3. 【元銀行員のアドバイス】今からできる3つの相続対策
では、相続トラブルを防ぐために今からできることはあるのでしょうか。元銀行員の筆者から3つの対策を紹介します。
3.1 どれくらいの資産があるか共有しておく
亡くなった後に相続人が最初に直面するのが、相続資産の把握です。近年は通帳を発行しない金融機関も増えており、「どこにどれくらいの資産があるのか」を把握するだけでも相当な労力がかかることがあります。
特に不動産は相続人間で分けることが難しく、トラブルになりやすい資産のひとつです。
元気なうちから家族間で保有資産を共有し、できれば「相続人間でどのように分けるか」というところまで話し合っておくと安心です。
「子どもに資産を早くから知らせたくない」という場合は、保有資産のリストを自分で作成しておき、亡くなった後の相続手続きに役立ててもらうようにするとよいでしょう。
3.2 法的効力のある遺言書を作成する
遺された家族がスムーズに相続手続きを進めるためには、遺言書の作成も有効です。
遺言書は自分で作成することもできますが、法的要件を満たしていなければ無効になる可能性があります。法的に有効な遺言書を残す方法としては、大きく「自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用する方法)」と「公正証書遺言」の2つがあります。
| 自筆証書遺言(保管制度なし) | 自筆証書遺言(保管制度あり) | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|---|
| 作成方法 | 本人が全文・日付・氏名を自書(証人は不要) | 本人が全文・日付・氏名を自書(証人は不要) | 公証人と2名以上の証人の立ち会いが必要 |
| 保管場所 | 自分で保管 | 法務局で保管 | 公証役場で保管 |
| 費用 | 不要 | 申請時に3900円のみ | 財産の価格に応じた手数料 |
| 家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 死亡時の通知制度 | なし | あり(指定した最大3名に通知) | なし |
出所:法務省「自筆証書遺言書保管制度のご案内」(令和7年版パンフレット)をもとにLIMO編集部作成
法務省が運営する自筆証書遺言書保管制度を利用すると、法務局が遺言書を厳重に保管したうえで様式上の不備がないかも確認してくれるため、家庭裁判所の検認が不要になります。保管の申請時に3900円の手数料がかかるだけで、その後の保管料はかかりません。あらかじめ指定しておけば、遺言者が亡くなった際に指定した方(最大3名)へ保管の事実が通知される仕組みも用意されています。
法務省民事局の公表資料によると、この制度は2020年7月の運用開始から2026年7月までの累計で12万7253件の保管申請(保管件数12万6976件)があり、多くの人に利用されていることが分かります。
一方、公正証書遺言は公証人と2名以上の証人の立ち会いのもとで作成するため、内容の有効性についてより高い確実性が期待できますが、財産の価格に応じた手数料がかかります。費用や手間はかかりますが、確実性をより重視する場合はこちらも検討してみましょう。
どちらの方法を選ぶ場合でも、遺言書を作成した場合は家族にその事実を共有するようにしてください。
3.3 法定相続人を正確に把握する
相続手続きは、基本的に法定相続人が行います。遺産の分け方も法定相続人が同意する必要があるため、「誰が法定相続人になるのか」ということを正確に把握しておきましょう。
実際の相続手続きでは、戸籍を確認した結果、亡くなった方が以前の婚姻で設けていた子どもの存在が判明し、面識のない相続人と連絡を取らなければならないケースも見られます。こうした子どもも法定相続人にあたるため、相続手続きを進めるには連絡先を確認し、意思確認を行う必要があります。
場合によっては法定相続人と連絡が取れず、相続手続きが長期間停滞してしまうこともあります。
「まさか我が家に限って」と思わず、「法定相続人が何人いるのか」ということはきちんと確認しておくことがおすすめです。
4. 大切なのは日頃から相続について話し合っておくこと
今回は、統計データをもとにした相続トラブルの実態と、ご家族の負担を減らすための3つの対策について解説しました。相続トラブルはどの家庭にも起こり得る一般的なトラブルです。
いざ相続が発生してから話し合おうとすると、どれくらいの資産があるのか分からなかったり、分割方法をめぐって対立してしまったりするケースも珍しくありません。
大切なのは日頃から家族間で相続について話し合っておくことです。
まずは、「どんな資産があるか」「どのように分けたいか」「誰が法定相続人か」という3点を家族間で確認することから始めてみましょう。
参考資料
椿 慧理
