6. 年金は自動では受け取れない。請求手続きと「繰下げ受給」の仕組み

公的年金について注意したいのは、受給開始年齢を迎えれば自動的に振り込まれるわけではないことです。

日本の年金制度では「申請主義」が採られているため、年金を受給するには本人が請求手続きを行う必要があります。

受給開始年齢のおよそ3カ月前になると、日本年金機構から「年金請求書」が送られてきます。

必要事項を記入し、必要な書類を添えて提出しましょう。

年金の繰下げ受給4/5

年金の繰下げ受給

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

老齢年金は原則65歳から受け取れますが、受給開始を66歳から75歳まで遅らせる「繰下げ受給」を選ぶこともできます。

繰下げ受給では、年金を受け取り始める時期を1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金額が増え、75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%です。

また、繰下げ受給の対象となる人には、66歳から74歳まで毎年誕生月に「繰下げ見込額のお知らせ」が送られます。

受給開始を遅らせるかどうかは、健康状態や仕事を続ける期間、手元の生活資金などを踏まえて判断することが大切です。

年金は「一定の年齢になれば自動的にもらえる」ものではないため、請求手続きを忘れないようにしましょう。

一方、繰下げ受給を選べば将来の年金額を増やせますが、年金を受け取り始めるまでの生活費は別に用意する必要があります。

メリットだけでなく注意点も確認したうえで、自分に合った受給時期を考えることが重要です。

50歳を過ぎたら、「ねんきん定期便」に記載された年金見込額を参考にしながら、一度老後の家計を具体的に試算してみるとよいでしょう。

7. 8月から順次送付されている「公金受取口座登録の意向確認書」とは

ここからは、年金受給者の方がぜひ知っておきたい最新情報をご紹介します。

法改正により、現在年金を受け取っている口座情報をデジタル庁へ提供し、その口座を各種給付金などの受取口座として利用できる「公金受取口座」に登録する仕組みが整備されました。

これに伴い、2026年8月から「公金受取口座として登録することに同意するか」を確認するための意向確認書が順次送付されています。

送付対象となる方や送付スケジュールについて確認しておきましょう。

7.1 送付対象は「2026年4月15日時点で65歳以上かつ年金を受給している方」ただし例外あり

送付対象となるのは、「2026年4月15日時点で65歳以上かつ年金を受給している方」です。ただし、次のいずれかに該当する人には送付されません。

  • 公金受取口座をすでに登録している方
  • 令和8年4月に年金が支払われなかった方(全額支給停止、振込不能)
  • 国外に居住している方
  • 共済組合等から支給される年金のみを受給している方
  • 令和7年6月以降の年金請求手続きにおいて、公金受取口座への登録意思表示をした方など

7.2 送付時期は生年月日によって異なります

意向確認書の送付時期5/5

意向確認書の送付時期

出所:日本年金機構「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書の送付」をもとにLIMO編集部作成

意向確認書は簡易書留にて送付されます。なお、送付時期は生年月日に応じて1カ月ごとに区切られており、以下のスケジュールで順次発送されます。

生年月日:意向確認書の送付時期

  • 1961年4月から1955年10月まで:2026年8月頃
  • 1955年9月から1950年3月まで:2026年9月頃
  • 1950年2月から1946年7月まで:2026年10月頃
  • 1946年6月から1941年3月まで:2026年11月頃
  • 1941年2月から1938年2月まで:2026年12月頃
  • 1938年1月から1931年4月まで:2027年1月頃
  • 1931年3月以前:2027年2月頃

8. まとめにかえて|「額面」と「手取り」の両方を知ることが、安心の老後への近道

公的年金は老後の生活を支える重要な基盤です。

2026年度は国民年金・厚生年金ともに増額となった一方、年間の受給額が18万円以上になると介護保険料や後期高齢者医療保険料などが天引きされる場合があり、実際に口座へ振り込まれる金額は額面どおりとは限りません。

「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用すれば、将来の受給見込額をいつでも確認できます。

早い段階で自分の年金額や天引きの有無を把握しておくことが、計画的なリタイアメント・プランニングの第一歩となるでしょう。

また、今年8月から順次送付されている「公金受取口座登録の意向確認書」は、今後の各種給付金を迅速かつスムーズに受け取るための重要な手続きです。

具体的な問い合わせ先は市区町村や年金事務所ではなく、意向確認書や公金受取口座登録不同意申出書の提出状況などに関しては「意向確認書照会専用フリーダイヤル(0120-74-0011)」、公金受取口座登録制度など、マイナンバー制度に関しては「マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178:音声ガイダンス6番)」が窓口となる点も覚えておきましょう。

そして、こうした新制度の開始時に最も警戒すべきなのが便乗詐欺です。

「手続きを代行する」「登録には手数料が必要」などと語り、電話口で暗証番号を聞き出したり、ATMへ誘導したりする公的機関は絶対にありません。

少しでも不審な連絡があればその場で電話を切り、速やかにご家族や警察へ相談してください。

現在すでに年金を受給している人も、これからセカンドライフを迎える現役世代の人や、シニア世代のご家族がいる人も、こうした年金制度や行政手続きを正しく理解し、適切に対応していくことが求められます。

正しい知識と詐欺に対する強い防犯意識を持つことこそが、大切な資産を守り、安心できる老後を築くための確実な備えとなるでしょう。

9. 監修者からのコメント

熊谷 良子

公的年金をはじめとする社会保障制度は、度重なる法改正もあり、複雑でわかりにくいと感じてしまうかもしれません。

ただし日本の年金制度は、自ら動いて初めて権利が確定する「申請主義」が基本であることに変わりはありません。

今回取り上げた介護保険料や後期高齢者医療保険料などの天引きも、年間の受給額が18万円という一つの基準で線引きされており、こうした細かなルールを知っているかどうかで、家計の手取りに対する理解度は大きく変わってきます。

特に65歳や75歳といった年齢の節目をまたぐタイミングでは、天引きされる保険料の種類が切り替わることもあるため、年金振込通知書にはその都度目を通しておきたいところです。

また、今後は「公金受取口座登録の意向確認書」のように、年金と行政手続きのデジタル連携がさらに進んでいくと見られます。

まずは「ねんきんネット」などで自分の年金記録や見込額を定期的に確認し、こうした制度のアップデートにも目を配っていく姿勢が、将来の安心につながっていくはずです。

参考資料

池上 翠