公的年金の平均額を見ると「意外ともらえる」と感じる方もいれば、「思ったより少ない」と感じる方もいるでしょう。しかし、平均額はあくまで全体をならした数字にすぎません。実際に厚生年金を月15万円以上受け取っている人は、男女でどれほど違うのでしょうか。

本記事では、公的年金の「2階建て」の仕組みをおさらいしたうえで、厚生年金を月15万円以上受給している人の割合を、男女別に確認していきます。

鶴田 綾
公的年金の平均額だけを見ても、ご自身の状況をイメージするのは難しいものです。ご相談を受けるなかでも、「平均より多いから安心」「平均より少ないから不安」と、平均値だけで一喜一憂される方をよく見かけます。まずは受給額の分布を知ることが、ご自身の年金額を客観的に捉えるきっかけになると感じています。

なお、厚生年金を月15万円以上受給している人の割合に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
ココがポイント
  • 公的年金は国民年金と厚生年金の「2階建て構造」で、厚生年金は現役時代の報酬・加入期間で決まる
  • 厚生年金(国民年金部分を含む)を月15万円以上受給している人は、男女全体で49.8%
  • 男女別に見ると、男性は68.8%が月15万円以上に届く一方、女性は12.3%にとどまる

1. 公的年金の「2階建て」構造をおさらい

公的年金のしくみは、「国民年金」と「厚生年金」の2つの年金制度から成り立つため、しばしば「2階建て構造」と表現されます。

1.1 【国民年金】1階部分

  • 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員一律、年度ごとに見直しあり(※1)
  • 年金額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降に満額の基礎年金(※2)を受給できる(未納期間分に応じて減額調整)

※1 国民年金保険料:1万7920円(2026年度の月額)
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:7万608円(2026年度の月額)

1.2 【厚生年金】2階部分

  • 加入対象:主に会社員、公務員など
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定する報酬比例制
  • 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せして支給)

国民年金の保険料は加入者全員が同じ額を支払います。一方で、厚生年金の保険料は報酬(給与・賞与)に応じて決められた額を支払う「報酬比例制」です。毎月の給与や賞与などの「報酬」に、所定の保険料率を乗じて保険料が決まるため、納付する保険料は人それぞれ異なります。つまり、現役時代に「国民年金」または「厚生年金」のどちらに加入していたか、または、どちらの加入期間が長かったかにより、老後の年金額には大きな個人差が出るのです。

鶴田 綾
厚生年金は報酬比例の仕組みのため、現役時代の収入や加入期間によって受給額に大きな差が出ます。ご自身の加入履歴がどちらの制度に、どの程度の期間あるのかを一度確認しておくとよいでしょう。

2. 厚生年金「月15万円以上」もらう人は何パーセント?

厚生年金の年金額は、現役時代の収入や加入期間によって個人差が出ますが、その実態が気になるところでしょう。厚生労働省の資料「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は男女全体で15万289円です。公的年金は、原則として2か月に一度支給されるため、この平均額で考えると、一度の支給日に約30万円が振り込まれる計算になります。では、この平均である月額15万円をクリアしている人は、受給権者全体でどのくらいの割合を占めるのでしょうか。

※下記の厚生年金の年金月額には国民年金(老齢基礎年金)部分を含みます。

2.1 【男女全体】厚生年金「ひと月15万円」もらえる人は何パーセント?

【男女全体】厚生年金の平均年金月額:15万289円

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金を月額15万円以上受給している人は、男女全体の受給権者の半分に満たない49.8%です。厚生年金を受給していない人も含めて計算すると、この割合はさらに低くなります。

3. 【シミュレーション】厚生年金で月15万円に到達するには、平均年収がどれくらい必要?

厚生年金の報酬比例部分は、目安として「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算されます。国民年金部分(満額7万608円)を含めて月15万円に到達するには、報酬比例部分だけで月額約7万9392円(年額約95万2704円)が必要という計算になります。40年間(480カ月)加入した場合で逆算すると、必要な平均標準報酬額は次のとおりです。

  • 95万2704円÷(5.481/1000×480カ月)=約36万2000円

つまり、平均標準報酬額(賞与含む月額換算)が約36万2000円の水準で40年間就業すれば、厚生年金は目安として月15万円程度に到達する計算になります。あくまで単純化した試算であり、実際の受給額は加入期間の内訳や賞与の有無によって変わります。

3.1 【男女別】厚生年金「ひと月15万円」もらえる人は何パーセント?

