3. 老後の計画は、額面ではなく手取りで立てる
ここからは、資産運用アドバイザーとして個人のお客さまに向き合ってきた立場から、この数字の受け止め方をお伝えします。
老後の資金計画を立てるとき、年金の「額面」で計算してしまうと、実際の生活は想定より苦しくなります。介護保険料・医療保険料・住民税が差し引かれた後の金額が、実際に使えるお金だからです。
この点については、LIMOの記事「【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法」でも同じ指摘がされています。
ただし、ここから所得税や住民税、介護・医療保険料が天引きされるため、資金計画は必ず「手取り額」を基準に立てる必要があります。
出所:【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法
年金額を確認するときは、ねんきん定期便やねんきんネットで見込額を把握したうえで、そこから保険料と税が引かれることを前提に考えておきます。
4. 天引き額は、年金事務所に聞いても分からない
振込額が変わったとき、多くの方がまず年金事務所に問い合わせます。ところが、そこでは答えが出ないことがあります。
日本年金機構は、年金から特別徴収される各種保険料(税)の金額について、お住まいの市区町村が決定していると明示しています。年金機構は市区町村からの依頼に基づいて年金から差し引いているだけで、額そのものを算定しているわけではありません。
したがって、「保険料がいくらになったのか」「なぜ変わったのか」を知りたい場合の問い合わせ先は、年金事務所ではなく市区町村の担当窓口になります。介護保険料であれば介護保険担当、国民健康保険料であれば国民健康保険担当です。
4.1 保険料の天引きと医療費の窓口負担は別のもの
もう1つ混同されやすいのが、保険料の天引きと、医療機関の窓口で支払う自己負担割合の違いです。この2つは別の制度で、判定の基準も異なります。
窓口負担については、LIMOの記事「【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
世帯の所得や住民税の課税状況などに応じて、1割・2割・3割のいずれかの自己負担割合が適用される仕組みとなっており、その違いによって実際に支払う医療費にも大きな差が生じます。
出所:【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説
毎回の年金から引かれるのが保険料、医療機関にかかったときに支払うのが窓口負担です。家計への影響を考えるときは、この2つを分けて見ておくと整理しやすくなります。
5. 天引きが止まって、自分で納める形に変わることもある
これまで天引きされていたのに、ある時期から止まるケースがあります。日本年金機構は、特別徴収が中止される場合として2つを挙げています。
1つは、特別徴収の対象となっている年金が支払停止になった場合です。複数の年金の受給権がある人が年金を選択したときや、現況届が期限までに提出されなかったときが該当します。もう1つは、市区町村から日本年金機構へ中止の依頼があった場合です。
中止された後の再開については、市区町村からの再開依頼があれば、通常は初めての10月定期支払いから再開されるとされています。
注意したいのは、天引きが止まっても保険料の支払義務がなくなるわけではないという点です。納付書や口座振替に切り替わるため、手続きを放置すると未納になります。中止の理由については市区町村に問い合わせる必要があります。
6. 確認する順番を決めておく
振込額が想定と違ったとき、どこから調べればよいのでしょうか。順番を決めておくと迷いにくくなります。
6.1 まず年金振込通知書で内訳を見る
日本年金機構から届く年金振込通知書には、年金額から差し引かれる介護保険料や後期高齢者医療保険料、住民税などの内訳が記載されています。どの保険料がいくら引かれているのかは、まずここで確認できます。
6.2 金額の理由は市区町村に聞く
内訳を確認したうえで、金額そのものの根拠や変わった理由を知りたい場合は、市区町村の担当窓口に問い合わせます。保険料の段階がどう判定されたのか、前年の所得がどう反映されているのかは、市区町村でなければ分かりません。
6.3 負担が重いと感じたら減免制度の有無を尋ねる
保険料の負担が生活を圧迫していると感じる場合、市区町村によっては減免や徴収猶予の制度が用意されていることがあります。要件や申請方法は自治体ごとに異なるため、一律の説明はできません。
ただし、こうした制度は申請しなければ適用されないのが一般的です。該当しそうかどうかを含めて、市区町村の担当窓口に相談してみてください。制度の内容や運用は法令改正で変わることもあるため、最新の取り扱いは必ず窓口で確認するようにしましょう。
7. まとめにかえて
第9期介護保険事業計画期間の介護保険料は、全国加重平均で月6225円、年間では7万4700円という水準でした。第8期からは211円、約3.5%の増加です。
年金から天引きされるのは、年金の年間受給額が18万円以上の人です。介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税で、それぞれ対象年齢が異なります。国民健康保険料には、介護保険料との合計が年金額の2分の1を超えないことという条件も加わります。
そして、これらの額を決めているのは市区町村です。振込額に疑問を感じたら、年金振込通知書で内訳を確認し、金額の理由は市区町村の担当窓口に尋ねる。この順番を覚えておくだけでも、余計な遠回りを避けられます。
参考資料
- 厚生労働省『第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について』
- 日本年金機構『年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。』
- 日本年金機構『年金から特別徴収される介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税の金額はどのようにして決まるのですか。』
- 日本年金機構『年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税が特別徴収されていましたが、特別徴収が中止されました。どうしてですか。』
和田 直子