75歳以上の方の後期高齢者医療制度の保険料は、年金から自動的に引かれているケースが多いのではないでしょうか。手続きが要らない分、そのままにしている方も少なくありません。
厚生労働省が2026年4月10日に公表した「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」によると、被保険者一人当たりの平均保険料額は年9万5875円で、月額では「7989円」となる見込みです。
この保険料は、市区町村等への手続きによって、年金からの天引きに代えて口座振替を選べます。そして納め方を変えると、社会保険料控除を受ける人まで変わります。
この記事では、後期高齢者医療制度の保険料の納め方と、口座振替に変えた場合に控除がどう扱われるのかを公的資料で整理します。
- 令和8・9年度の後期高齢者医療の保険料は、一人当たり平均で年9万5875円・月7989円の見込み
- 年金からの天引き(特別徴収)は、市区町村等への手続きで口座振替に変更できる
- 天引きのままだと控除は本人のみ。口座振替なら実際に支払った家族の社会保険料控除にできる
1. 後期高齢者医療の保険料は令和8・9年度で月7989円の見込み
まず保険料の水準を確認します。
厚生労働省の公表によると、令和8・9年度の後期高齢者医療制度の医療分について、被保険者一人当たりの平均保険料額は月額7989円、年額9万5875円となる見込みです。
令和6・7年度は月額7411円、年額8万8940円でした。578円、7.8%の増加となります。
内訳を見ると、被保険者均等割額は年額5万6083円で月額4673円、所得割率は10.17%です。令和6・7年度の均等割額は年額5万389円でしたので、こちらも上がっています。
あわせて令和8年度から設定された子ども・子育て支援金分は、一人当たり平均で月額194円、年額2333円の見込みです。
2. 後期高齢者医療の保険料は原則として年金から天引きされる
次に、この保険料をどう納めるのかを見ていきます。
後期高齢者医療制度の保険料は、条件を満たす方については年金から差し引かれます。これを特別徴収といいます。
2.1 特別徴収になるのは2つの条件を満たす人
豊島区の公表を例に、条件を確かめます。
1つ目は、引き落としの対象となる公的年金の受給額が年額18万円以上であることです。2つ目は、後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計額が、1回当たりに受け取る公的年金額の2分の1以下であることです。
この両方に該当すると特別徴収になります。どちらかを満たさない場合は、納付書や口座振替で自分で納める普通徴収となります。
2.2 年度途中は一時的に納付書になることもある
特別徴収の対象であっても、すぐに天引きが始まるわけではありません。
同区では、年度途中に転入した方、年度途中に75歳の誕生日を迎えた方、所得額の変更にともなって保険料が増減する方について、一時的に納付書で納める場合があると案内されています。
特別徴収が始まるのは4月または10月からで、徴収方法が変わる場合は4月または7月に通知が送られます。
3. 後期高齢者医療の保険料は口座振替に変更できる
ここからが本題です。天引きのままにしておく必要はありません。
国税庁の説明によると、平成21年4月以降の保険料については、市区町村等へ一定の手続きを行うことで、年金からの特別徴収に代えて口座振替により支払うことが選択できるとされています。
豊島区でも、特別徴収の対象になっている方が口座振替払いに変更できると案内されています。ただし、未納があって納付が見込まれない場合は、変更が認められないことがあるとされています。
3.1 納め方を変えると社会保険料控除を受ける人が変わる
この変更が効いてくるのが、社会保険料控除です。
年金天引きのままだと本人の控除にしかならないが、口座振替なら支払った家族の控除にできる1/2
出所:国税庁「口座振替により支払った後期高齢者医療制度の保険料に係る社会保険料控除」、国税庁「後期高齢者医療制度の保険料に係る社会保険料控除」をもとにLIMO編集部作成
国税庁は、年金から特別徴収された場合について、その保険料を支払った者は年金の受給者自身であるため、年金の受給者に社会保険料控除が適用されるとしています。
つまり、天引きのままでは本人以外が控除を受けることはできません。同居の子が生活費を出していても、控除の対象にはなりません。
一方、口座振替に変更した場合は扱いが変わります。国税庁は、口座振替によりその保険料を支払った方に社会保険料控除が適用されるとしています。
対象になるのは、被保険者本人または被保険者と生計を一にする配偶者その他の親族です。同居の子の口座から振り替えれば、その子の控除にできることになります。
4. 後期高齢者医療の保険料を家族が払うと年1万9175円の差
では、控除を移すとどれくらいの違いになるのでしょうか。
所得税率が高い人が支払うほど、控除による税負担の軽減額は大きくなる2/2
出所:厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」、国税庁「No.1130 社会保険料控除」をもとにLIMO編集部作成
ここでは年間保険料を全国平均の9万5875円として計算します。社会保険料控除は、その年に実際に支払った金額の全額が対象です。
所得税率10%の家族が支払った場合、所得税で9587円、住民税率10%として住民税で9587円が軽くなる計算になります。合計で年1万9175円です。
所得税率20%の家族なら、所得税で1万9175円、住民税で9587円となり、合計は年2万8762円になります。
ただし、これは家族側の税負担だけを見た目安です。本人にも課税所得がある場合は、本人が控除を使ったほうが有利になることもあります。
復興特別所得税は考慮していません。実際の保険料額も都道府県ごとに異なりますので、金額はあくまで考え方を確かめるための目安です。
5. 後期高齢者医療とは違い、介護保険料は天引きを止められない
ここで一つ、区別しておきたいことがあります。
年金から引かれているお金は後期高齢者医療の保険料だけではありません。65歳以上の方の介護保険料も、同じように年金から差し引かれています。
ただし、こちらは納め方を選べません。兵庫県太子町の説明では、65歳以上の第1号被保険者の保険料について、特別徴収による方法が優先されるとされています。
根拠として挙げられているのは、介護保険法第131条および第135条の規定です。
同町は、介護保険料を普通徴収に変更できるかという問いに対して、できないと明記しています。被保険者の希望で年金天引きを止めることはできないという扱いです。
つまり、口座振替に変えて控除を移せるのは後期高齢者医療の保険料の側だけです。同じ通知書に並んで見えても、扱いが違う点は押さえておきたいところです。
窓口で支払う医療費の負担割合については、『【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説』で整理しています。
