公的年金の支払いは偶数月です。8月の定期支払日を終え、次の支払日は10月——この2カ月に一度のサイクルが、リタイア後の家計を支える土台になります。
とはいえ、実際に受け取れる金額は人によって大きく違います。「平均は月15万円くらい」と聞いていても、自分がその水準に届くかどうかは、これまでの働き方と収入によって決まってしまうためです。
本記事では、公的年金が「2階建て」と呼ばれる仕組みと、厚生年金・国民年金の平均月額、そして「月10万円未満」と「月20万円以上」がそれぞれ何割を占めているのかというデータを確認していきます。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 公的年金は「1階=国民年金(定額)」「2階=厚生年金(収入に応じて変動)」の2階建て。国民年金の満額は2026年度で月7万608円
- 厚生年金(国民年金を含む)の平均月額は15万289円。ただし「月10万円未満」が19.0%、「月20万円以上」が18.8%で、高額受給者より低額受給者のほうが多い
- 平均で安心せず、自分の見込み額を確認したうえで、足りない分をどう補うかを現役のうちに決めておくことが大切
1. 年金は「1階」と「2階」でできている——受給額に差がつく出発点
公的年金の基本的な仕組みは、「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認してみます。
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。1階部分の国民年金は、原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、保険料は所得にかかわらず一律(2026年度は月額1万7920円)。保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額(2026年度は月額7万608円)を受け取ることができます。2階部分の厚生年金は、会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入します。保険料は収入に応じて変動し、受給額は加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
押さえておきたいのは、1階部分が「全員共通・定額」である一方、2階部分は「収入に応じて上下する」設計になっている点です。会社員や公務員として長く働き、その間の収入が高かった人ほど2階部分は厚くなります。反対に、自営業やフリーランスとして国民年金だけに加入してきた期間が長い人は、1階部分だけが年金額のすべてになります。
つまり年金額の個人差は、受給が始まってから生まれるものではなく、現役時代の働き方の積み上がりとしてすでに決まっている、ということになります。
2. 厚生年金は平均15万289円、国民年金は平均5万9310円
実際に支給されている水準についても、「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認してみます。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
ここで見落としがちなのは、厚生年金の15万289円が「国民年金部分を含んだ合計額」だということです。1階と2階の合計で15万円台という読み方が正しく、厚生年金だけで15万円が上乗せされるわけではありません。
また、国民年金は満額でも2026年度で月7万608円という設計です。40年間きちんと納めても月10万円には届かないため、1階部分だけで生活費をまかなうことは、金額の設計上そもそも想定されていないといえます。男女差についても、厚生年金では男性16万9967円・女性11万1413円と5万円以上の開きがあり、これも現役時代の勤務期間や収入の違いを反映したものです。
3. 「月10万円未満」19.0%、「月20万円以上」18.8%——分布で見る受給額の現実
厚生年金の金額は、加入期間の長さと、その間の収入によって決まります。ここからは、国民年金部分も含めた厚生年金の受給額が、実際にどのように分布しているのかを見ていきましょう。
3.1 1万円刻みで見る「受給額ごとの受給権者数」
金額ごとの人数についても、「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認してみます。
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
この分布を割合に置き換えると、厚生年金(国民年金を含む)の受給権者(男女全体)の構成は次のようになります。
- 月額10万円未満:19.0%
- 月額20万円以上:18.8%
注目したいのは、この2つの数字の大小です。高額受給者にあたる「月20万円以上」よりも、「月10万円未満」の受給権者のほうがわずかに多いのです。平均の15万289円という数字だけを見ていると、受給者の多くが15万円前後に集まっているように感じられますが、実際には10万円を下回る層と20万円を超える層が、ほぼ同じボリュームで両端に広がっています。
【参考データ】厚生年金(男女全体)の受給額の割合
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 20万円未満の割合:81.2%
- 30万円以上の割合:0.12%
「15万円以上」がちょうど半分の49.8%、「30万円以上」はわずか0.12%です。年金だけで現役時代に近い水準を維持できる人は、ごく一部にとどまります。
さらに押さえておきたいのは、ここで紹介した割合が厚生年金(国民年金を含む)の受給者に限ったデータであるという点です。国民年金のみを受け取っている人を加えて受給権者全体で考えれば、「月10万円未満」の割合はさらに高まり、「月20万円以上」の割合は逆に下がることが推測されます。
厚生年金で月15万円以上を受け取っている人の割合や、私的年金を見直す際に押さえておきたい点についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
公的年金だけで老後を過ごす場合、現役時代と比べて収入は大きく減るのが一般的です。年金生活が始まってから慌てることのないよう、余裕のあるうちに具体的な資金計画を立てておくことが大切になります。
3.2 【試算】「月10万円未満」と「月20万円以上」、20年間でどれだけ差がつくか
両端の層でどれほどの差になるのか、一定の前提を置いて試算してみます。前提は「受給額をそれぞれ月10万円・月20万円とし、65歳から85歳までの20年間受け取り続ける」というもので、額面ベース・年金額の改定は考慮していません。あくまで目安であり、将来の受給額を保証するものではありません。
- 月10万円の場合:年120万円 × 20年 = 約2400万円
- 月20万円の場合:年240万円 × 20年 = 約4800万円
- 差額:約2400万円(月10万円 × 240カ月)
受け取り期間が25年に延びれば、差は約3000万円まで広がります。月10万円という差は毎月の家計では実感しにくい規模かもしれませんが、20年・25年という単位で積み上がると、住宅1件分に相当する差になるということです。そしてこの差の大部分は、現役時代の加入期間と収入によって決まってしまいます。だからこそ、年金額そのものを大きく動かせない年代に入ってからは、年金以外の備えをどう積み上げるかが論点になります。



