3. 【FPの視点】申請は初回だけで済む自治体が多い

上限を超えた分は自動的に差し引かれるのではなく、あとから払い戻される形です。そのため手続きが必要になります。

3.1 国は初回のみで足りるようにと求めている

厚生労働省の通知では、市町村に対して「申請書の記載内容の工夫などにより、申請は初回のみで足りるようにする」「高額介護サービス費の受け取りについても、初回申請時に指定した口座に振り込む」といった対応を求めています。

実際に名古屋市、京都市、神戸市、さいたま市、練馬区などは、初回に申請すれば以後は指定口座へ自動的に振り込む運用です。毎月申請書を出し続ける制度ではありません。

ただし世田谷区のように該当のつど申請書を返送する運用の自治体もあります。お住まいの市区町村の案内で確認しておくと確実です。

3.2 通知の時期と時効を押さえておく

該当した方への案内は、サービスを利用した月からおおむね2か月から4か月後に届く自治体が多くなっています。名古屋市と練馬区はおおむね2か月から3か月後、京都市と世田谷区は約3か月後、神戸市は3か月から4か月後と案内しています。

一方で、通知を送る旨をページに明記していない自治体もあります。案内が必ず届くとは限らない前提で、心当たりがあれば問い合わせるほうが確実です。

支給を受ける権利の時効は2年です。起算日はサービスを利用した月の翌月1日とされています。過去の分に心当たりがある場合は、早めに市区町村へ相談してみてください。

4. 【落とし穴】上限と比べる額に入らない費用がある

上限額を知っていても、実際の払い戻しが思ったより少ないことがあります。理由は、対象になる費用の範囲が限られているためです。

4.1 対象外になる主な費用

次の費用は高額介護サービス費の対象に含まれません。

  • 区分支給限度基準額を超えて全額自己負担した分
  • 特定福祉用具購入費の利用者負担
  • 住宅改修費の利用者負担
  • 施設サービス等の食費と居住費(滞在費)
  • 日常生活費や個室代、理美容代などの保険給付外のサービス

つまり月に支払った総額と、上限額と比べる額は別物です。施設に入所している場合は食費と居住費の比重が大きくなるため、差はさらに開きます。

4.2 世帯で合算できる点はメリットになる

一方で、同じ世帯に介護サービスを利用している方が複数いる場合は、その月の利用者負担を合算して上限額と比べます。夫婦2人が要介護であれば、2人分をまとめて判定する形です。

支給されるときは、それぞれの利用者負担額で按分して各人に振り込まれます。神戸市はこの取扱いを明記しています。

5. 【補足】年単位で医療と合算するしくみは別にある

介護の自己負担が高くなる時期は、医療費もかさむことが少なくありません。月単位の高額介護サービス費とは別に、年単位で合算する制度があります。

5.1 高額医療合算介護サービス費との違い

高額医療合算介護サービス費は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間について、医療保険と介護保険の自己負担を合算するしくみです。高額療養費と高額介護サービス費を適用したあとの残額が対象になります。

申請先も異なり、基準日である7月31日時点で加入している医療保険者へ申請します。介護保険の市区町村窓口ではありません。

70歳以上の年間の限度額は、現役並みIIIが212万円、現役並みIIが141万円、現役並みIが67万円、一般が56万円、低所得IIが31万円、低所得Iが19万円です。合算額から限度額を引いた額が500円を超える場合に支給されます。

なお2026年8月からは高額療養費制度でも上限額の引き上げと年間上限の新設が行われていますが、こちらは医療保険のみで完結する別の制度です。期間の取り方が似ているため混同しやすいところです。

5.2 利用の規模

厚生労働省の介護保険事業状況報告によると、令和5年度の高額介護(介護予防)サービス費は年間2181万8360件、2741億7295万円でした。1件あたりおよそ1万2566円になります。

高額医療合算介護(介護予防)サービス費は年間121万7073件、376億2685万円でした。なお受給者の実人員は公表されておらず、いずれも延べ件数である点にご注意ください。

6. まとめにかえて

高額介護サービス費の月額上限は所得区分で5段階に分かれ、一般区分は世帯で4万4400円です。2026年8月に変わったのは上限額ではなく、住民税非課税世帯を分ける所得の基準額が80万9000円から82万6500円になった点でした。

現役並み所得者かどうかは同一世帯の65歳以上の課税所得で判定し、非課税かどうかはその月の初日時点の世帯で見ます。判定に使う「世帯」は住民基本台帳上の世帯です。

75歳以上の無職世帯では毎月およそ2万7000円の赤字が生じているという指摘もあります。介護費用の見通しを立てるときは、上限額だけでなく対象外の費用も含めて考えておくほうが実態に近づきます。

この点については、LIMOの記事「【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法」から要点を引用します。

2026年3月に公表された総務省の家計調査によると、75歳以上の無職世帯では平均して毎月約2万7000円の赤字が発生しており、多くの家庭が貯蓄を取り崩して生活しているのが現実です。

出所:【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法

区分の判定や申請の要否は自治体によって運用が異なる部分があります。ご自身が該当するかどうかは、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に確認してみてください。

参考資料

村岸 理美