国土のおよそ3分の2を森林が占める日本。それだけの森林資源を抱えながら、林業という産業の規模を数字で意識する機会は、そう多くないかもしれません。

林野庁が公表している「森林・林業白書」には、国内の林業がどれくらいの産出額を生み出しているのかが示されています。

今回は令和8年6月に公表された最新版の「令和7年度森林・林業白書」から、日本の林業の現在地を確認していきます。

この記事の3つのポイント
  • 令和6年(2024年)の国内の林業産出額は5713億円で、前年比2.9%の増加
  • 内訳は木材生産が3276億円で約6割、栽培きのこ類生産が2323億円
  • 木材輸出額は令和7年(2025年)に596億円で、前年比10.8%の増加

1. 国内の林業産出額は5713億円

まずは全体の規模から見ていきましょう。

林野庁の白書によると、令和6(2024)年の国内の林業産出額は5713億円でした。前年から160億円、率にして2.9%の増加です。

増加の要因として挙げられているのが、栽培きのこ類の価格の上昇と、燃料用チップ素材の生産量の増加です。

白書は、我が国の林業産出額が丸太輸出の増加や木質バイオマス発電施設での燃料材利用の増加などにより、平成25(2013)年以降は増加傾向で推移してきたと説明しています。長期にわたる木材価格の下落で厳しい状況が続いた時期から、近年は国産材の生産量の増加や木材自給率の上昇などにより活力を回復しつつある、という位置づけです。

なお、令和5年の林業産出額は当初5563億円と公表されていましたが、その後の改定で5553億円となっています。過去の記事や資料と数字が一致しない場合は、公表時期をご確認ください。

2. 内訳の約6割は木材生産、約4割は特用林産物

林業産出額と聞くと丸太の販売額だけを思い浮かべがちですが、実際にはそれ以外の要素も含まれています。令和6年の主な内訳は次のとおりです。

  • 木材生産:3276億円(前年比0.8%増、全体の約6割)
  • 栽培きのこ類生産:2323億円(前年比5.7%増)

白書は、栽培きのこ類生産・薪炭生産・林野副産物採取を合わせた「特用林産物」が林業産出額の約4割を占めると記しています。しいたけをはじめとするきのこ類は、木材生産と並ぶ収入源として山村地域の経済を支えてきました。栽培用のほだ木や菌床には木材が使われるため、林業とは切り離せない関係にあります。

このほか、竹材、木炭、うるし、山菜なども特用林産物に含まれます。木を伐って売るだけが林業ではなく、森林から得られる多様な産物が産出額を構成しているわけです。

構成比の変化にも目を向けたいところです。昭和50(1975)年の林業産出額は1兆1588億円で、そのうち木材生産が9680億円と84%を占めていました。それが令和6年には木材生産が57%まで下がっています。全体の規模が半分以下になるなかで、きのこの比重が高まってきたということです。

3. 5713億円という規模をどう見るか

5713億円という数字は、大きいのか小さいのか。ほかの産業と比べてみると、その位置づけが見えてきます。

農林水産省によると、令和6年の農業総産出額は10兆7801億円でした。林業産出額はそのおよそ19分の1、比率にすると約5%にあたります。一次産業のなかでも、林業は相対的に小さな産業ということになります。

その背景には、林業特有の事情があります。木は植えてから収穫できるまでに数十年を要するため、投資の回収サイクルが極端に長いのです。加えて、日本は急峻な地形が多く、伐採や搬出のコストが平地の多い国より高くなりやすいという条件もあります。

一方で、森林には木材生産以外の役割もあります。国土の保全、水源のかん養、二酸化炭素の吸収など、金額には表れにくい機能を担っています。産出額という物差しだけでは、森林の価値を測りきれない点は押さえておきたいところです。

4. 木材輸出額は令和7年に596億円

産出額とは別に、木材の輸出も動いています。

白書によると、令和7(2025)年の木材輸出額は前年比10.8%増の596億円でした。品目別の内訳は次のとおりです。

  • 丸太:298億円(前年比5.7%増、全体の50.1%)
  • 製材品:102億円(前年比38.5%増)
  • 合板等:86億円(前年比16.5%増)

数量ベースでも、丸太が191万立方メートル(前年比5.1%増)、製材品が20万立方メートル(同29.8%増)、合板等が15万立方メートル(同35.0%増)と、いずれも増えています。伸び率は製材品と合板等が大きく、加工度の高い製品の輸出が広がりつつあることがうかがえます。

