5. 50代からの新NISA、残り10年をどう設計する?「もう遅い」と感じたときの考え方をファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が整理します

50代になると、「今から資産運用を始めても遅いのではないか」と感じる方は少なくないといわれます。ですが、お金の置き場所と時間軸を整理してみると、そこまで悲観しなくてよい場合もあります。ここでは、50代に多いとされるお悩みの一般的な例をもとに、残された期間をどう設計するかという考え方を整理していきます。

5.1 退職までの時間を意識し始める50代。「今から始めても手遅れでは」という迷い

50代になると、退職までに残された時間を意識し始める方が増えます。これまで資産運用の経験がなく、預貯金だけで備えてきた方ほど不安は大きくなりがちです。たとえば、次のような声が挙げられます。

50代に多い声(一般的な例)
これまで資産運用は何もやってこなかったので、50代の今から始めても手遅れではないかと思っていました。まとまったお金は銀行預金に置いたままで、老後資金が足りるのか不安です。65歳までに少しでも増やせるものなら、やってみたい気持ちはあります。

こうした不安に対しては、65歳までという時間軸を区切って試算してみるのが一つの方法です。残された期間で何ができるのかが数字で見えると、「手遅れではなかった」と受け止め方が変わることは少なくないといわれます。もっとも、試算は前提の置き方によって結果が変わるものです。出てきた数字そのものより、選択肢を並べて比べられるようになることに意味があります。

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が回答】「期間の短さ」ではなく「残り10年の設計」に目を向ける

橋本 優理
50代だからといって資産運用を諦める必要はありません。
まずは、NISAなど利益が非課税になる制度を活用し、資産を動かしてみましょう。
もちろん、一括でひとつの投資信託にお金を預けると、マイナスになるリスクも高くなります。
複数の投資信託に分けて、リスク分散の効果を狙いましょう。
老後までの期間から逆算して、「毎月いくら貯めればいいか」を算出すると、より計画的に取り組みやすくなります。

5.3 ポイント1:非課税で運用できる枠を使い、まず動かし始める

50代からの資産形成で大切なのは、期間の短さを嘆くことではなく、残り10年をどう設計するかです。まず押さえておきたいのは、非課税で運用できる枠から使い始めるという順序です。新NISAは運用益が非課税になる制度で、始めた時点から効果が働きます。金額が小さくても口座を動かし始めておくことが、残り10年を最大限に使うための土台になります。なお、NISAの対象となる商品や非課税で投資できる枠、口座開設の要件、税制上の取り扱いは、ご自身の状況によって異なり、改正されることもあります。要件・金額・期限を断定せず、金融機関の窓口や金融庁・国税庁などの公的な情報、または専門家に必ずご確認ください。

5.4 ポイント2:値動きの異なる資産に分け、取るリスクの幅を調整する

次に整理したいのは、資産の分け方です。株式の投資信託だけでなく、債券のように相対的に値動きが穏やかとされる資産も組み合わせることで、使う時期が近い資金でも、取るリスクの幅を調整しやすくなります。どの資産をどの程度組み合わせるかに唯一の正解はなく、いつ使う予定の資金なのか、どこまでの値動きなら受け入れられるのかによって変わります。特定の商品を選ぶ前に、資金の性格ごとに分けて考える視点を持っておくと、判断がしやすくなります。

5.5 ポイント3:使う時期から逆算して、毎月の積立額を割り出す

三つ目は、使う時期から逆算してシミュレーションすることです。65歳などの目標時期と必要額を先に決め、そこから毎月の積立額を割り出します。数字にすると不足額が具体的になり、無理のない計画に落とし込みやすくなります。ただし試算の結果は前提が変われば変わるものですので、一度出した数字を固定して考えず、収入や支出、働き方の変化に合わせて定期的に見直していくことが大切です。

なお、投資信託や債券は元本が保証された商品ではなく、価格変動や為替の影響で元本を割り込む可能性があります。非課税制度を使っても、運用によって必ず増えるわけではありません。使う時期が決まっている資金ほど、金額と時期の両方に余裕を持たせた設計を心がけてください。

ここでご紹介したのは一般的な考え方の一例であり、必要な資金額も前提条件も、家族構成や収入、退職の時期によって一人ひとり異なります。NISAをはじめとする制度や税制の取り扱いは改正されることがあり、要件・金額・期限はご自身の状況で変わります。実際に始める際は、金融機関の窓口や金融庁・国税庁などの公的な情報で最新の内容をご確認のうえ、専門家に個別にご相談ください。

6. まとめ|「複利」と「非課税」を味方につけ、無理のない範囲で始める

同じ月3万円を20年続けても、預金なら約742万円、新NISA(年利5%)なら約1217万円と、大きな差が生まれる可能性があります。この差を生んでいるのが「複利効果」と「非課税」という2つの仕組みです。

さらに、物価上昇が続く局面では、預金の額面が増えていても実質的な購買力は目減りしていきます。

今回の試算では、20年後の742万円は現在の約499万円分の価値に相当するという結果になりました。

ただし、預金と投資は優劣ではなく役割の違いです。近いうちに使う予定のあるお金や生活防衛資金は預金で確保したうえで、当面使う予定のない余裕資金の範囲で、無理のない金額から始めていくことが大切です。

【免責事項】

  • 本記事は、公開されている公的資料および一般的な情報に基づき作成されたものであり、特定の制度・金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
  • 掲載している数値・制度内容・シミュレーション結果は、一定の前提条件のもとでの試算または一般的な事例であり、実際の金額・支給要件・税制・運用成果等を保証するものではありません。制度内容は法改正・自治体運用・経済状況等により変更される可能性があります。
  • 投資に関する記述は、将来の運用成果を示唆または保証するものではなく、元本割れを含むリスクが存在します。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。

参考資料

橋本 優理