再来月10月は、偶数月に支払われる公的年金の支給月にあたります。ひとり暮らしで年金を受け取っている方にとっては、通知された金額と実際の振込額を見比べる良い機会です。

おひとりさまの老後を支えるのは、年金と自分の蓄えの2つだけです。まずは同じ年代がどれくらいの貯蓄を持っているのかを、平均と中央値の両方から確かめておきたいところです。

この記事では、60歳代・単身世帯の貯蓄額を確認したうえで、年金から差し引かれる天引きのしくみと手取りの見方を整理します。

中本 智恵

銀行員だった頃、退職金を受け取った方から運用のご相談をいただくことがありました。まとまったお金が入ったときこそ、どこに置いておくかで迷われる方が多いという印象があります。

まずは同じ年代の平均と中央値を、自分のものさしとして押さえておくと考えやすくなります。

なお、60歳代・単身世帯の貯蓄額と年金の天引きについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
ココがポイント
  • 60歳代・単身世帯の貯蓄は平均1364万円に対して中央値300万円で、4倍以上の開きがある
  • 貯蓄のない人が30.4%いる一方、2000万円以上の人も21.1%と差が大きい年代
  • 年金が年18万円以上あると天引きの対象になり、振り込まれるのは手取り

1. 60歳代おひとりさまの貯蓄は平均1364万円、中央値は300万円

まずは貯蓄の実像から確認します。金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔単身世帯〕」の数字を、LIMOの記事「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認」から引用して見ていきましょう。

貯蓄のない人が3割を占める一方、2000万円以上の人も2割いる1/1

おひとりさま60歳代の貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔単身世帯〕」をもとにLIMO編集部作成

60歳代のおひとりさまでは、平均1364万円に対して中央値300万円となっています。

出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認

2つの数字が4倍以上離れているのは、蓄えの厚い一部の人が平均を押し上げているためです。内訳を見ると、2000万円以上の人が21.1%いる一方で、貯蓄のない人も30.4%と、およそ3人に1人を占めています。

平均額だけを見て安心したり落ち込んだりせず、実感に近い中央値もあわせて自分の位置を測っておきたいところです。

1.1 調査でいう「金融資産」に普通預金の残高は含まれない

数字を読むうえで、何が集計されているのかも押さえておく必要があります。

この調査における金融資産とは、預貯金に加えて株式や投資信託、生命保険などを指します。ただし、日常的に決済で利用する普通預金口座の残高は対象外です。

出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認

つまり、生活費のやりとりに使っている口座の残高は数字に入っていません。手元の預金だけを思い浮かべて比べると、実態とずれることがあります。

1.2 貯蓄の中央値300万円は、月いくら取り崩すと何年もつ?

中央値の300万円を、年金で足りない分に充てていく前提で試算してみます。運用による増減や物価の上昇は考えないものとします。

  • 毎月2万円ずつ取り崩す:150カ月=約12年6カ月
  • 毎月3万円ずつ取り崩す:100カ月=約8年4カ月
  • 毎月5万円ずつ取り崩す:60カ月=約5年

平均の1364万円で同じように毎月3万円を取り崩すと、454カ月=約37年10カ月となります。中央値の場合との差は約29年分です。

毎月いくら足りないのかが決まれば、蓄えが何年もつのかはこのように単純な割り算で見通せます。あくまで一定の前提を置いた目安の試算ですが、取り崩しの上限を決めるときの出発点になります。

中本 智恵
同じ60歳代でこれだけ差が開くのは、現役時代の収入だけでなく、いつから備え始めたかの違いも影響しています。中央値に届いていないからといって焦る必要はありません。このあとは、年金から差し引かれる天引きのしくみを確認していきます。

2. 年金は年18万円以上で天引きの対象、振り込まれるのは手取り

年金は、通知された金額がそのまま振り込まれるわけではありません。差し引かれるものの中身を、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から引用して確認します。

年金額が一定以上(65歳以上で年額18万円以上など)の場合、以下の項目が年金から直接天引き(特別徴収)されます。

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

年額18万円は月あたり1万5000円です。年金を受け取っている方の多くが、この基準を超えていることになります。

2.1 天引きされるのは介護保険料・公的医療保険料・税金の4種類

差し引かれるものの内訳も見ておきましょう。

  • 介護保険料:65歳以上の全員が対象。市区町村によって金額が異なります。
  • 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料):75歳未満は国保、75歳以上は後期高齢者医療制度の保険料が引かれます。
  • 所得税および復興特別所得税:一定の控除額を超えた場合に課税されます。
  • 個人住民税および森林環境税:前年の所得に応じて課税されます。

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

介護保険料は市区町村によって金額が変わり、税金は前年の所得で決まります。つまり、同じ年金額でも手元に残る金額は人によって違ってきます。

2.2 65歳を過ぎると介護保険料が新たに加わる

年齢の節目にも注意が必要です。介護保険料は40歳から支払っていますが、65歳になると保険者(徴収主体)が市区町村へ変わり、原則として年金から直接天引き(特別徴収)される仕組みへ切り替わります。そのため、年金の振込明細書において、それまで目にしてこなかった控除項目として新たに現れることになります。

前の年と同じ感覚で家計を組んでいると、手取りが一段下がったことに気づくのが遅れます。ひとり暮らしでは頼れる収入が自分の年金と蓄えだけですので、額面ではなく手取りをもとに家計を組んでおきたいところです。

まずは年金の振込通知書を開いて、額面と実際の振込額を分けて確かめることから始めてみてください。

65歳以上の平均貯蓄額や1カ月の生活費のデータは、『【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説』で整理されています。