9月に入り、朝晩は幾分過ごしやすくなってきました。今月21日には「敬老の日」を控え、離れて暮らす親や祖父母の暮らしぶりを、あらためて気にかける方も多いのではないでしょうか。
2026年度の年金額は前年度から増額されたとはいえ、物価上昇のペースに追いついているとは言い切れません。実際、低所得の年金受給者を支える「老齢年金生活者支援給付金」の基準額は月5620円(前年度比3.2%増)にとどまっており、ゆとりが増えたと実感しにくい方も少なくないでしょう。
一方で、60歳・65歳以上を対象にした公的な上乗せ給付や負担軽減制度は、加給年金や高年齢雇用継続給付、高額療養費制度など数多く用意されています。ただし、その大半は自分から申請しない限り一円も受け取れない「申請主義」が原則です。
本記事では、老後の家計を支える代表的な公的給付金・軽減制度を整理するとともに、2026年度から2028年度にかけて予定されている制度改正のポイントも解説します。
※本記事は一部「【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説」を引用のもと執筆しています。
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加給年金は配偶者がいれば年24万3800円上乗せ。ただし配偶者本人が年金や障害給付を受給中だと支給停止に。
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老齢年金生活者支援給付金の基準額は月5620円。所得が基準額を超えると対象外になる点に注意。
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高額療養費制度は2026年8月から限度額を見直し、年間上限も新設。在職老齢年金の基準額も65万円に引き上げ。
60歳・65歳以上がもらえる主な公的給付金・軽減制度1/10
出所:LIMO編集部作成
- 老齢年金の上乗せ:加給年金、老齢年金生活者支援給付金
- 雇用保険の給付:再就職手当、高年齢雇用継続給付、高年齢求職者給付金
- 医療・介護費の軽減:高額療養費制度、高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算療養費制度
- 自治体独自の臨時給付金(住民税非課税世帯向けなど)
1. 「申請主義」に注意!公的なお金は自分から動かないと受け取れない
老齢・障害・遺族年金をはじめとする公的制度は、老後の暮らしを支える大切な収入源です。ただし、受給資格を満たしているからといって、自動的に振り込みが始まるわけではありません。
年金の受け取りを始めるには、原則として自分自身で「年金請求書」を提出し、所定の請求手続きを行う必要があります。国や自治体が実施する給付金・補助金についても同様に、基本的には「申請手続き」が必要です。
申請期限を過ぎたり必要書類が不足していたりすると、本来受け取れるはずだった給付金が減額・不支給になる可能性もあります。まずは自分が利用できる制度を正しく知り、必要な手続きを期限内に済ませることが大切です。
2. 老齢年金に上乗せできる「加給年金」と「老齢年金生活者支援給付金」
シニア世代の生活を支える公的年金には、基本となる老齢年金だけでなく、一定の条件を満たすことで追加で受け取れる給付も用意されています。代表的な2つの制度を見ていきましょう。
2.1 家族手当のような「加給年金」、配偶者は年24万3800円
「加給年金」は、厚生年金の加入期間が20年以上ある方が65歳になったときなどに、生計を維持している「年下の配偶者」や「子ども」がいる場合に年金額へ加算される、いわば年金版の「家族手当」です。
- 対象:65歳未満の配偶者、または18歳到達年度末までの子(1級・2級障害の場合は20歳未満)
- 2026年度の年額:配偶者24万3800円、1人目・2人目の子は各24万3800円、3人目以降の子は各8万1300円
- 配偶者には生年月日に応じて3万6000円~17万9900円の特別加算額が上乗せされる場合がある
ただし配偶者自身が老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)や障害年金などを受給する権利を持つ場合、配偶者分の加給年金は支給停止となります。配偶者が65歳になると加給年金は終了し、代わりに配偶者本人の老齢基礎年金に「振替加算」が加算される仕組みです。
2.2 所得が一定基準以下なら「老齢年金生活者支援給付金」
「老齢年金生活者支援給付金」は、老齢基礎年金を受給している方のうち、所得や世帯の収入が一定基準を下回る場合に、生活を支える目的で年金に上乗せ支給される給付金です。老齢年金とは別の法律に基づく「給付金」という位置づけです。
- 対象:65歳以上の老齢基礎年金受給者で、同一世帯全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等収入とその他所得の合計が、昭和31年4月2日以後生まれは80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれは80万6700円以下
- 2026年度の給付基準額は月額5620円(前年度比3.2%増)
実際の給付額は、①保険料納付済期間に基づく額(5620円×保険料納付済期間/被保険者月数480月)と、②保険料免除期間に基づく額(1万1768円×保険料免除期間/被保険者月数480月)の合計で、個人ごとに算出されます。基準額をわずかに超える所得の方には、差額を補う「補足的老齢年金生活者支援給付金」もあります。
3. 働くシニアが使える雇用保険の3つの給付金
働き続けるシニア世代にとっては、仕事に関連して利用できる給付金・手当も確認しておきたいところです。一般的に60歳を境に収入が下がる傾向があるほか、60代以降の再就職が若い頃と同じようにスムーズに進むとは限りません。
