3. 【元銀行員の視点】おひとりさまの貯蓄と年金、今日からできる3つのこと

60歳代・単身世帯の貯蓄は、平均1364万円に対して中央値300万円でした。貯蓄のない方が3割いる一方、2000万円以上の方も2割います。

この差の大きさを踏まえたうえで、年金の手取りと蓄えを組み合わせていくために、順序を3つに分けて整理します。

3.1 1つ目 振込通知書で「額面」と「手取り」を分けて確かめる

年金の振込通知書には、天引きされた保険料や税金の内訳が記載されています。差し引かれた後の金額が、実際に使えるお金です。

額面の金額だけを覚えていると、家計の見通しが実態から離れてしまいます。まずは手取りの数字を押さえるところからです。

3.2 2つ目 手取りで生活費がまかなえるかを確かめ、取り崩しの上限を決める

手取りが分かったら、1カ月の生活費と見比べます。足りない分は貯蓄から補う前提で、1年にいくらまで取り崩すかの上限を決めておきます。

上限を先に決めておくと、想定より長生きした場合にも蓄えが持ちこたえやすくなります。

3.3 3つ目 生活防衛資金はすぐ動かせる預貯金で確保する

病気やケガで急な出費が生じたとき、ひとり暮らしで頼れるのは自分の蓄えです。値動きのある商品に寄せすぎると、必要なときに元本を下回っていることもあります。

当面使う可能性のあるお金は預貯金に置き、使う予定のない部分だけを運用に回すという順番が、判断を迷わせません。

3.4 生活防衛資金を6カ月分とると、中央値300万円のうち残るのはいくら?

3つ目の生活防衛資金について、金額に置き換えて試算してみます。1カ月の生活費を仮に15万円として、6カ月分を手元に残す前提です。

  • 生活防衛資金:15万円×6カ月=90万円
  • 中央値300万円の場合:300万円-90万円=210万円が上乗せに使える
  • 平均1364万円の場合:1364万円-90万円=1274万円が上乗せに使える

生活費が月20万円であれば、6カ月分は120万円です。中央値300万円の世帯では残りが180万円まで縮みます。

生活防衛資金をいくらにするかで、年金の不足分に充てられる金額は大きく変わります。前提を置いた目安の試算ですので、実際の金額はご自身の生活費に当てはめて計算してみてください。

中本 智恵

銀行員だった頃、預金と投資信託をどう組み合わせるかというご相談を受けることがありました。当面使う予定のあるお金は預金に置き、使う予定のない部分だけを運用に回すという整理が出発点になります。

まとまったお金を一度に動かすと、必要になったときに引き出しにくくなります。使う時期ごとに置き場所を分けておくほうが、後から迷いません。

年金については、額面と手取りが違うという点が家計に効いてきます。天引きされる保険料や税金は前年の所得や年齢によって変わるため、同じ年金額でも手元に残る金額は人によって異なります。

まずは振込通知書で手取りを確かめ、そのうえで貯蓄をどのペースで取り崩すかを決めておくと安心です。判断に迷うときは年金事務所や金融機関の窓口に相談してみてください。

4. おひとりさまの家計は「貯蓄の中央値」と「年金の手取り」で測る

60歳代・単身世帯の貯蓄は、平均1364万円に対して中央値300万円でした。貯蓄のない方が30.4%いる一方、2000万円以上の方も21.1%いる、差の大きい年代です。

年金は年18万円以上で天引きの対象になり、介護保険料や公的医療保険料、住民税や所得税が差し引かれます。振り込まれるのは手取りで、65歳を過ぎると介護保険料が新たに加わります。

やることは3つです。振込通知書で額面と手取りを分けて確かめ、手取りで生活費がまかなえるかを見て取り崩しの上限を決めます。

そして、生活防衛資金を預貯金で確保しておくことです。

平均との差だけで不安になる必要はありません。数字にして持っておくことが、ひとりの暮らしの何よりの備えになります。

参考資料

中本 智恵