3. 天引きにならない場合もある
条件を満たしていても、年金から引かれず自分で納めることになるケースがあります。
3.1 保険料の合計が年金額の2分の1を超えるとき
国民健康保険料と介護保険料の合計額が、各支払期に支払われる特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合、特別徴収の対象から外れます。後期高齢者医療保険料についても同じルールです。
年金額が少なく保険料の負担が相対的に重い方ほど、この条件に当たりやすくなります。天引きされないぶん、納付書や口座振替で自分で納めることになります。
3.2 年度の途中で止まることもある
年齢が変わって制度が切り替わったとき、他の市区町村へ転出したとき、年金が支払停止になったときなどにも特別徴収は中止されます。
その場合、止まった分は普通徴収に切り替わります。天引きが消えて手取りが増えたように見えても、あとから納付書が届く形になりますので、支出そのものが減ったわけではありません。
天引きされている項目は、実は一つひとつ性質が違います。年齢で切り替わるもの、所得で変わるもの、自治体で違うもの。振込通知書の控除欄を項目ごとに見ていくと、来年どこが動きそうかまで見当がつくようになります。
4. 項目ごとに動く時期が違う
まとめて「天引き」と呼んでいますが、金額が変わるタイミングは項目ごとにばらばらです。
4.1 介護保険料は3年に一度、後期高齢者医療は2年に一度
介護保険料の基準額は市区町村が3年ごとに見直します。いまは第9期(令和6年度から令和8年度)にあたり、令和9年度から第10期の料率に切り替わります。
後期高齢者医療の保険料率は広域連合が2年ごとに決めます。こちらは令和8・9年度が改定の年でした。改定の周期が違うため、両方が同時に上がる年もあれば、片方だけの年もあります。
4.2 住民税は前年の所得で毎年決まる
住民税は前年の所得をもとに毎年計算し直されます。退職した翌年や、不動産の売却など一時的な収入があった翌年は、金額が大きく動きます。
「収入は変わっていないのに天引きが増えた」と感じるときは、前年に何かなかったかを振り返ると理由が見つかることが多くあります。
5. 【FP1級・CFPの視点】控除欄は上から順に見ない
筆者は生命保険会社で保険実務と社内教育に携わったのち、独立してファイナンシャルプランナーとして家計相談やマネースクールの講師を務めてきました。公的年金や社会保障の相談を受ける機会が多く、振込通知書を一緒に見ることもたびたびありました。
5.1 前年の通知書と並べると差が見える
1枚だけ見ても、金額が妥当かどうかは判断できません。前年の同じ時期の通知書と並べて、項目ごとに差額を出すのがいちばん早い方法です。
介護保険料だけが上がっているのか、住民税が動いたのか。差が出ている項目が特定できれば、原因も絞り込めます。通知書は年に一度届きますので、封筒ごと保管しておくことをおすすめします。
5.2 下がる余地があるのは保険料のほう
住民税は前年の所得で機械的に決まるため、後から動かせる部分は多くありません。一方、介護保険料や医療保険料には軽減や減免の仕組みがあります。
災害にあった、所得が著しく下がった、といった事情があれば減免の対象になることがあります。ただし要件は自治体ごとに定められていますので、当てはまるかどうかは市区町村の窓口でご確認ください。
6. 【落とし穴】読み違えやすいところ
相談の場で行き違いが起きやすい点を挙げておきます。
6.1 全国平均は自分の金額ではない
介護保険料の月6225円は全国加重平均の基準額、後期高齢者医療の月7989円は全国平均です。実際の金額は自治体の料率と本人の所得段階で決まりますので、手元の通知書の金額で判断してください。
6.2 天引きが止まる=負担が消えるではない
特別徴収が中止されると、その分は普通徴収に切り替わります。納付書や口座振替で納めることになるだけで、支払う金額そのものが減るわけではありません。
天引きが消えた月に手取りが増えたように見えて、後から納付書が届いて驚くというのは、よくある流れです。
6.3 18万円は月額ではなく年額
特別徴収の条件である18万円は、年金の年間受給額です。月額18万円と読み違えると対象範囲がまったく変わります。
7. 【対応策】通知書が届いたら見る3つのこと
年に一度の年金振込通知書を、順に見ていきましょう。
7.1 控除欄を項目ごとに書き出す
介護保険料、医療保険料、住民税がそれぞれいくらか。合計だけでなく内訳を書き出しておくと、翌年との比較ができます。
7.2 額面と振込額の差を把握する
額面から控除の合計を引いた金額が、実際に使えるお金です。家計の計画はこちらの金額で立ててください。
7.3 増えた項目があれば窓口で理由を聞く
前年より上がっている項目があれば、市区町村の窓口で計算の根拠を教えてもらえます。所得の申告漏れが原因で高くなっていることもありますので、心当たりがあれば早めに相談してみてください。
保険料の軽減や減免、支払いが難しい場合の相談も、同じ窓口で受け付けています。制度の適用可否は個々の状況で変わりますので、自己判断で諦めず、お住まいの市区町村へお問い合わせください。
8. まとめにかえて
今回は年金から天引きされる4つのお金と、その平均額や確認方法について解説しました。冒頭でもお伝えした通り、8月から秋にかけては前年の所得が反映され、正しい保険料額での天引き(本徴収)が定着する時期です。
年金から天引きされるのは、介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税の4種類です。いずれも年金の年間受給額が18万円以上であることが条件になります。
介護保険料の全国平均は月6225円、後期高齢者医療は令和8・9年度で月7989円です。75歳以上であれば、この2つで月1万4000円ほどが引かれる計算になります。
改定の周期も決まり方も項目ごとに違いますので、まとめて見ずに分けて確認するのが近道です。まずは手元の振込通知書で、控除欄の内訳を書き出すところから始めてみてください。
参考資料
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」
- 日本年金機構「年金からの介護保険料などの徴収」
村岸 理美
