物価や賃金の変動に合わせて毎年見直される公的年金。2026年度は増額改定となり、国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%の引き上げに。この改定率は、6月15日に支給された4月・5月分からすでに反映されています。
しかし、いざ年金を受け取り始めると、「増額されたはずなのに、思っていたより少ない…」「この金額で本当に生活できるの?」と戸惑う方も少なくありません。
本記事では、年金から天引きされる税金・社会保険料のカラクリ(本徴収と仮徴収)や、多様化する働き方別の受給モデルケースを徹底解説。
あなたの「本当の手取り額」を知り、老後のリアルな生活設計に役立てるためのポイントをお届けします。
- 年金にも額面と手取りがあり、天引きにより手取りは約85〜90%に。10月から振込額が減るケースもあるため注意が必要です。
- 現役時代の年収や、厚生年金・国民年金どちらを中心とした働き方だったかによって、将来の年金受給額には大きな差が生まれます。
- 年齢によって「ねんきん定期便」の見方は異なります。将来のリアルな数字を早めに把握し、新NISAなどで老後の生活設計を。
1. 【早見表付き】8月と10月で手取りが変わる?年金からの天引き「本徴収と仮徴収」
公的年金は、額面がそのまま口座に振り込まれるわけではありません。現役時代の給与と同様に、所得税、住民税、介護保険料などの税金・社会保険料が「天引き(特別徴収)」されます。
さらに注意したいのが、「8月と10月で実際に振り込まれる年金額(手取り額)が変わる場合がある」という事実です。
年金から天引きされる税金や保険料は、前年の所得をもとに毎年6月頃に年間決定額が計算されます。そのため、天引きのタイミングは以下の2つに分かれています。
1.1 手取り額が変動する要因(仮徴収と本徴収の違い)
年金から天引きされる主な項目には、所得税、住民税、介護保険料、国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)などがあります。これらの税金や保険料は、前年の所得をもとに毎年6月頃にその年の年間決定額が計算されます。
年金は原則として偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に前月・前々月の2ヶ月分が支給されますが、税金や保険料が天引きされるタイミングは、以下の2つの期間に分かれています。
- 仮徴収(対象となる年金支給月:4月・6月・8月):今年度の税額が未確定のため、原則「前年度の2月」と同額を暫定的に天引きします。
- 本徴収(対象となる年金支給月:10月・12月・2月):6月に確定した「今年度の年間決定額」から仮徴収分を差し引き、残りを3分割して天引きします。
その年の年間保険料や住民税額がまだ確定していない(あるいは役所からのデータ連携が間に合わない)ため、原則として「前年度の2月」と同じ金額が暫定的に天引きされます。
退職直後や、前年に不動産売却などで一時的な高収入があった方は特に注意が必要です。
4〜8月は低い所得水準のデータで仮徴収されますが、10月支給分からは「前年の高所得」をベースにした本来の天引きが一気にスタートします。その結果、「10月から急に手取りが数万円も減った」という事態も起こり得ます。
手取り額は、扶養家族の有無や額面によって約85%〜90%になることが一般的ですが、住民税非課税世帯に該当すれば天引きは最小限に抑えられます。
毎年6月に届く「年金振込通知書」で、10月以降の控除後の振込額(手取り額)の推移や天引きの内訳を必ず確認し、家計の予算作りに役立てましょう。
2. 厚生年金加入期間がカギ!働き方と年収で変わる「厚生年金・国民年金」の受給額
現代は働き方やライフスタイルが多様化しており、「自分の場合は将来いくら年金をもらえるのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、年金の加入履歴を5つのパターンに分け、「2026年度に65歳になる方」を想定した年金額の概算を紹介します。

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(色枠は筆者加筆)
2.1 ケース1:男性・厚生年金中心の働き方
年金月額(概算):17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円(※賞与を含む月額換算。以下同様)
- 基礎年金部分:6万9951円
- 厚生年金部分:10万6842円
2.2 ケース2:男性・国民年金(第1号被保険者)中心の働き方
年金月額(概算):6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金部分:4万8896円
- 厚生年金部分:1万4617円
2.3 ケース3:女性・厚生年金中心の働き方
年金月額(概算):13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金部分:7万1881円
- 厚生年金部分:6万2759円
2.4 ケース4:女性・国民年金(第1号被保険者)中心の働き方
年金月額(概算):6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金部分:5万3119円
- 厚生年金部分:8652円
2.5 ケース5:女性・国民年金(第3号被保険者)中心の働き方
年金月額(概算):7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金部分:6万9016円
- 厚生年金部分:9234円
これらのモデルケースからもわかるように、厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入は、将来の年金月額に大きく影響します。
特に、現役時代に国民年金と厚生年金のどちらを主として加入していたかによって、老後の受給額に大きな差が生まれることが見て取れます。
3. 受給額の「ボリュームゾーン」と男女差の実態
厚生労働省のデータによると、厚生年金の受給額は個人差が非常に大きく、平均月額は全体で15万289円です。
しかし、男女別に見ると男性が約17万円、女性が約11万円と、現役時代の勤続年数や働き方の違いから約6万円の格差が生じています。
受給者の分布を見ると、全体の2割近くが集中する最大の山(ボリュームゾーン)は「9万円以上〜12万円未満」です。
一方、国民年金の平均月額は全体で5万9310円と男女差は小幅です。
国民年金の受給者は「6万円以上〜7万円未満」に圧倒的なボリュームゾーンを形成しています。月額3万円に満たない受給者も約95万人存在するため、現役時代の保険料の未納や免除期間は将来の年金額に直結します。
手遅れになる前に、iDeCoや新NISAなどの自助努力を組み合わせて老後の生活設計を立てることが大切です。
4. 監修者からのコメント
厚生年金の平均月額において、男女間で約6万円もの差が生じている背景には、結婚・出産による離職や時短勤務、扶養内パート(第3号被保険者)といった、女性ならではの働き方の変化が大きく影響しています。
「夫の年金があるから大丈夫」と思っていても、実際の生活費や万が一の単身化リスクを考えると心許ないケースも少なくありません。
まずはご自身の年金が将来いくらになるのか「現状」を正しく把握し、不足分をどう補うか早めに検討することが重要です。



