6. 【元銀行員の視点】引き落としの口座は把握できる形にしておく

口座振替に変えると決めた場合、どの口座を指定するかという話になります。

銀行員だった頃、引き落としが残高不足でできなかったというご連絡を受けることがありました。給与や年金の入金日と引き落とし日がずれていて、一時的に足りなくなるケースです。

複数の口座に引き落としが分散していて、どの口座から何が引かれているのか把握しきれていない方も少なくありませんでした。通帳を見ても、項目名だけでは何の支払いか分からないという声もありました。

口座振替を増やすなら、引き落としをまとめる口座を決めておくほうが管理しやすくなります。年に一度、通帳や明細を通して見る習慣があると、抜けにも気づきやすくなります。

6.1 親の保険料を子の口座から払う場合の注意

控除を家族側に移す場合、口座の名義は支払う家族のものになります。

ここで気をつけたいのが、口座の名義と実際にお金を出している人が一致しているかという点です。名義だけを借りて本人のお金で払っている状態では、趣旨から外れてしまいます。

相続の手続きに関わっていた頃、家族の間で口座とお金の流れが混ざっていて、後から整理に時間がかかるケースを見てきました。誰の負担なのかがはっきりしている形にしておくほうが、後々も扱いやすくなります。

7. 口座振替に変える手続きの流れ

実際に変更する場合の進め方を整理します。

7.1 窓口は市区町村の後期高齢者医療担当

手続きの窓口は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当です。国税庁の説明でも、市区町村等へ一定の手続きを行うことで口座振替を選択できるとされています。

必要な持ち物や書類の様式は自治体によって異なります。通帳や届出印が必要になることもありますので、出向く前に電話やホームページで確かめておくと二度手間になりません。

7.2 切り替わる時期は決まっている

申し出たその月から変わるわけではありません。

豊島区の例では、特別徴収の開始は4月または10月からで、徴収方法が変わる場合は4月または7月に通知が送られます。控除を受けたい年に間に合うかどうかは、申し出の時期によって変わります。

年内に支払った分がその年の控除対象になりますので、いつから口座振替になるのかを窓口で確認しておくことが大切です。

8. 口座振替に変えても有利にならないケースがある

最後に、変える前に確かめておきたい点を挙げます。

1つ目は、本人の課税状況です。本人に十分な課税所得があり、その控除で税額が下がっているなら、家族側に移すことで本人の税負担が増える可能性があります。

2つ目は、家族側の所得水準です。支払う家族の所得税率が低ければ、軽くなる税額もその分小さくなります。

控除を移すこと自体が目的になってしまうと、手間に見合わないこともあります。

3つ目は、引き落とし不能のリスクです。天引きなら残高を気にする必要はありませんが、口座振替では残高の管理が自分の側に移ります。

納め忘れが続けば督促や延滞金の対象になります。

4つ目は、未納がある場合の扱いです。豊島区の例では、未納があって納付が見込まれない場合は口座振替への変更が認められないことがあるとされています。

どちらが有利かは世帯の所得状況で変わります。税の当てはめは税務署に、手続きや切り替え時期は市区町村の窓口に確認するのが確実です。

9. 後期高齢者医療の保険料は「納め方」も選べると知っておく

令和8・9年度の後期高齢者医療制度の保険料は、一人当たり平均で年9万5875円、月7989円の見込みです。前の2年間から7.8%上がりました。

この保険料は年金から天引きされるのが原則ですが、市区町村等への手続きで口座振替に変えられます。天引きのままだと控除は本人だけですが、口座振替なら実際に支払った家族の控除にできます。

全国平均の保険料で試算すると、所得税率10%の家族が支払った場合の目安は年1万9175円でした。ただし本人の課税状況によっては、動かさないほうがよい場合もあります。

不安を先に大きくする必要はありません。まずは手元の通知書で保険料額と納め方を確かめ、世帯の状況を整理してから市区町村の窓口や税務署に相談してみてください。

参考資料

中本 智恵