3. 【FPの視点】単身高齢者の貯蓄額は国の統計に載っていない

家計収支は単身の区分で公表されていますが、貯蓄額のほうは事情が違います。ここは知っておくと数字の受け止め方が変わります。

3.1 家計調査の貯蓄・負債編は二人以上の世帯だけが対象

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」は、正式なタイトルが「2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)-」となっています。単身世帯の貯蓄現在高は集計・公表されていません。

5年周期で単身世帯の資産を把握できる全国家計構造調査についても、令和6年調査で公表されているのは家計収支に関する結果までで、家計資産・負債に関する結果は2026年8月時点で未掲載です。

つまり「高齢者の平均貯蓄は2000万円台」といった数字は、すべて二人以上の世帯の話ということになります。

3.2 代わりに使えるのは国民生活基礎調査の数字

単身を含む形で高齢者の貯蓄額を見られるのが、厚生労働省の国民生活基礎調査です。高齢者世帯の1世帯当たり平均貯蓄額は1647万6000円でした。

この「高齢者世帯」の53.2%が単独世帯なので、二人以上世帯を対象とした家計調査の数字より実感に近いと考えられます。参考までに、家計調査で世帯主が65歳以上の二人以上世帯の平均貯蓄額は2564万円、貯蓄保有世帯の中央値は1777万円です。

同じ国民生活基礎調査では、高齢者世帯の81.2%が「貯蓄がある」と答え、9.9%が「貯蓄がない」と答えています。

平均値と中央値の開きについては、LIMOの記事「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」」から要点を引用します。

貯蓄額の統計データを調べると「平均値」と「中央値」の金額に大きな開きがあり、戸惑う方も少なくありません。大切なのは、一部の富裕層に引き上げられた平均値に惑わされず、現実の実態を正しく把握した上で自分に合った貯蓄ペースを作ることです。

出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」

4. 【背景】三世代44.8%の時代から単独33.8%の時代へ

単身高齢者が多数派になってきた流れは、40年ほどの変化として統計に表れています。

4.1 39年で単独世帯は2.6倍、三世代は8分の1に

65歳以上の者がいる世帯の構成割合を見ると、1986年は三世代世帯が44.8%で最も多く、単独世帯は13.1%でした。

2025年はこれが逆転し、単独世帯33.8%、夫婦のみの世帯32.0%、親と未婚の子のみの世帯20.1%、三世代世帯5.8%となっています。単独世帯は約2.6倍に増え、三世代世帯は約8分の1になりました。

高齢者世帯に限ると単独世帯は53.2%で、すでに過半数です。性別では男性37.6%、女性62.4%で、年齢構成は男性が70歳から74歳、女性が85歳以上で最も多くなっています。

65歳以上の者がいる世帯の構成割合(1986年と2025年の比較)2/2

65歳以上の者がいる世帯の構成割合(1986年と2025年の比較)

出所:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.2 借家の割合が高いのも単身の特徴

住まいの形にも違いがあります。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査によると、高齢者のいる世帯全体では持ち家81.6%、借家18.2%でした。

これが高齢単身世帯になると持ち家67.5%、借家32.2%になります。借家の割合は全体の1.8倍で、およそ3人に1人が借家です。高齢単身世帯は761万7000世帯で、高齢者のいる世帯の32.1%を占め、過去最高となっています。

先に見た住居費1万1416円は、持ち家の世帯を含んだ平均です。借家に住む方の実際の負担はこれより大きくなる点に注意が必要です。

5. 【対応策】平均データを自分の条件に置き換える

数字を見たあとに何をするか、考え方を挙げておきます。

5.1 住まいの形で必要額が変わる

老後資金の目安としてよく示される金額は、持ち家を前提に組まれていることがあります。借家であれば家賃が続く分を上乗せして考える必要があります。

まずは現在の住居費と、今後住み替える予定があるかどうかを整理してみてください。

5.2 見守りの仕組みも家計と合わせて考える

内閣府の令和8年版高齢社会白書によると、65歳以上の一人暮らしの方は1980年の88万1000人から2020年には671万7000人まで増え、2050年には1083万9000人と推計されています。

お金の準備とあわせて、地域包括支援センターや自治体の見守りサービスなど、困ったときにつながる先を確認しておくと安心です。世帯の状況によって使える制度は変わりますので、お住まいの市区町村の窓口で相談してみてください。

6. まとめにかえて

65歳以上の単身無職世帯は、実収入13万1456円に対して消費支出14万8445円で、月2万9980円の不足でした。実収入の91.4%が社会保障給付で、勤め先収入は計上されていません。

不足額そのものは夫婦世帯より小さいものの、平均消費性向は125.3%と単身のほうが高く、収入に対する取り崩しの重さは大きくなります。光熱・水道や住居のように、人数が減っても半分にならない費目があるためです。

貯蓄額については、単身世帯を対象とした公表統計がありません。二人以上世帯の平均値をそのまま当てはめず、国民生活基礎調査の高齢者世帯の数字も合わせて見ておくと、実感に近い見通しが立てやすくなります。

参考資料

村岸 理美