※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(令和7年9月公表)によると、男性の平均給与は55~59歳の階層(735万円)が最も高く、それ以降の年齢層では下がる傾向にあります。
3.1 早期の再就職を後押しする「再就職手当」
再就職手当は、できるだけ早く仕事に就くことを支援する手当です。失業してから再就職・開業までの期間が短いほど、支給額が多くなる仕組みになっています。
- 対象:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある場合が対象。3分の1以上残して就職すると支給残日数の60%、3分の2以上残すと70%が支給される
再就職手当を受け取ったうえで再就職先に6カ月以上雇用され、賃金が離職前より下がった場合は「就業促進定着手当」の対象になることもあります。
3.2 賃金が下がったら「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が働き続ける際、60歳到達時点より賃金が下がった場合に、その一部を補う給付金です。
- 対象:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者
- 条件:賃金が60歳到達時の75%未満になった状態で働き続けること
- 支給額は最高で賃金額の10%相当(2025年3月31日以前に要件を満たした人は15%)
老齢厚生年金を受け取りながら高年齢雇用継続給付も受給する場合、在職による年金の支給停止に加え、最大で標準報酬月額の4%(同、6%)に相当する年金額も支給停止となる点には注意が必要です。
3.3 65歳以上で失業したら「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が離職し、失業状態になった場合に受け取れる給付金です。
- 対象:離職前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上ある高年齢被保険者で、求職活動をしているのに就職できない状態にある人
- 給付額:被保険者であった期間が1年未満は30日分、1年以上は50日分の基本手当相当額
65歳未満が受け取る失業手当は原則4週間に1回の認定を経て支給されますが、高年齢求職者給付金は一括で支給される点が大きな違いです。
4. 医療・介護費の負担を軽くする4つの軽減制度
60代、70代と年齢を重ねるほど家計への負担が大きくなりやすいのが「医療費」と「介護費」です。公的医療保険・介護保険には、自己負担に上限を設けたり、超過分を払い戻したりする仕組みが用意されています。
4.1 高額療養費制度
1カ月に支払った医療費の自己負担額が、年齢・所得区分ごとの「自己負担限度額」を超えた場合、その超過分が後から支給される制度です。
- 一般的な所得層(70歳未満・年収約370万~約510万円)の場合、ひと月の自己負担限度額は「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」が基本
事前手続きをしていないと、いったん窓口で多額の費用を立て替える必要が生じ、払い戻しまで3~4カ月かかることもあります。マイナ保険証を利用するか、あらかじめ「限度額適用認定証」を申請しておけば、窓口負担を自己負担限度額までに抑えられます。なお、この制度は2026年8月から見直しが予定されており、詳細は後述します。
4.2 高額介護サービス費
介護保険サービス利用時の自己負担額(1~3割)が、所得に応じた上限額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。
介護施設の食費・居住費・日常生活費や、特定福祉用具購入費・住宅改修費は計算対象に含まれない点が見落としやすいポイントです。特別養護老人ホームなどに入所すると、対象外の費用だけで毎月10万円以上かかることもあります。
4.3 高額医療・高額介護合算療養費制度
医療保険と介護保険の自己負担額を1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)単位で合算し、世帯の基準額を超えた分の払い戻しを受けられる制度です。
年度途中で75歳になり後期高齢者医療制度へ移ったり、加入する保険を切り替えたりすると案内が届かないことがあり、自分で申請しないまま2年の時効を迎えると受け取れなくなります。
4.4 住民税非課税世帯向けの臨時給付金
物価高への対応として、政府や自治体が住民税非課税世帯を対象に7万円や10万円などの臨時給付金を支給することがあります。
住民票上は非課税の単身世帯でも、税法上は課税されている人の扶養親族にあたる場合は対象外になることがあるため注意が必要です。
5. 監修者からのコメント
見落とされがちな注意点を1つ補足します。
※以下は「【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!」を一部引用しています。
60~64歳で働く人がハローワークで基本手当(失業手当)の受給手続きをすると、その期間中は特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止となります。
失業手当の日額が年金額より低いケースでは、受け取る総額が目減りすることもあり得ます。どちらを選ぶかで手取りが変わるため、ハローワークや年金事務所で事前にシミュレーションしてもらうとよいでしょう。
公的な給付金・軽減制度の多くは、知らなければ申請の機会自体を逃してしまいます。まずは自分がどの制度の対象になり得るのか、年金事務所や自治体の窓口、「ねんきんネット」などで確認する習慣をつけておきましょう。

