4. 40歳代・50歳代に多い「もう遅いかもしれない」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・神田翔平が伝えたいこと

40歳代から50歳代にかけては、子どもの教育費のピークを迎えたり、老後資金への不安が急に現実味を帯びてきたりして、資産運用を真剣に考え始めるという声をよくいただきます。

4.1 40歳代・50歳代に多いお悩みは「もっと早くから資産運用に取り組んでおけばよかった」

40歳代のお客様
会社員をしています。子どもの進学で教育費がかさむ中、将来に向けた資金準備に焦りを感じています。夫婦で複数の保険に加入していて、預貯金も数百万円規模で準備してきましたが、「もっと早くから資産運用に取り組んでおけばよかった」というのが、正直な気持ちです。自分で情報を集めてみたものの、自分だけで資料を見ていると不安が募ってしまい、複雑な制度や商品の仕組みを前に、何から手をつけていいか迷っています。また、これまで加入してきた掛け捨ての保険に対しても、もったいないという感覚を持ちつつ、必要な保障をどう残すべきか決めかねています。

このように、手元の資金や既存の保険をどう整理し、老後に向けてどう動き出せばいいのかわからず、立ち止まってしまうという方は少なくありません。

4.2 【ファイナンシャルアドバイザー・神田翔平が回答】今あるものを生かし、目的に応じて手段を組み合わせる

神田 翔平
資産運用のリスクを軽減する手段として時間の分散の考え方があります。そのため、今からではもう遅いのではないかと思ってしまう方もいらっしゃいますが、必ずしもそうとは限りません。
世の中の運用手段は多岐にわたるため、リスクの大きさも商品によって異なります。
残りの運用に回せる期間や今の資産状況に応じて、どのぐらいのリスクまでなら許容できるのかを明確に見える化していきましょう。
また、40歳代から50歳代は健康リスクも高まってくる年代です。運用リスクの備えだけではなく、自分の健康状態に何かあった時の備えも考えた資産形成のプランを考えていきましょう。

4.3 ポイント1:これまでの資産や保険を「棚卸し」する

まず見直したいのは、すでに手元にある資産や保険の捉え方です。現状の整理を進めるなかで、「これまで貯めてきた資金があるからこそ、新しい選択肢を持てる」と気づかれる方は多くいらっしゃいます。過去の備えを否定せず、今後の資産形成に生かす視点を持つことが出発点になります。既存の保険の一部を見直し、浮いた資金を新たな運用に回すことで、必要な保障を残しつつ資産形成を両立させることもできます。過去の選択を後悔するのではなく、現状の資産をどう再配分するかを考えることが、40歳代・50歳代の資産運用において大切な視点になります。

4.4 ポイント2:保障と運用の役割を分けて手段を組み合わせる

そのうえで、運用の目的と手段の役割を明確に切り分けることも欠かせません。「保険は運用の土台ではなく、あくまでリスクに対するお守りである」という理解は、効率的な資金計画を立てるうえで大きな転機になります。保障と運用を混同せず、自由度の高い制度や老後資金に特化した仕組みなどを、目的に合わせて組み合わせていくことが求められます。自分に合った手段を無理のない範囲で継続していくことが、将来の安心につながります。

4.5 ポイント3:年齢を重ねても長期的な視点で運用を続ける

また、年齢を重ねてからの運用方針についても、長期的な視点を持つことが重要です。定年が近づくにつれて運用を保守的にすべきか迷われる方は多いのですが、「60歳までは株式中心の運用を続け、受け取り時期が近づいてから債券にシフトしていく」という考え方もあり、過度に保守的になりすぎる必要はありません。人生100年時代といわれるなか、50歳代からでも運用期間は十分に確保できます。焦って短期的な利益を求めるのではなく、長期的な視点で資産と向き合い続ける姿勢が、若い頃以上に大切になります。

4.6 ポイント4:専門家との対話で現状を客観的に見つめ直す

さらに、ご自身の状況を客観的に見つめ直す時間を作ることも有効です。「自分の状況がこんなに見えなくなっていたことに驚いた」という感想をいただくことも多く、日々の生活に追われていると、家計や資産の全体像を把握するのは難しいものです。専門家との対話を通じて現状を整理し、自分にとって本当に必要な備えを見極めることが、漠然とした不安を解消する第一歩となります。

4.7 【試算】50歳から月5万円を15年間積み立てたら、65歳でいくらになる?

「50歳代からでも運用期間は十分に確保できる」という点を、数字で確認してみます。前提は「50歳から65歳までの15年間(180カ月)、毎月5万円を積み立て、年率3%・年率5%で複利運用できたと仮定する」というもので、税金・手数料は考慮していません。実際の運用成果は市場環境によって変動するため、あくまで一定の前提を置いた目安です。

  • 積み立てた元本:月5万円 × 180カ月 = 900万円
  • 年率3%で運用できた場合:約1131万円(うち運用益は約231万円)
  • 年率5%で運用できた場合:約1324万円(うち運用益は約424万円)

15年という期間でも、年率3%なら元本の約1.26倍、年率5%なら約1.47倍という計算になります。1ページ目で見た「月10万円未満」と「月20万円以上」の20年間の差である約2400万円を、これだけで埋められるわけではありません。それでも、公的年金に上乗せする一つの柱としては決して小さくない金額です。50歳を過ぎてからのスタートでも、期間が短いぶん毎月の積立額や資産配分で調整できる余地は残っています。

「もう遅いかもしれない」と決めつける前に、既存の資産を整理し、目的ごとに手段を分け、長期的な運用方針を一つずつ整理してみることが、40歳代・50歳代からの資産形成の出発点になります。

積立額と期間の組み合わせによって資産がどう変わるかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開

5. まとめにかえて

本記事では、公的年金が「2階建て」と呼ばれる仕組みと、厚生年金(国民年金を含む)の平均月額15万289円、そして受給額の分布が「月10万円未満」19.0%・「月20万円以上」18.8%となっており、高額受給者より低額受給者のほうが多いという実態を確認しました。

あわせて、両端の層で20年間にどれだけの差が生じるかの試算と、50歳から月5万円を15年間積み立てた場合の試算も紹介しています。

平均を上回っているか下回っているかを気にする前に、まずは「ねんきん定期便」やねんきんネットで自分の見込み額を確認すること。そのうえで、公的年金で足りない部分をどう埋めるのかを、時間に余裕のあるうちに決めておくことが、老後資金の準備の出発点になります。

参考資料