「そろそろ実家のこと、考えないとな」——厚生年金や国民年金の受給が近づき、老後の家計を見直し始めたタイミングで、ふとそんな思いがよぎった方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省「令和7年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳です。いわゆる「団塊ジュニア世代」に続く1970年代半ば(1975年ごろ)、第1子出生時のの母の平均年齢はおよそ25.7歳でした(厚生労働省「出生に関する統計」)。

これをもとに単純計算すると、実家が完全な空き家になる「二次相続」は、子であるあなた自身がおよそ62歳前後を迎える頃に発生する計算になります(※あくまで平均値をもとにした単純計算であり、個々のご家庭の年齢とは異なります)。

「まだ先の話」と思われるかもしれませんが、実際の相続人の平均年齢はすでに68.9歳というデータもあり、実家じまいはすでにカウントダウンが始まっている問題だといえます。

本記事では、年金生活を見据える世代がいつ頃「実家じまい」に直面しやすいのかをデータから読み解いたうえで、空き家を放置した場合の費用負担、そして早めの行動を後押しする3000万円特別控除の期限について整理します。

ここがポイント
  • 平均寿命と出産年齢から試算すると、実家が完全な空き家になる「二次相続」はおよそ62歳前後。実際の相続人の平均年齢はすでに68.9歳

  • 厚生年金の平均月額は15万289円。それでも空き家を放置すれば固定資産税は最大6倍、解体費用は木造30坪で約120万〜210万円と重い負担に

  • 空き家の3000万円特別控除の期限は相続開始からおよそ3年後の年末まで。親が元気な60歳代のうちに実家の方向性を決めておきたい

1. 【独自試算】実家が空き家になるのは平均62歳前後。「3000万円控除」に立ちはだかる3年の壁

人生100年時代といわれる一方で、平均寿命という「限られた時間」から、実家の将来を具体的にイメージしてみましょう。

厚生労働省「令和7年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳です。また、厚生労働省「出生に関する統計」(人口動態統計特殊報告)によると、1975年ごろの第1子出生時の母の平均年齢は25.7歳でした(直近の第1子出生時の母の平均年齢は31.0歳まで上昇しており、当時とは差があります)。

かりに、父・母がともにおよそ25.7歳のときにあなたが生まれたと仮定すると、次のような試算が成り立ちます。

【独自試算】平均寿命から逆算する一次相続・二次相続のタイミング1/4

一次相続(父の死亡、平均寿命81.35歳)は子がおよそ56歳前後、二次相続(母の死亡、平均寿命87.33歳)は子がおよそ62歳前後というタイムライン図

出所:厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」「出生に関する統計」(人口動態統計特殊報告)をもとにLIMO編集部作成

  • 一次相続(父の死亡、平均寿命81.35歳):あなたがおよそ56歳前後を迎える頃
  • 二次相続(母の死亡、平均寿命87.33歳):あなたがおよそ62歳前後を迎える頃

二次相続が発生すると、実家は名実ともに誰も住まない「空き家」になります。そこから相続手続きや家族との話し合い、実家の片付けなどを経て、実際に「実家じまい」に本格的に動き出すのは60歳代半ば以降になってからというケースが少なくないと考えられます。

※上記はあくまで平均寿命と平均出産年齢をもとにした一つの試算であり、実際の年齢はご家庭ごとの状況によって異なります。

2. 相続人の平均年齢はすでに68.9歳。「老老相続」は他人事ではない

実際のデータでも、相続がシニア世代の課題になっていることが裏付けられています。

相続専門のランドマーク税理士法人が、2022年1月から2024年12月までの相続支援実績3387件を分析した調査によると、相続人(第1順位)の平均年齢は68.9歳、被相続人の平均年齢は84.5歳でした。

  • 相続人(第1順位)の平均年齢:68.9歳(65歳以上の割合:61.2%)
  • 被相続人の平均年齢:84.5歳(65歳以上の割合:94.2%)

相続人自身がすでに高齢者、あるいはこれから年金生活に入るタイミングという、いわゆる「老老相続」は、すでに珍しいケースではなくなっています。

さらに直近のデータでも、同じ傾向が裏付けられています。相続情報サイト「いい相続」を運営する株式会社鎌倉新書が2026年4月に実施した調査(有効回答324件)によると、亡くなった方(被相続人)から見て、その親である「父・母」が相続人になるケースの割合は2023年の7.3%から今回3.7%まで低下しました。

高齢化が進み、亡くなった方の親世代がすでに他界しているケースが増えたためとみられ、医療の進歩などにより「相続は高齢の親から子世代へ」という世代交代の形が固定化しつつあることがうかがえます。

体力や気力が十分にあるうちに実家の方向性を決めておかないと、いざというときに身動きが取りづらくなるおそれがあります。

3. 筆者からのコメント

熊谷 良子

老老相続が珍しくなくなっている背景には、平均寿命が延びたことに加え、相続手続きそのものが長期化しやすい事情もあります。

実家を複数のきょうだいで相続する場合、遺産分割協議がまとまらないまま数年が経過し、その間に相続人自身の体力や判断力が低下してしまうケースも少なくありません。

特に、不動産の相続登記は2024年4月から申請が義務化され、期限内(相続を知った日から3年以内が目安)に登記をしないと10万円以下の過料の対象になり得ます。

2026年4月からは住所・氏名を変更した際の「住所等変更登記」も義務化されており、実家の名義変更を先延ばしにするリスクは以前より大きくなっています。

親が元気なうちに「誰が」「いつまでに」実家の方向性を決めるのかを話し合っておくことが、将来の自分自身の負担を減らすことにもつながります。

具体的な手続きに迷う場合は、早めに司法書士や税理士など専門家に相談することをおすすめします。