4. 高年齢雇用継続給付、支給率10%への縮小が意味すること

前述の高年齢雇用継続給付は、2025年4月以降に新たに受給資格を得た人から、支給率が最高10%に引き下げられています。

厚生労働省のQ&Aページでも、2025年3月31日以前に受給資格を満たした人は支給率が異なる(最高15%)と案内されており、同じ制度でも受給を開始したタイミングによって手取り額が変わる状態が続いています。

この給付金は、60歳以降に賃金が下がっても働き続けられるよう国が後押しする目的で設けられてきましたが、法改正にともない段階的に縮小が進んでいる制度でもあります。

厚生労働省が2025年12月に公表した最新の集計では、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%(前年比+2.9ポイント)にとどまっています。65歳までの雇用確保措置はほぼすべての企業(99.9%)で実施済みである一方、70歳までとなると、まだ3社に1社程度という状況です。

言い換えれば、公的な給付金や企業側の制度整備だけに頼るのではなく、シニア自身が収入の変化を見込んで備えておく必要性が、これまで以上に高まっているといえるでしょう。

5. では、60代の貯蓄の実態は?

収入が変わりやすい60代にとって、実際どの程度の貯蓄があるのでしょうか。

※60代の金融資産保有額データについては「60代の世帯別貯蓄額(平均値・中央値)と2000万円以上保有層の割合。老後資金を着実に準備する家計管理の方法とは」を一部引用しています。

60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額

【円グラフ】60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額の内訳4/4

【円グラフ】60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額の内訳

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:12.8%
  • 3000万円以上保有:27.2%
  • 平均値:2683万円
  • 中央値:1400万円

平均値と中央値の差からも分かるとおり、一部の資産家世帯が平均を押し上げている一方、中央値で見ると1400万円ほどにとどまり、金融資産をまったく持たない世帯も1割超(12.8%)存在します。

60代は年金の受給開始前後にあたる世代でもあり、雇用保険の給付金や退職金だけでなく、こうした資産状況の違いが老後の暮らし方に直結してくるといえそうです。

6. まとめにかえて|"申請主義"の給付金は自分から確認を

65~69歳の就業率が54.5%に達し、非正規雇用や再就職の壁を感じながらも、働き続けるシニアが今後も増えていくとみられます。

一方で、本記事で紹介した雇用保険の給付金は、いずれも自分で手続きをしなければ支給されない「申請主義」の制度です。

該当する可能性がある方は、退職や再就職のタイミングで一度、最寄りのハローワークや年金事務所で自分の状況を確認してみてはいかがでしょうか。

7. 監修者からのコメント

熊谷 良子

本文でも触れたように、国からの公的な給付金が段階的に縮小していく一方で、企業側が「70歳まで働ける環境」を整えるペースにはまだばらつきがあり、当面はこのズレが続く過渡期といえます。

だからこそ、ご自身の勤務先にどのような継続雇用の制度があるのか、そして雇用保険でどの給付金が使えるのかを、早めに、そして定期的に確認しておくことがこれまで以上に大切になります。

公的な給付金は毎年のように見直されます。「数年前に調べたから」「先輩がこうだったから」と思い込まず、退職や再就職を意識し始めたタイミングで、ハローワークなどの公的機関で最新情報を都度チェックする習慣をつけておきたいところです。

参考資料

池上 翠