公的年金だけで老後の生活が足りるのか、不安に感じたことがある方もいるのではないでしょうか。

そうした不安から、個人型確定拠出年金(iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)を使って年金に上乗せする資産形成を検討する方が増えています。

iDeCoは掛金全額が所得控除の対象になったうえ、運用益も非課税、受け取るときも控除が使える三重の税制メリットがある制度です。一方でNISAは、掛金そのものへの所得控除はないものの、運用で得た利益がまるごと非課税になる制度で、両者は税制上の仕組みがまったく違います。

この記事では、iDeCoとNISAそれぞれの税制メリットとデメリットの違いについて解説します。

なお、新NISA制度の詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション 新NISAの基本を解説!おさえておきたい「非課税」のメリット
【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション 新NISAの基本を解説!おさえておきたい「非課税」のメリット
ココがポイント
  • iDeCoは「掛金の所得控除」「運用益非課税」「受取時の控除」という三重の税制メリットがある一方、原則60歳まで引き出せない
  • NISAは掛金の所得控除はないが、生涯1800万円まで運用益が非課税になり、いつでも引き出せる自由度がある
  • どちらが優れているかではなく、資金を使いたい時期や勤務先の制度に合わせて選ぶ・併用することが大切

1. iDeCoの税制メリット。掛金の所得控除・運用益非課税・受取時控除の三重優遇

iDeCoは「掛金の所得控除」「運用益の非課税」「受取時の控除」という3つの税制メリットを持つ制度です。それぞれの仕組みを見ていきます。

1.1 掛金は全額が所得控除の対象になる

iDeCoの掛金は、拠出した全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。

課税所得に対する税率が所得税・住民税ともに10%の場合、毎月1万円の掛金であれば、年間で「2万4000円」程度の税負担が軽くなる目安とされています。

税率は収入によって変わるため、軽減額は人によって差があります。

1.2 運用期間中の利益は非課税で再投資される

通常、投資信託などを運用して得た利益には20.315%の税金がかかります。

iDeCoの場合はこの運用益がまるごと非課税になり、税引き前の利益をそのまま再投資に回せる仕組みになっています。

1.3 受け取るときも「退職所得控除」「公的年金等控除」が使える

iDeCoの資産を受け取るときは、一時金として受け取る方法と、年金として受け取る方法を選べます。

一時金の場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」の対象になり、受取時にも税制上の優遇があります。

中本 智恵
窓口で相談を受けていた頃、iDeCoの掛金控除まで理解して活用している方は思ったより少なく、税制メリットの説明から始めることが多かったという印象があります。所得税や住民税の負担を今のうちに軽くしておきたいと考える方には、まず控除の仕組みを丁寧に伝えるようにしていました。受け取り方によって使える控除の種類が変わる点まで理解されている方は、さらに限られていたという実感もあります。

2. NISAの税制メリット。掛金の所得控除はないが、運用益は非課税

NISAはiDeCoとは仕組みが異なり、掛金そのものへの所得控除はありません。優遇されているのは運用益の部分です。

2.1 NISAには掛金の所得控除という仕組みがない

NISAで投資した金額は、iDeCoのように所得控除の対象にはなりません。

そのためNISAだけを利用していても、その年の所得税や住民税が軽くなるわけではないという点は、iDeCoとの大きな違いといえます。

2.2 非課税保有限度額は生涯で「1800万円」

NISA口座で投資した金融商品から得られる売却益や配当は非課税になります。

新NISA制度全体の仕組みについては、LIMOの記事「【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション 新NISAの基本を解説!おさえておきたい「非課税」のメリット」でも詳しく解説しています。

生涯にわたる非課税保有限度額は合計1800万円で、そのうち成長投資枠は最大1200万円まで利用でき、売却すれば枠が復活します。年間の投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。

iDeCoとNISAの税制メリットの違い(掛金の所得控除・運用益の非課税・受取時の控除)を一覧で整理1/1

iDeCoとNISAの税制メリットの違い(掛金の所得控除・運用益の非課税・受取時の控除)を一覧で整理

iDeCo公式サイト、金融庁NISA特設ウェブサイトをもとにLIMO編集部作成

3. iDeCoとNISA、デメリットも押さえておきたい違い

税制メリットだけを見ると良いことずくめに感じますが、それぞれにデメリットもあるため、あわせて確認しておきたいところです。

3.1 iDeCoは原則60歳になるまで引き出せない

iDeCoの資産は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。

急にまとまったお金が必要になっても取り崩せないこともあるため、流動性の低さはiDeCoの大きなデメリットといえます。

3.2 NISAはいつでも引き出せるが所得控除は使えない

NISAは資産をいつでも引き出せる自由度の高さが特徴です。

そのかわり、掛金の所得控除という仕組みはないため、今の所得税や住民税を軽くする効果は期待できません。

中本 智恵

銀行員だった頃、資産運用の窓口で「NISAとiDeCo、結局どちらがお得なんですか」と聞かれることがよくありました。税制のメリットが働く場所が違うだけで、どちらが優れているという単純な話ではないというのが実感です。

窓口で相談を受けていた印象では、まず始めやすいNISAから資産形成をスタートし、収入や家計に余裕が出てきた段階でiDeCoを検討するという流れで相談に来られる方が多かったように思います。

どちらか一方を選ぶというよりも、それぞれの税制メリットとデメリットを理解したうえで、ご自身の資金の使い道や引き出し時期に合わせて併用を検討することが、老後の年金の上乗せを考えるうえでは現実的な選択肢になると感じています。

実際に、勤務先に企業型確定拠出年金がある方から、iDeCoの掛金の上限についてご質問をいただくことも多くありました。制度が複雑に感じられるからこそ、まずは基本の仕組みを知っておくことが大切だと感じています。

税制優遇は魅力的ですが、それだけで判断するのではなく、ご自身のライフプランに沿った資金計画を立てることが、長期的な資産形成では欠かせないと考えています。迷ったときは一人で抱え込まず、金融機関の窓口や税務署に相談しながら進めていただきたいと思います。