因はこの調査からは読み取れません。企業規模や産業の構成、勤続年数の違いなど、複数の要素が関わっていると考えられます。実際、勤続年数を見ると部長級では男性22.9年に対し女性20.0年、課長級では男性21.3年に対し女性19.0年と、いずれも女性のほうが短くなっています。
なお、前年からの伸びは女性の部長級が5.2%と最も大きく、男性の部長級の0.9%を上回りました。
非役職者を100とした指数では、女性の部長級が206.5、男性の部長級が193.4。女性のほうが高くなっていますが、これは女性の非役職者の賃金水準が男性より低いことの裏返しでもあります。指数の高さがそのまま処遇の良さを意味するわけではない点は注意が必要です。
4. 役職に就く年齢は、部長級で53.1歳
賃金とあわせて、年齢と勤続年数も公表されています。
平均年齢は部長級53.1歳、課長級49.5歳、係長級45.4歳、非役職者41.8歳。勤続年数は部長級22.6年、課長級20.9年、係長級17.5年、非役職者10.8年でした。
役職の間の平均年齢の差は、係長級と課長級で4.1歳、課長級と部長級で3.6歳です。ただしこれは同じ人を追跡した数字ではなく、それぞれの役職にいる人の平均を並べたものです。昇進までに何年かかるかを示すものではない点には注意が必要です。
ただしこれは平均であり、企業や業種によって昇進のスピードは大きく異なります。
5. この数字をどう使うか
最後に、比較のしかたを整理します。
第一に、この調査の賃金は、調査実施年6月分の所定内給与額であることです。時間外・深夜・休日出勤などの超過労働給与額と、賞与は含まれていません。一方で、通勤手当や家族手当のように毎月決まって支払われる手当は含まれます。所得税や社会保険料を差し引く前の金額でもあります。自分の給与明細と比べるときは、この範囲をそろえる必要があります。
第二に、企業規模や産業によって水準は変わります。同じ課長級でも、業種と会社の規模が違えば金額は大きく違います。全国平均はあくまで目安です。
第三に、賃金の差だけで昇進の損得は決まりません。時間外割増の扱い、責任の重さ、労働時間の長さ。金額と引き換えに変わるものを含めて考える必要があります。
なお、自社の賃金制度や役職手当の扱いは就業規則・賃金規程で定められています。具体的な内容は勤務先の人事・労務部門にご確認ください。
6. まとめにかえて
今回は、役職別の賃金を確認しました。
- 部長級63万5800円、課長級52万9200円、係長級39万9200円、非役職者31万500円
- 非役職者を100とした指数は部長級204.8、課長級170.4、係長級128.6
- 同じ役職でも男女差があり、課長級で月7万1100円の開き
- 平均年齢は部長級53.1歳、課長級49.5歳、係長級45.4歳
昇進で増える金額は、思っていたより大きいかもしれませんし、小さいかもしれません。所定内給与額という条件をそろえて見比べることが、実感とのずれを減らす第一歩になりそうです。
7. 【執筆者コメント】いちばん伸びるのは係長から課長のところ
数字を並べて意外だったのが、段差の大きさが一定ではないことでした。
非役職者から係長級で8万8700円、係長級から課長級で13万円、課長級から部長級で10万6600円。いちばん大きいのは真ん中の1段です。
課長になるところで責任の質が変わる、というのはよく言われる話ですが、賃金の側からもそれが見えるのは面白いと思いました。
一方で、その課長級の対前年増減率は3.4%で、部長級の1.4%を上回っています。上のほうが伸び悩み、中間が上がっている構図です。人材確保の難しさが反映されているのかもしれません。
それと、部長級の平均年齢が53.1歳、勤続22.6年という数字も印象に残りました。ひとつの会社に20年以上いる人の平均像です。転職が当たり前になったと言われる一方で、部長級の実態はまだこうなのだ、と。
もっとも、これらはすべて全国平均です。自分の会社がこの通りである保証はどこにもありません。数字は物差しであって、答えではないのだと思います。
参考資料
中沢 新
