4. ポイント3:実際の受給者の平均と並べてみる

試算だけでは実感がつかみにくいので、実際に受け取っている人の平均と並べておきましょう。

4.1 厚生年金の平均月額

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は全体で15万289円でした。男女別では男性が16万9967円、女性が11万1413円です。

年齢別に見ると、65歳以降の各年齢で受け取れる厚生年金の平均月額は14万円から16万円台でした。たとえば65歳は14万9862円、70歳は15万455円、80歳は15万3729円となっています。

4.2 国民年金の平均月額

同じ資料によると、65歳以降の国民年金(老齢基礎年金)の平均月額は5万円から6万円台です。65歳は6万1240円、70歳は6万1011円、80歳は5万8623円でした。

満額の月7万608円と比べると1万円ほど低い水準です。40年間の満期加入をしていない受給者が一定数含まれるためで、ここでも加入期間の差が表れています。

村岸 理美

ご相談では「平均と比べてどうか」を気にされる方が多いのですが、年金は加入期間と報酬で決まる制度です。年齢別の平均は自分の答えにはなりません。まずはねんきん定期便で加入月数を確認し、この早見表のどこに近いかを当ててみてください。そのうえで足りない分をどう補うかを考える順番が現実的です。

5. 【FPの視点】早見表を自分の数字に寄せる3ステップ

試算表はそのままでは目安にすぎません。自分の記録に当てはめる作業が要ります。

5.1 ステップ1|2種類の月数を分けて見る

ねんきん定期便には、国民年金の納付済月数と厚生年金保険の被保険者月数が別々に記載されています。この2つを分けて把握することが出発点です。

合計の月数だけを見ていると、1階と2階のどちらが薄いのかが分かりません。国民年金が480月に届いていないのか、厚生年金の期間が短いのかで、打てる手が変わります。

5.2 ステップ2|平均標準報酬額を推計する

50歳以上の方に届くねんきん定期便には年金見込額が記載されています。50歳未満の方の場合はこれまでの加入実績に応じた額なので、将来の見込みとは意味が異なります。

平均標準報酬額そのものは定期便に直接は載りませんが、ねんきんネットでは加入記録から標準報酬月額の推移を確認できます。ここから自分がどの列に近いかを当てていきます。

5.3 ステップ3|不足を埋める手段を期間で選ぶ

1階が薄い方は、60歳以降の任意加入や、免除期間があれば追納という選択肢があります。2階が薄い方は、厚生年金に加入して働く期間を延ばすことが直接的に効きます。

どちらも期間で解決する手段である点が共通しています。残り時間が長いほど選べる幅が広くなるため、確認は早いほど有利です。

6. 【落とし穴】試算がずれやすい3つの理由

早見表と実際の受給額が食い違う原因は、だいたい次のどれかです。

6.1 平成15年3月を境に率が変わる

本文の試算は平成15年4月以降の1000分の5.481で計算しています。それ以前に働いていた期間がある方は、1000分の7.125で計算される部分が別に加わります。

賞与が計算に含まれるようになったのが平成15年4月からで、それ以前は月給ベースでした。長く働いている方ほど、2つの式が混ざることになります。

6.2 額面と手取りは違う

早見表の金額は額面です。実際の振込額からは、介護保険料や国民健康保険料・後期高齢者医療保険料、場合によっては所得税や住民税が差し引かれます。手取りベースで生活設計をしないと、想定より苦しくなることがあります。

6.3 経過的加算や加給年金が別に付くことがある

老齢厚生年金には、報酬比例部分のほかに経過的加算が付く場合があります。また厚生年金の加入期間が20年以上あり、65歳到達時点で生計を維持している配偶者や子がいる場合は、加給年金額が加算されます。これらは早見表には含まれていません。

7. 【対応策】いま確認しておきたいこと

数字を把握したうえで、次の行動につなげます。

7.1 加入記録の抜けを探す

転職の合間や、勤務先が変わった時期の記録が抜けていることがあります。ねんきんネットで職歴と加入記録を照らし合わせ、心当たりのない空白があれば年金事務所に相談します。

7.2 夫婦それぞれの数字を並べる

老後の家計は世帯単位です。片方だけを確認しても全体像はつかめません。2人分を並べて、世帯としての月額を出しておきます。

7.3 足りない分の埋め方を早めに決める

公的年金で足りない部分は、働く期間を延ばすか、私的年金や資産形成で補うことになります。iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になり運用益も非課税ですが、原則60歳まで引き出せず、受け取り時に課税される場合があります。NISAには掛金の所得控除はなく、運用益が非課税になる制度です。いずれも元本割れの可能性がある点は共通しています。

8. まとめにかえて

老齢基礎年金は納めた月数に比例し、令和8年度は40年で月7万608円、30年で月5万2956円、20年で月3万5304円です。老齢厚生年金の報酬比例部分は報酬と期間のかけ算で決まり、平均標準報酬額30万円なら20年で月3万2886円、40年で月6万5772円になります。

実際の受給者を見ると、厚生年金の平均月額は全体15万289円、国民年金は65歳以降で5万円から6万円台でした。満額との差は、そのまま加入期間の差を映しています。

年齢別の平均額は世の中の傾向を知るには役立ちますが、自分の答えにはなりません。ねんきん定期便で国民年金と厚生年金の月数を分けて確認し、この早見表のどこに近いかを当てるところから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、この記事の試算は平成15年4月以降の計算式による目安です。実際の年金額は加入記録によって異なりますので、正確な見込額は年金事務所やねんきんネットでご確認ください。

参考資料

村岸 理美