6. 契約を一覧にして、家族と共有しておく。50代・60代の「手続きが心配」にファイナンシャルアドバイザー・神田翔平が答える

日頃のご相談では、資産をどう増やすかというお話だけでなく、「自分に何かあったとき、家族が手続きで困らないだろうか」というご不安を数多くお聞きします。とくに50代・60代の方から寄せられることの多いテーマです。ここでは、長い時間をかけて複数の契約を持つに至った方の一事例をもとに、神田翔平さんに伺った考え方をご紹介します。

6.1 商品が増えるほど、家族が手続きでつまずきやすくなる

60代になると、NISAでの積立、個人年金、外貨建ての保険、債券や投資信託と、長い時間をかけて増えてきた契約が手元にいくつも並びます。分散の意味は理解していても、相談の場では次のような声を耳にします。

60代(ご相談者)
いろいろなものに分散するという考え方は理解できます。ただ、商品が増えていくと、私に何かあったときに妻が相続の手続きで困らないか、そこが心配なんです。どんな手続きが必要で、どこに連絡すればいいのか、妻には何も伝えていませんから。

こうしたご相談には、いざというときの手続きも私たちがサポートできるとお伝えしています。商品選びの話よりも、この一言で肩の力が抜ける方は少なくありません。手続きへの不安は、何を選ぶかと同じか、それ以上に重く受け止められているのだと感じる場面です。

6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・神田翔平が回答】まず「何が、どこにあるか」を1枚にまとめる

神田 翔平

「今まで、家族のためにいろいろな資産形成や保険を活用してきたが、実際に手続きが煩雑になってしまい家族が困ってしまうのではないか」というご不安はお客様からもよく頂くお悩みです。

実際に、ご家族からこれ以上なにか新規の商品・契約を増やさないでくれと言われるお客様もいらっしゃいました。

ただ、これはお互いに資産状況が不透明な点があるために発生している課題で有ることが多いです。
ご自分の両親がどのような契約をしているのかをすべて把握している方はそこまで多くなく、何となくいろいろな契約をしているようだが、自分がその手続きができるのだろうかというご不安をお持ちになるようです。

解消の手段として、まずは自分の資産を正確に次世代の人たちがわかるようにしてあげましょう。

では、実際に何をしておけばよいのでしょうか。50代・60代のお客様にお伝えしているのは、難しい準備ではなく、次の3つです。

6.3 保有している契約を1枚の一覧に書き出す

NISAの口座、個人年金、保険、債券や投資信託を、どの会社にどの契約があるのかという形で1枚にまとめます。これだけで、ご家族が最初につまずく「そもそも何があるのか分からない」という状態はなくなります。形式は手書きのメモでも表計算ソフトでも構いません。ご家族が探さずに見つけられる場所に置いておくことのほうが大切です。

6.4 手続きの窓口と連絡先を一覧に書き添える

相続などの手続きは、契約ごとに届け出先も進め方も違います。どこに連絡すれば手続きが動き出すのかを書き添え、担当者に手続きのサポートを頼めることまで共有しておくと、ご家族の負担はぐんと軽くなります。連絡先が分かっているというだけで、ご家族は最初の一本の電話をかけられるようになります。

6.5 商品を増やすときは、一覧に載る数も一緒に考える

円建ての資産に偏らない分散は大切ですが、種類が増えればその分だけ手続きも増えます。公的年金を運用するGPIFの資産配分のような考え方を参考にしながら、必要な範囲に絞っていく。そのうえで、増やすときはご家族にも伝え、相談したうえでご本人が決める。決めるのはあくまでご本人であり、ご家族には判断の材料として一覧を共有しておく、という形が、一覧を保ち続けるコツです。

6.6 請求や届け出が必要なものは、窓口で最新の要件を確認する

なお、外貨建ての商品や投資信託には為替や価格の変動があり、元本が保証されるものではありません。一覧をつくる作業は、そうしたリスクの性質をご家族と共有しておく機会にもなります。

また、公的年金や健康保険、勤務先の制度などには、ご遺族からの請求や届け出があって初めて手続きが進むものもあります。受け取れる要件や請求の期限、金額は、個々の状況や制度改正によって変わります。この記事の内容だけで判断せず、最新の取り扱いは年金事務所や自治体の窓口、加入先の金融機関・保険会社にご確認ください。一覧に窓口を書き添えておくことは、その確認をご家族が後からたどれるようにしておくことでもあります。

必要な手続きや準備しておくべき内容は、家族構成や保有している契約、お住まいの地域によって一人ひとり異なります。実際に進める際は、ご自身の状況をふまえて専門家に個別にご相談ください。

7. 著者からひとこと:上手く制度を活用して物価高を乗り切ろう

本記事ではシニア世代の公的なお金について紹介してきました。

現在ある制度や新たな制度についても確認しておく必要がありますので、普段から少しずつでも情報収集をしておくようにしましょう。

特に今回紹介したものについては、申請が必要なものですので申請漏れのないように気を付けましょう。

その上で老後生活の基盤となる年金、今回紹介していない地方自治体独自の制度なども活用することで物価上昇が続いていく今、少しでもゆとりある暮らしができるように上手く制度を活用していきましょう。

8. よくある質問(FAQ)

8.1 Q. 退職後、失業手当をもらっている間は、配偶者の社会保険の扶養に入れる?

A. 失業手当(基本手当)の「日額」によります。失業手当は非課税のため所得税の計算には入りませんが、健康保険の扶養審査では「収入」として厳格にカウントされます。60歳未満なら日額3612円(年収換算130万円未満)、60歳以上なら日額5000円(年収換算180万円未満)を超えている場合、手当を受給している期間中は配偶者の扶養に入れず、自分で国民健康保険に加入して保険料を支払う必要があります。

8.2 Q. 役所から給付金の案内が何も来ないのですが、対象外ということ?

A. そうとは限りません。年金生活者支援給付金のように親切にハガキが来るものもありますが、加給年金、高年齢雇用継続給付、失業手当などは、すべて「自己申告(申請主義)」です。条件を満たしていても役所から案内は来ません。自分で年金事務所やハローワークに出向き、「自分は対象になりますか?」と手続きのアクションを起こす必要があります。

8.3 Q. 特別支給の老齢厚生年金と失業手当、どちらをもらった方が得?

A. 個別の「年金額」と「失業手当の日額・給付日数」を比較計算しないと正解は出ません。現役時代の給与が高く失業手当の日額が高い人はハローワークで手続きをした方が得になり、逆に給与が低めで年金加入歴が長い人は、失業手当を受けずに年金をもらい続けた方がトータルの受取額が多くなる場合があります。退職前に最寄りの年金事務所で年金見込額を出し、ハローワークの失業手当計算ツール等でシミュレーションするといいでしょう。

参考資料