日本年金機構から公的年金を受け取っている人の中には、8月と10月で振込額が違うことに気づいた経験がある人もいるのではないでしょうか。
年金は、現役時代の働き方によって受給額そのものに大きな差が生まれるうえ、実際に口座へ振り込まれる金額からは税金や社会保険料が天引きされています。
2026年度は、物価や賃金の動向を踏まえて国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%それぞれ引き上げられました(改定率は6月15日支給分から反映されています)。ただし、これはあくまで「額面」の話であり、実際に振り込まれる金額は、天引きされる項目の変動によって前回と異なることがあります。
本記事では、年金から天引きされる仕組みと、厚生年金・国民年金の加入実態による受給額の差について、公的データをもとに整理します。
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年金からは介護保険料や税金など複数の項目が天引きされ、額面より少ない金額が振り込まれる
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厚生年金の平均月額は男性が約17万円、女性が約11万円で、男女差は約6万円に上る
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厚生年金の加入期間や現役時代の収入次第で、受給額は月6万円台〜17万円台まで開きが出る
1. 【早見表】8月と10月で変わる、年金の「手取り額」——仮徴収と本徴収のカラクリ
公的年金は偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に、前2か月分がまとめて支給されます。ここで見落とされがちなのが、天引きされる社会保険料や税金の算定タイミングです。
日本年金機構は、4月・6月・8月支給分を「仮徴収」、10月・12月・2月支給分を「本徴収」と呼んで区別しています。
仮徴収では、前年度2月の天引き額と同額が暫定的に差し引かれます。一方、6月ごろに1年間の本徴収額が確定すると、そこから仮徴収分を差し引いた残りの金額が、10月以降の3回に分けて天引きされる仕組みです。
まとめると、仮徴収の対象月は4月・6月・8月で、前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。本徴収の対象月は10月・12月・2月で、6月ごろに確定する年間決定額から仮徴収分を差し引いた残りを3等分した額が天引きされます。
つまり、前年から税額や保険料に変動があった場合、10月支給分から手取り額が変わる可能性があります。「前回より振込額が少なくなった」と感じても、年金額そのものが減ったわけではなく、天引きされる側の金額が変わっただけ、というケースが実際には多いのです。
2. 年金から天引きされる4つのお金
年金の「額面」から実際に差し引かれる項目は、大きく分けて4つあります。
まず、介護保険料です。65歳以上の人は原則として年金からの特別徴収(天引き)で介護保険料を納めます。
次に、後期高齢者医療保険料または国民健康保険料(税)です。75歳以上は後期高齢者医療制度の対象となり、保険料が特別徴収されます。75歳未満で国民健康保険に加入している場合は、国民健康保険料(税)が同様に天引きされます。
3つ目は、所得税および復興特別所得税です。これは、年金支払額から社会保険料や各種控除額を差し引いた後の金額に、5.105%の税率を掛けて算出されます。
4つ目が、個人住民税および森林環境税です。前年の所得をもとに市区町村が税額を決定し、年金から特別徴収されます。
これら4項目を控除したあとに実際に口座へ振り込まれる金額が、いわゆる「手取り額」にあたります。
特に介護保険料や国民健康保険料(税)、個人住民税は市区町村が算定するため、6月時点ではまだ確定していないケースも多くあります。
6月に送付される年金振込通知書に記載された「8月以降の額」は、あくまで前年と同額を仮置きした予定額であり、市区町村の決定額が出そろった段階で天引き額が変動し、新たな通知書が届くことがあります。
3. 厚生年金の加入期間で変わる受給額——5つのモデルケース
天引きされる前の「額面」自体にも、現役時代の働き方によって大きな差が生じます。2026年度に65歳になる人を対象にした5つのモデルケースを見ると、その差は歴然としています。
男性・厚生年金中心の人(厚生年金加入期間39.8年、平均収入50万9000円)は、基礎年金部分6万9951円と厚生年金部分10万6842円をあわせた月額17万6793円です。
女性・厚生年金中心の人(加入期間33.4年、平均収入35万6000円)は、基礎年金部分7万1881円と厚生年金部分6万2759円をあわせた月額13万4640円になります。
一方、女性・国民年金第3号被保険者中心の人(加入期間6.7年、平均収入26万3000円)の月額は7万8249円、男性・国民年金第1号被保険者中心の人(加入期間7.6年、平均収入36万4000円)の月額は6万3513円、女性・国民年金第1号被保険者中心の人(加入期間6.5年、平均収入25万1000円)の月額は6万1771円となっています。
最も月額が高いケース(男性・厚生年金中心)と、最も低いケース(女性・国民年金第1号中心)では、月額で11万円以上の差があります。
厚生年金の加入期間の長さと、現役時代の平均収入が、受給額を左右する大きな要因であることがわかります。
4. 平均月額に見る男女差とボリュームゾーン
実際の受給者全体の分布を見ても、この傾向は表れています。
厚生年金の平均月額は全体で15万289円ですが、男性は約17万円、女性は約11万円と、男女差は約6万円に達します。もっとも受給者が多いボリュームゾーンは月9万円以上12万円未満で、全体の2割近くが集中しています。
一方、国民年金の平均月額は全体で5万9310円です。男女差は小幅にとどまりますが、ボリュームゾーンは月6万円以上7万円未満に集中しており、月3万円未満の受給者も約95万人に上ります。
5. 筆者からのコメント
年金の天引き項目や受給額の差は、通知書の数字を眺めるだけではなかなか実感しにくいものです。
「ねんきんネット」に登録すると、自分の年金記録や将来の見込み額をいつでも確認でき、天引きされる社会保険料の内訳についても、届いた通知書と照らし合わせながら把握しやすくなります。
特に厚生年金の加入期間は、転職や退職、扶養に入っていた時期などの記憶と、実際の記録がずれていることも珍しくありません。
年に一度届く「ねんきん定期便」を待つだけでなく、気になったタイミングでねんきんネットにアクセスし、自分の加入履歴と見込み額を確認しておく習慣を持っておきたいものです。
とりわけ厚生年金への加入期間が短い人ほど、早めに実態を把握しておくことで、働き方の見直しや老後資金の準備にかけられる時間的余裕が生まれるはずです。