輸出先については、白書は丸太の約9割が中国へ輸出され、こん包材や土木用に利用されていると記しています。また、米国へ輸出されている製材品は主にフェンス材に使われています。

背景にあるのは、中国等における日本産木材の需要の高まりと円安の影響です。国内市場の縮小が見込まれるなか、政府は食料・農業・農村基本計画(令和7年4月閣議決定)で、木材・特用林産物・木製家具を合わせた林産物の輸出額を令和12(2030)年までに1660億円とする目標を掲げています。重点品目ごとの目標は製材850億円、合板115億円です。

なお、林業産出額5713億円に対して輸出額は596億円で、比率にすると約1割です。ただし林業産出額は国内生産の産出額、輸出額は貿易統計に基づく金額であり、そのまま足し引きできる関係ではない点には注意が必要です。

5. 木材自給率は42.5%

輸出と並んで押さえておきたいのが、国内で使う木材のうちどれだけを国産でまかなえているかという指標です。

白書によると、令和6年の木材自給率は42.5%でした。前年からは0.4ポイントの低下ですが、これは木材需要量の増加割合に比べて国産材供給量の増加割合が小さかったためと説明されています。

自給率は、国産材供給の減少と木材輸入の増加により低下を続け、平成14(2002)年には18.8%まで落ち込みました。その後は人工林資源の充実や技術革新などによる国産材利用の増加を背景に上昇傾向で推移しています。20年余りで20ポイント以上回復してきた計算です。

日本の森林面積は2502万ヘクタールで、国土面積3780万ヘクタールのおよそ3分の2。このうち人工林は約1000万ヘクタールと、森林面積の約4割を占めています。

6. 林業とわたしたちの暮らしの接点

林業は多くの人にとって遠い産業に感じられるかもしれませんが、暮らしとの接点は意外に多くあります。

木造住宅、家具、紙、割り箸、そして近年増えている木質バイオマス発電。日常のさまざまな場面で、国産材か輸入材かの違いはあれ、木材を使っています。

住宅を建てる際に国産材を選ぶ、家具を買うときに産地を意識する。そうした選択が、めぐりめぐって国内林業の産出額を支える一部になります。

また、山を管理する側の状況も見ておきたいところです。2020年農林業センサスによれば、保有山林面積が1ヘクタール以上の林家は69万戸で、平均保有山林面積は6.65ヘクタール。1ヘクタール以上10ヘクタール未満の層が全体の88%を占める小規模・零細な所有構造です。林業経営体の数は3.4万経営体で、前回調査の8.7万経営体から大幅に減少しました。

産出額という数字の背後には、山を管理し続ける人たちの存在があることも、あわせて知っておきたいところです。

7. まとめにかえて

今回は、林野庁「令和7年度森林・林業白書」をもとに国内林業の規模を確認しました。

  • 令和6年の林業産出額は5713億円(前年比2.9%増)
  • 内訳は木材生産3276億円(約6割)、栽培きのこ類生産2323億円
  • 木材輸出額は令和7年に596億円(前年比10.8%増)で、丸太の約9割は中国向け
  • 令和6年の木材自給率は42.5%

国土の3分の2を占める森林は、日本にとって数少ない自給可能な資源のひとつです。産出額の推移とあわせて、その使われ方にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

8. 【執筆者コメント】「林業=丸太」ではなかった話

この記事を書くまで、林業産出額というのは丸太を売った金額のことだと思い込んでいました。

実際に内訳を見たら、5713億円のうち木材生産が3276億円で、残りの約4割は特用林産物。つまりきのこや木炭、うるし、山菜のたぐいです。しいたけが林業に計上されると知ったときは、素直に驚きました。

もっと驚いたのが構成比の変化のほうです。昭和50年は木材生産が84%を占めていたのに、令和6年は57%。全体の規模が1兆1588億円から5713億円へと半分以下になるなかで、きのこの比重だけが上がってきた。産業の輪郭そのものが変わっていることが、数字の並びから見えてきます。

輸出のほうも、丸太の約9割が中国向けと聞くと、日本の木がどこで使われているのかが急に具体的になります。こん包材や土木用というのも、木造住宅を思い浮かべていた身にはやや意外でした。

家の周りには山が多いのですが、そこに立っている木がどこへ運ばれ、何になっているのかを考えたことはありませんでした。数字を追ったあとだと、見慣れた景色も少し違って見えます。

参考資料

中沢 新