10月から11月にかけては、年末調整の書類を前に「来年の家計をどう組み直すか」を考え始める時期でもあります。将来のために毎月コツコツ貯金を続けているものの、連日のニュースで「物価高」や「実質賃金の低下」を目にするたび、「いまの貯金方法のままで本当に資産を守れるのだろうか……」と不安を感じていませんか。
実は、毎月「3万円」という同じ金額を積み立てても、銀行の預金口座に置いたままにするか、税制優遇のある「新NISA」を活用するかで、20年後に手元に残る金額には数百万円〜1000万円以上の巨大な開きが生じる可能性があります。
銀行の利上げが話題となる昨今ですが、インフレの波を考慮すると「預けっぱなし」は実質的な資産目減りを意味します。本記事では、金融庁のシミュレーションデータをもとに、20年後の運用成果を利回り別に分かりやすく比較・解説します。
なお、預金と新NISAのシミュレーション結果については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 同じ「月3万円×20年」でも、預金約742万円に対し新NISA(年利5%)は約1217万円と差が開く
- 預金は元本が減らない一方、インフレが続けば実質的な購買力は目減りする
- 運用益への課税が非課税になることで、年利5%なら約101万円分の税負担を回避できる計算
1. 毎月3万円を20年、銀行に預けたらいくらになる?
結論からお伝えすると、毎月3万円を銀行預金として積み立てた場合、20年間での元本は合計720万円となります。
近年は日本銀行の利上げの影響もあり、メガバンクの普通預金金利は年0.3%前後まで上昇していますが、資産を大きく増やすには十分とはいえない水準です。
この条件で20年間預け続けた場合、得られる利息は約22万円(税引前)にとどまり、最終的な資産額はおよそ742万円となります。
ただし、利息には約20%の税金がかかるため、実際に手元に残る金額はこれより少なくなります。加えて注意したいのがインフレの影響です。年2%の物価上昇が続いた場合、20年後には同じ商品を購入するのに現在の約1.5倍の金額が必要になります。そのため、預金額自体は増えていても、お金の実質的な価値は下がる可能性があります。
1.1 インフレ年2%が続いたら、742万円の「実質的な価値」はいくらになる?
「元本が減らないから安心」と考えられがちな預金ですが、物価上昇を加味すると見え方が変わります。20年後の742万円が、現在の価値に換算するといくらに相当するのかを試算してみましょう。
物価上昇率 年2%で20年 → 物価は約1.486倍
742万円 ÷ 1.486 = 約499万円(現在の購買力に換算)
通帳の数字は742万円に増えていても、買えるモノの量で見ると現在の約499万円分にしかならない計算です。元本720万円と比べても、実質的には目減りしていることになります。一方、年利5%で運用できた場合の1217万円を同じ条件で換算すると約819万円となり、実質ベースでも元本を上回ります。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の物価上昇率や運用成果は変動します。
このように、預金は元本が減りにくいという安心感がある一方で、利息は限定的であり、インフレの影響によって実質的な資産価値が目減りする可能性もあります。では、同じ「月3万円」を積み立てる場合、より効率的に資産形成を目指す方法はないのでしょうか。そこで注目されているのが、税制優遇を受けながら投資ができる「新NISA」という制度です。
2. 預金の代わりになる?「新NISA」という選択肢
NISA(少額投資非課税制度)とは、資産運用によって得たリターンに税金が課されないお得な制度のことです。
一般的に、株や投資信託の運用益、あるいは配当金には約20.315%の税金が課せられますが、NISA口座を通じて投資を行えばこれらが非課税となり、効率よく資産を増やすことができます。
毎月3万円を銀行に預け入れた場合、20年間の積立総額は720万円になり、年利0.3%の複利であれば最終的な資産額は約742万円となります。通常の預金口座では、この増えた分の利息に対して約20%の税金が差し引かれるため、実際の受取額は目減りしてしまいます。しかし、同様の運用成果をNISA口座内で得た場合は税金がかからないため、手元に残る利益をそのまま確保できるのが大きなメリットです。
この非課税制度は以前からありましたが、2024年1月に抜本的な拡充が行われ、「新NISA」へと進化を遂げました。旧制度からの変更点など新NISAについてより詳しく知りたい方は、「新NISAは何歳から始められる?18歳以上の対象年齢と旧制度からの変更点・仕組みが初心者でもスッキリわかる基礎知識」もあわせてご覧ください。
それでは、この新NISAの仕組みを利用して毎月3万円を積み立てていった場合、20年後の運用結果にはどれほどの違いが生じるのでしょうか。
3. 【利回り別】新NISAで20年積み立てると、いくらになる?
