年収が上がるほど金融資産も着実に積み上がっていく——そうした傾向は各種データからも見て取れます。ただし、老後の安心を左右するのは資産額の大小だけではありません。
特に医療費や介護費は「いつ・いくらかかるか」が読みにくく、十分な資産を築いた世帯であっても、いざ計画を立てようとすると手が止まってしまうことがあります。
今回は、年収別・年代別の金融資産保有額のデータを確認したうえで、老後資金計画で落とし穴になりやすい「医療費・介護費」の考え方を整理します。
※この記事では、データ部分などの一部を以下の記事から引用してます。
- 世帯年収1200万円以上の金融資産保有額は5635万円、全国平均1940万円の約2.9倍
- 二人以上世帯の金融資産保有額は60歳代で平均2683万円・中央値1400万円まで増加
- 資産が多くても老後不安が消えない背景には「医療費・介護費」の不確実性がある
1. 世帯年収が上がるほど金融資産は増える、その中身は?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)」から、世帯年収ごとの金融資産の内訳を見ていきます。
※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金や不動産、金などの残高は含まれていません。
1.1 非保有世帯も含めた、金融商品の種類別保有額
《年間収入別》金融資産保有額
全国:1940万円
- 収入はない:634万円
- 300万円未満:858万円
- 300~500万円未満:1431万円
- 500~750万円未満:1755万円
- 750~1000万円未満:2222万円
- 1000~1200万円未満:2725万円
- 1200万円以上:5635万円
《年間収入別》預貯金(運用または将来の備え)
全国:745万円
- 収入はない:385万円
- 300万円未満:368万円
- 300~500万円未満:631万円
- 500~750万円未満:693万円
- 750~1000万円未満:908万円
- 1000~1200万円未満:1028万円
- 1200万円以上:1649万円
《年間収入別》債券
全国:78万円
- 収入はない:7万円
- 300万円未満:36万円
- 300~500万円未満:54万円
- 500~750万円未満:58万円
- 750~1000万円未満:67万円
- 1000~1200万円未満:91万円
- 1200万円以上:343万円
《年間収入別》株式
全国:433万円
- 収入はない:33万円
- 300万円未満:191万円
- 300~500万円未満:235万円
- 500~750万円未満:365万円
- 750~1000万円未満:434万円
- 1000~1200万円未満:572万円
- 1200万円以上:1792万円
《年間収入別》投資信託
全国:216万円
- 収入はない:153万円
- 300万円未満:79万円
- 300~500万円未満:167万円
- 500~750万円未満:189万円
- 750~1000万円未満:238万円
- 1000~1200万円未満:292万円
- 1200万円以上:682万円
《年間収入別》「債券・株式・投資信託の合計額」と「金融資産保有額全体に占める割合」
全国:727万円(24.79%)
- 収入はない:193万円(8.99%)
- 300万円未満:306万円(22.14%)
- 300~500万円未満:456万円(26.21%)
- 500~750万円未満:612万円(23.42%)
- 750~1000万円未満:739万円(34.29%)
- 1000~1200万円未満:955万円(26.68%)
- 1200万円以上:2817万円(26.69%)
年収の水準が上がるほど、金融資産の総額も大きく積み上がる様子が数字に表れています。中でも株式・投資信託・債券といった有価証券は、高年収帯になるほど保有額が伸びる傾向が顕著です。
もっとも、資産全体に占める有価証券の比率で見ると様相は変わります。年収750万〜1000万円未満の層でやや高い34.29%が見られるものの、無収入世帯を除けば、他の年収帯はおおむね20%台で横並びです。資産運用は一握りの高年収層だけのものではなく、幅広い年収帯に浸透していることがうかがえます。
これは、高年収層ほど資産を積極的にリスク資産へ寄せているわけではなく、生活費や急な出費に備える資金と、値動きを受け入れて増やす資金とを、年収の水準にかかわらず一定の割合で使い分けていることを示しています。金額の大小以上に、資産の使い道に応じた配分の考え方自体は、どの年収帯でも共通しているといえそうです。
2. 年代が上がるほど貯蓄は増える、単身・二人以上世帯で見る実態
続いて、20歳代から70歳代までの金融資産保有額を、単身世帯と二人以上世帯に分けて確認します。金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和7年)」および「同[二人以上世帯調査](令和7年)」をもとにした、年代別の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)です。
2.1 単身世帯の金融資産保有額
- 20歳代:平均値255万円・中央値37万円
- 30歳代:平均値501万円・中央値100万円
- 40歳代:平均値859万円・中央値100万円
- 50歳代:平均値999万円・中央値120万円
- 60歳代:平均値1364万円・中央値300万円
- 70歳代:平均値1489万円・中央値500万円
2.2 二人以上世帯の金融資産保有額
- 20歳代:平均値525万円・中央値125万円
- 30歳代:平均値1096万円・中央値311万円
- 40歳代:平均値1486万円・中央値500万円
- 50歳代:平均値1908万円・中央値700万円
- 60歳代:平均値2683万円・中央値1400万円
- 70歳代:平均値2416万円・中央値1178万円
単身・二人以上のどちらの世帯類型でも、年代が上がるにつれて貯蓄額が積み上がる傾向は共通しています。単身世帯では60歳代で中央値が大きく上昇しており、退職金の受け取りなどが押し上げ要因になっていると考えられます。二人以上世帯は単身世帯より総じて高い水準にあり、世帯人数の多さに伴う将来資金の必要性や、教育費など目的の明確な資産準備が影響していると見られます。
ただし、こうして貯蓄額が積み上がった世帯であっても、老後の安心が自動的に得られるわけではありません。
資産の総額が十分に見えても、医療費や介護費のように「いつ・いくら必要になるか」が読みにくい支出を前にすると、貯蓄のどこまでを自由に使ってよいのか判断がつかず、計画が止まってしまうケースが少なくないのです。
共通しているのは、医療費や介護費という「金額の読めない支出」の存在です。いくら資産の総額が大きくても、この読めない部分がどれくらいになるか分からないままでは、貯蓄のどこまでを自由に使ってよいのか判断がつかず、漠然とした不安だけが残ってしまいます。
データからは、年収や年代が上がるにつれて資産が積み上がる傾向が見て取れます。
しかし、資産の総額だけで安心するのではなく、「読めない支出」にどう備えるかという視点を持って老後計画を組み直すことが重要になります。




