3. その15万円を、何年受け取ることになるか
月額の話をしてきましたが、年金は受け取る年数の分だけ積み上がります。そこまで含めて見ると、男女の差の見え方が変わります。
3.1 65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年
厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」によると、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。前年の令和6年からは男性が0.22年、女性が0.14年延びています。
なお平均寿命は男性81.35年、女性87.33年で、こちらも前年より男性0.25年・女性0.20年延びました。65歳まで生きた方の平均余命は、平均寿命から65を引いた年数より長くなります。
3.2 月額の差は、累計では半分ほどに縮む
平均年金月額をこの年数だけ受け取り続けたとして、累計額を出してみます。男性は16万9967円の19.68年分で約4014万円、女性は11万1413円の24.52年分で約3278万円です。
月額の差は5万8554円ですから、同じ年数なら累計で約1383万円の開きになるはずでした。実際には受け取る年数が女性のほうが4.84年長いため、差は約736万円にとどまります。
女性は15万円に届いている割合が12.3%と低い一方で、受け取る期間は長くなります。月額だけを見ていると、この分が抜け落ちます。
受け取る年数まで含めると、男女の差は月額から受ける印象ほど大きくありません3/3
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」・厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」をもとにLIMO編集部作成
もちろん平均余命はあくまで平均で、実際に何年受け取るかは人によります。それでも、月額だけで老後を考えると期間の要素が抜け落ちることは意識しておきたいところです。
4. 平均と比べるより、分布のどこにいるかを見る
ここまでの数字を、自分の老後の設計にどう使うかという話をしておきます。
4.1 平均は上に引っ張られた数字
今回の分布がまさにそうで、いちばん人数が多いのは10万円台なのに、平均は15万289円です。上のほうに長い裾があるぶん、平均が押し上げられています。
自分がどのあたりにいるかを知りたいなら、平均と比べるより分布のどこに入るかを見るほうが実態に近づきます。ねんきん定期便やねんきんネットの見込額を、今回の階級別のグラフに当てはめてみてください。
4.2 見るべきは額面ではなく振込額
そのうえで、生活費と突き合わせるのは額面ではなく手取りです。年金からも介護保険料や公的医療保険の保険料、所得税や個人住民税が天引きされるため、口座に入るのは額面より少なくなります。
どれくらい目減りするのかについて、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用しておきます。
年金額が一定以上(65歳以上で年額18万円以上など)の場合、以下の項目が年金から直接天引き(特別徴収)されます。これにより、手取り額は額面の約80%〜85%に目減りします。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
実際に引かれる額は、毎年6月に届く年金振込通知書で項目ごとに確認できます。家計の計画を立てる段階では、額面から1割から2割ほど引いた額で考えておくと、受け取り始めてからのずれが小さくなります。
5. まとめにかえて
厚生年金を月15万円以上受け取っているのは、受給権者1608万5696人のうち801万5484人で49.8%でした。男女別では男性68.8%、女性12.3%と大きな差があります。
ただし65歳の平均余命は男性19.68年に対して女性24.52年です。受け取る年数まで含めた累計で見ると、男性約4014万円・女性約3278万円と、月額から受ける印象ほどの開きにはなりません。
まずは自分の見込額が分布のどこに入るかを、ねんきんネットやねんきん定期便で確かめてみてください。そのうえで足りない分をどう埋めるかを考えるほうが、平均額と比べて一喜一憂するより先に進めます。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
和田 直子