本章では、毎月3万円を20年間積み立てた場合について、利回りごとのシミュレーションをもとに資産の変化を確認していきます。
3.1 利回り3%で運用した場合の資産額
- 投資元本:720万円
- 運用収益:261万円
- 資産合計(元本+収益):981万円
3.2 利回り5%で運用した場合の資産額
- 投資元本:720万円
- 運用収益:497万円
- 資産合計(元本+収益):1217万円
3.3 利回り10%で運用した場合の資産額
- 投資元本:720万円
- 運用収益:1435万円
- 資産合計(元本+収益):2155万円
年利3%を想定したシミュレーションでは、20年間の積立による運用益はおよそ261万円となり、預金のみの場合と比べると、資産を増やす効果が期待できるといえるでしょう。さらに、年利5〜10%で運用できた場合には、約497万円〜1435万円の運用益が見込まれ、最終的な資産合計は元本を大きく上回ることになります。
4. 預金との差はどれくらい?「複利」と「非課税」が生む違い
ここまで見てきたとおり、毎月3万円を20年間積み立てた場合、銀行預金では最終的な資産額は約742万円にとどまります。一方で、新NISAを活用した積立投資では、利回りによって大きな差が生まれます。
たとえば、年利3%で運用した場合は約981万円となり、預金と比べて239万円の差が生じます。さらに、年利5%では約1217万円、年利10%では約2155万円となり、預金との差はそれぞれ475万円、1413万円に広がります。
この差を生み出している要因が「複利」です。複利とは、運用によって得た利益が元本に組み込まれ、その利益にもさらに利益がついていく仕組みを指します。積立投資の初期段階では、貯金との違いはそれほど大きくありません。しかし、運用期間が長くなるにつれて利益が積み重なり、後半になるほど資産の増え方が加速していきます。
4.1 「非課税」の効果はいくら?課税口座で運用した場合と比べて試算
新NISAのもう一つの強みが「非課税」です。同じ年利5%・20年の運用成果を、通常の課税口座で得た場合といくら差がつくのかを計算してみましょう。運用益にかかる税率は20.315%です。
運用収益:497万円
課税口座の場合の税額:497万円 × 20.315% = 約101万円
課税口座での資産合計:720万円 +(497万円 - 101万円)= 約1116万円
新NISAでの資産合計:1217万円
同じ運用成果でも、非課税かどうかで約101万円の差が生まれる計算です。これは「利回りを上げる」のではなく「引かれるものを減らす」ことで得られる差であり、相場に左右されにくい確実性の高いメリットといえます。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の税額や運用成果は個々の状況により異なります。
このように、将来に向けた資産形成においては、早期のスタートと長期にわたる継続が極めて重要なカギを握っています。とりわけ運用の期間を長く確保することは、投資の成果を左右する大きな要素となります。今後の運用成績を確実に見通すことは困難ですが、長期間にわたって取り組むことで、年3%を上回る成果を目指すことも決して不可能ではありません。
新NISAを取り入れる際は、生活に支障のない範囲でコツコツと積立を継続し、じっくりと運用を続けていく姿勢が大切です。
監修者コメント
銀行の窓口で預金や投資信託をご案内していた経験からお伝えすると、「預金なら元本が減らないから安心」という受け止め方をされる方は非常に多くいらっしゃいます。確かに額面上の元本は保証されますが、今回の試算でご覧いただいたように、物価が上がり続ける局面では、実際に買えるモノの量で見た価値は下がっていきます。この視点は見落とされがちです。
もう一つ注目していただきたいのが、非課税による約101万円という差額です。運用の成績は相場次第で変わりますが、税金が引かれないという効果は制度によって決まっているため、比較的読みやすいメリットといえます。同じ運用をするなら非課税の枠から使う、という順序を意識していただくとよいと思います。
ただし、預金と投資は優劣ではなく役割の違いです。近いうちに使う予定のあるお金や、万一に備える生活防衛資金は預金で確保したうえで、当面使う予定のない余裕資金を運用に回すという線引きを、まずご自身の家計で整理してみてください。なお、NISAの対象商品や非課税枠、税制上の取り扱いはご自身の状況によって異なり、改正されることもありますので、最新の内容は金融機関の窓口や金融庁・国税庁などの公的な情報でご確認ください。








