3. 【FPの視点】残高の大きさより「何歳で完済するか」を見る

ここからは、ファイナンシャル・プランナーの立場から、数字の受け止め方を整理していきます。

40歳代の住宅ローン残高が平均1651万円と聞いて、多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれでしょう。ただ、残高の大きさだけを他の世帯と比べても、判断材料としてはあまり役に立ちません。

同じ1500万円の残高でも、45歳で完済予定の方と、70歳で完済予定の方とでは、家計に与える意味がまったく違うからです。前者は現役収入のうちに返し切れますが、後者は年金生活に入ってからも返済が続きます。

3.1 確認したいのは残高・金利・完済年齢の3つ

住宅ローンの状況を把握するときは、残高だけでなく、適用金利と完済予定年齢をあわせて見ます。この3つがそろって初めて、老後の家計に何が持ち越されるのかが分かります。

いずれも、金融機関から年に1回程度届く返済予定表や、インターネットバンキングの契約内容照会で確認できます。手元に返済予定表が見当たらない場合は、借入先の金融機関に問い合わせれば再発行を受けられることが一般的です。

4. 【落とし穴】60歳代・70歳代にも残高は残っている

今回の調査データで見落としたくないのが、高齢期のデータです。

60歳代の住宅ローン残高は平均697万円、70歳代でも平均474万円でした。中央値は60歳代300万円、70歳代0円なので、多くの世帯は完済しているものの、一定数は定年後も返済を続けていることが読み取れます。

60歳代・70歳代で借入金がある世帯の割合はそれぞれ14.3%、6.7%です。数としては少数ですが、ゼロではありません。

4.1 年金生活の家計に返済が上乗せされる

定年後にローンが残ると、年金を中心とした家計から返済を続けることになります。その年金生活の家計がどのような状態にあるのかを、あわせて見ておきましょう。

65歳以上無職夫婦世帯の家計収支については、LIMOの記事「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」から要点を引用して確認しておきましょう。

収入の内訳を見ると、合計25万4395円のうち、公的年金などの社会保障給付が22万8614円と約9割を占めています。一方、支出は消費支出と非消費支出を合わせて29万6829円です。

単純計算すると、毎月約4万2000円が不足する計算になります。

出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説

この毎月約4万2000円の不足に、住宅ローンの返済が加わる形になります。仮に月6万円の返済が残っていれば、不足額は月10万円規模まで広がる計算です。40歳代のうちに完済年齢を確認しておきたいのは、このためです。

5. 【対応策】40歳代のうちに確認しておきたい3つのこと

では、いま40歳代の方が具体的に何を確認しておけばよいのでしょうか。3つに絞って挙げます。

5.1 完済予定年齢が65歳を超えているかどうか

まずは返済予定表で完済予定年齢を確認します。65歳を超えている場合、退職金や繰上返済で前倒しできないかを検討する余地があります。

ただし、繰上返済には注意点もあります。手元資金が減ることで、教育費や急な出費に対応しにくくなることがありますし、住宅ローン控除の適用を受けている期間は、繰上返済によって控除額が減る場合もあります。返済期間を短縮するか毎月の返済額を減らすかでも効果が変わるため、実行の前に金融機関や税務署に確認しておくと安心です。

5.2 教育費のピークと返済が重なる時期を見ておく

40歳代は、借入目的として「こどもの教育・結婚資金」も10.0%を占める年代です。住宅ローンの返済と教育費の支出が重なる時期があるかどうかを、家計のカレンダー上で確認しておきます。

重なる時期が見えていれば、その手前で貯蓄を厚くしておく、教育費の一部を別枠で準備しておくといった対応が取りやすくなります。

5.3 貯蓄と残高のバランスを把握しておく

40歳代の貯蓄額は中央値500万円、住宅ローン残高は中央値1500万円でした。あくまで別々の集計なので同じ世帯の数字ではありませんが、世代全体の傾向としては残高のほうが大きい状態にあります。

ご自身の場合はどうなのかを一度並べて書き出してみると、繰上返済に回せる余力があるのか、それとも手元資金を厚くしておくべき局面なのかが見えてきます。判断に迷う場合は、金融機関やファイナンシャル・プランナーに相談してみるのもひとつの方法です。

6. まとめにかえて

40歳代で借入金がある世帯は24.8%で、そのうち住宅資金を目的とする世帯が54.8%と、全年代のなかで最も高い割合でした。住宅ローン残高は平均1651万円、中央値1500万円で、2000万円以上が39.5%を占めます。

残高のピークは30歳代で、40歳代はそこから減り始める位置にあります。ただし60歳代でも平均697万円、70歳代でも平均474万円が残っており、定年後まで返済が続く世帯も一定数あることが分かります。

平均や中央値はあくまで目安です。不安に感じる必要はありませんが、まずはご自身の残高・金利・完済予定年齢という現状を正確に把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。そのうえで、繰上返済や借換えを検討する場合は、手元資金への影響や住宅ローン控除との関係もあわせて、金融機関に相談してみてください。

参考資料

村岸 理美