4. 資産運用のアドバイスの現場で見えていた「申告の選択」の重み

大手銀行で資産運用のアドバイザーを10年ほど務めていた頃、配当や株式の売却益をどう申告するかという相談を数多く受けてきました。

特定口座で源泉徴収だけにとどめるか、確定申告で配当控除や損益通算を狙うかは、税金だけでなく保険料にも影響する選択でした。

4.1 「申告しない」という選択の意味が薄れていく

今回の法律が施行されれば、特定口座で源泉徴収だけを選んでいても、金融所得が保険料や窓口負担割合の判定に反映されるようになります。これまで有効だった「申告しない」という選択の意味は、薄れていくことになります。

だからといって、申告そのものをやめるべきというわけではありません。配当控除や損益通算にはそれぞれ税制上のメリットがあり、判断の軸を保険料だけに置く必要はないと考えます。

5. 世帯で見る資産配分という視点

資産運用の相談では、本人名義だけでなく配偶者名義の口座もあわせて、世帯全体の資産配分を考えることをすすめてきました。

5.1 配偶者名義の活用は今後も意味を持つ

後期高齢者医療の窓口負担割合は、世帯内の被保険者ごとの所得を見て判定されます。世帯内で誰がどの資産を持ち、どの所得区分に入るかによって、世帯全体の負担は変わってきます。

名義や保有の仕方を見直すこと自体は、税制や社会保険料の制度が変わっても引き続き意味を持つ視点です。ただし、判定のルールは今後変わる可能性があるため、一度決めた配分をそのままにせず、制度改正のたびに見直すことをおすすめします。

6. 施行までに準備しておきたいこと

施行時期がまだ決まっていない今のうちに、確認しておきたいことを整理しておきます。

6.1 自分の金融資産がどの口座にあるか把握する

NISA口座、特定口座、一般口座のどこにどれだけの資産があるかを、まず把握しておきましょう。NISA口座の非課税枠は今回の見直しの対象外ですが、非課税投資枠には上限があるため、特定口座や一般口座での保有が一定量残る方も多いはずです。

6.2 迷ったら金融機関や窓口に相談する

申告方法の選択は、税金と保険料の両方に影響する判断です。証券会社や税理士、市区町村の後期高齢者医療の窓口など、複数の立場から意見を聞いたうえで決めることをおすすめします。

7. まとめ

2026年6月5日に公布された法律により、後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合に金融所得を反映する仕組みが設けられました。施行時期はまだ決まっていませんが、確定申告をしていない配当や譲渡益もいずれ判定に含まれるようになる見込みです。

NISA口座の非課税枠は対象外ですが、特定口座や一般口座で保有する資産については、申告の選択と保険料・窓口負担への影響をあわせて考える必要が出てきます。

まずは自分の資産がどの口座にあるかを確認し、判断に迷ったときは金融機関や市区町村の窓口に相談してみてください。

参考資料

和田 直子