では、男女別に見るとどうでしょう。

厚生年金保険年金月額階級ごとの受給権者数3/3

厚生年金保険年金月額階級ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

【男性】厚生年金の平均年金月額:16万9967円

  • ~1万円:3万446人
  • 1万円以上~2万円未満:1万257人
  • 2万円以上~3万円未満:5404人
  • 3万円以上~4万円未満:5185人
  • 4万円以上~5万円未満:1万4747人
  • 5万円以上~6万円未満:3万9134人
  • 6万円以上~7万円未満:13万4214人
  • 7万円以上~8万円未満:23万186人
  • 8万円以上~9万円未満:26万278人
  • 9万円以上~10万円未満:26万99人
  • 10万円以上~11万円未満:29万8838人
  • 11万円以上~12万円未満:37万6357人
  • 12万円以上~13万円未満:45万6689人
  • 13万円以上~14万円未満:54万9337人
  • 14万円以上~15万円未満:65万7775人
  • 15万円以上~16万円未満:76万4713人
  • 16万円以上~17万円未満:85万3718人
  • 17万円以上~18万円未満:92万6462人
  • 18万円以上~19万円未満:95万5327人
  • 19万円以上~20万円未満:91万3998人
  • 20万円以上~21万円未満:82万204人
  • 21万円以上~22万円未満:68万2702人
  • 22万円以上~23万円未満:50万9842人
  • 23万円以上~24万円未満:34万1191人
  • 24万円以上~25万円未満:22万4720人
  • 25万円以上~26万円未満:14万7563人
  • 26万円以上~27万円未満:9万2856人
  • 27万円以上~28万円未満:5万4156人
  • 28万円以上~29万円未満:2万9810人
  • 29万円以上~30万円未満:1万4935人
  • 30万円以上~:1万8801人

【女性】厚生年金の平均年金月額:11万1413円

  • ~1万円:1万2953人
  • 1万円以上~2万円未満:3880人
  • 2万円以上~3万円未満:2万9993人
  • 3万円以上~4万円未満:6万3025人
  • 4万円以上~5万円未満:6万1945人
  • 5万円以上~6万円未満:6万9313人
  • 6万円以上~7万円未満:18万892人
  • 7万円以上~8万円未満:34万8764人
  • 8万円以上~9万円未満:54万1901人
  • 9万円以上~10万円未満:75万1358人
  • 10万円以上~11万円未満:81万3990人
  • 11万円以上~12万円未満:69万5128人
  • 12万円以上~13万円未満:52万2466人
  • 13万円以上~14万円未満:37万4169人
  • 14万円以上~15万円未満:27万1489人
  • 15万円以上~16万円未満:20万322人
  • 16万円以上~17万円未満:14万7604人
  • 17万円以上~18万円未満:10万5489人
  • 18万円以上~19万円未満:7万1561人
  • 19万円以上~20万円未満:4万8617人
  • 20万円以上~21万円未満:3万3387人
  • 21万円以上~22万円未満:2万1931人
  • 22万円以上~23万円未満:1万4116人
  • 23万円以上~24万円未満:8813人
  • 24万円以上~25万円未満:5491人
  • 25万円以上~26万円未満:3233人
  • 26万円以上~27万円未満:1811人
  • 27万円以上~28万円未満:927人
  • 28万円以上~29万円未満:479人
  • 29万円以上~30万円未満:223人
  • 30万円以上~:482人

月額15万円以上の年金を受給している割合は、男性で68.8%に上るのに対し、女性ではわずか12.3%にとどまっています。公的年金は老後の生活設計の基盤となりますが、それだけで十分かを把握することが大切となります。ぜひ「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を確認し、早めの資金計画を立てるようにしましょう。

鶴田 綾
男性の約7割が月15万円以上に届く一方、女性は1割強にとどまるという差は、現役時代の働き方の違いがそのまま反映された結果です。ご自身やパートナーの年金見込み額は、平均や割合にとらわれず、ねんきんネットなどで個別に確認しておきましょう。

4. 監修者コメント:男女差を踏まえたライフプラン設計のすすめ

村岸 理美

厚生年金を月15万円以上受け取っている方の割合が、男性68.8%に対して女性はわずか12.3%というデータは、公的年金制度がそのまま反映している「現役時代の働き方の差」を如実に示しています。CFPとして家計相談を受けるなかでも、この男女差を正しく理解しないまま老後設計を進めてしまうケースを見てきました。

厚生年金は報酬比例の仕組みのため、パート期間が長かった方や、出産・育児で厚生年金の加入期間が短くなった方は、平均を下回りやすい傾向があります。ご自身がどちら側に近いのかを、まずは客観的なデータで把握しておくことが大切です。

特に女性は、配偶者に先立たれた場合や離婚した場合に、老後の年金収入が想定より少なくなるケースが多く見られます。世帯単位だけでなく、ご自身名義の年金額も個別に確認しておくことをお勧めします。

公的年金だけで不安がある場合は、NISAやiDeCoといった資産形成の制度を早い段階から取り入れることも選択肢の一つです。ねんきん定期便やねんきんネットで、ご自身の見込み額を確認するところから始めてみましょう。

5. 【シミュレーション】女性の平均年金月額、繰下げ受給で「月15万円」に届かせるには?

あくまで一例として、女性の厚生年金平均月額11万1413円を基準に、繰下げ受給(1カ月あたり+0.7%)でどこまで繰り下げれば月15万円に届くかを試算してみます。

  • 必要な増額率:15万円÷11万1413円-1=約34.6%
  • 必要な繰下げ月数:34.6%÷0.7%=約49カ月(4年1カ月)
  • 65歳受給開始の場合、69歳2カ月まで繰り下げると月15万円程度に到達する計算

繰下げ受給は月々の年金額が増える一方、受け取り始めるまでの期間は年金収入がなくなります。健康状態や貯蓄状況、他の収入源とのバランスを踏まえたうえで、あくまで一例としてご参照ください。