お盆に帰省して、久しぶりに親と顔を合わせた方も多いでしょう。次に会うのは年末年始という方にとって、いま気づいたことを整理しておくのに良い時期です。

厚生労働省の最新の簡易生命表では、平均寿命は男性81.35年、女性87.33年。長寿化が進む一方で、65歳以上の12.3%が認知症と推計されています。判断や手続きが難しくなる前に何を確認しておくか、という問いが現実味を帯びてきます。

この記事では、まず厚生年金の受給額の分布を確認し、平均寿命と認知症の現状、そして終活・エンディングノートの実行状況を見ていきます。

なお、厚生年金の受給額や老後の家計・資産管理に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!
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ココがポイント
  • 厚生年金の平均は15万289円。受給額が最も多い階級は10万円以上11万円未満で111万2828人となっている。
  • 平均寿命は男性81.35年・女性87.33年。65歳以上のうち認知症が約443万人(12.3%)、軽度認知障害(MCI)が約559万人(15.5%)と推計されている。
  • 「終活」の認知度は96.9%。ただしエンディングノートの所有率は70歳代以上で24.2%、持っている人のうち書けているのは約5割にとどまる。

1. 厚生年金「10万円未満」と「20万円以上」、多いのはどちらか

厚生年金の平均月額と受給額の分布については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。

厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(国民年金の金額を含む)。1万円ごとの受給額分布をみると、10万円以上11万円未満が111万2828人と最も多く、次いで11万円以上12万円未満が107万1485人、15万円以上16万円未満が96万5035人と続きます。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じます。

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

冒頭の問いに答えるには、1万円刻みの分布を全体で見る必要があります。同じ記事から、受給権者数の内訳を引用します。

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

1.1 【独自試算】10万円未満305万人、20万円以上302万人でほぼ互角

冒頭の問いを、実際に積み上げて確かめてみましょう。分布の階級を「10万円未満」と「20万円以上」に分けて合計します。

  • 10万円未満(~1万円から9万円以上10万円未満まで):305万3974人(全体の19.0%)
  • 20万円以上(20万円以上21万円未満から30万円以上まで):302万7673人(全体の18.8%)
  • その差:わずか2万6301人(10万円未満が約1.01倍)

答えは「ほぼ同数」です。10万円未満のほうがわずかに多いものの、差は1%にも届きません。低い側と高い側が、ほぼ同じ規模で存在しているということです。

では中間はどうなっているのか。10万円以上20万円未満の階級を合計すると1000万4049人、全体の62.2%を占めます。受給権者の6割強がこの範囲に収まり、その外側に両端がほぼ均等にぶら下がっている形です。

「平均15万289円」という数字は、この62.2%の帯のなかにあります。ただし両端に300万人規模の層がそれぞれ存在するため、平均だけを見て自分の見込み額を推測するのは避けたいところです。

※厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」に記載された1万円刻みの受給額分布の人数を階級ごとに合計した目安です。階級の境界で単純に区切って算出しており、実際の受給額は個人ごとに異なります。

橋本 優理
ご相談の場で「親の年金がいくらか分からない」というお話は本当によく出てきます。この分布を見ていただくと、推測がいかに難しいかが分かります。10万円未満と20万円以上がほぼ同数で並んでいるのですから、見た目や現役時代の職業から当てることはできません。親御さんの家計を一緒に考える場面では、まず年金額を確認するところから始めてください。年金振込通知書か、ねんきんネットで確認できます。ご本人の同意を得て、金額を共有しておくだけでも判断の土台ができます。

2. 平均寿命は男性81.35年・女性87.33年|65歳以上の12.3%が認知症

厚生労働省が公表する「令和7年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.35年、女性が87.33年。前年と比較して男性は0.25年、女性は0.20年上回っており、長期的にも大きく伸びています。

長い老後を豊かに過ごすには、資産形成に加え、公的年金や医療・介護リスクへの理解が重要です。そして長寿化のなかで避けて通れないのが「認知症」への備えです。

2.1 認知症とMCIを合わせると65歳以上の27.8%

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)2/3

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)

出所:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」

65歳以上のシニア層3603万人を対象にした令和4年度(2022年度)の推計によると、65歳以上の高齢者における現状は以下のとおりです。

  • 認知症: 約443万人(12.3%)
  • 軽度認知障害(MCI): 約559万人(15.5%)

認知症とその前段階とされるMCI(軽度認知障害)を合わせると約1002万人、65歳以上の27.8%にあたります。およそ3.6人に1人が、認知機能に関して何らかのサポートや注意が必要な状況にあると推計されているということです。認知症は身近な問題であり、MCI段階での対応が生活の質を左右します。

判断能力が低下したときに現実の問題として現れるのが、預金口座の扱いです。この点について、LIMOの記事「【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!」から要点を引用します。

銀行は口座名義人の財産を不正利用や詐欺から守るため、名義人が認知症などにより意思能力を喪失したと判断した場合、口座の取引を制限(事実上の凍結)します。この状態になると、たとえ配偶者や子どもであっても「親の介護施設の入居費用を支払いたい」と窓口で申し出るだけでは、預金を引き出すことは原則としてできません。

出所:【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!

こうした背景から注目されているのが「終活」です。判断能力が保たれているうちに何を整えておくかが、後の選択肢を左右します。

橋本 優理
口座が凍結されると、医療費や介護費であっても親族が引き出すことは原則できません。ここが「元気なうちに」と言われる理由です。ご相談では、親御さんの契約状況を棚卸しするところから始めていただいています。どの金融機関に口座があるか、保険はどこと契約しているか。この一覧があるだけで、いざというときの動きがまったく変わります。ただし、ご家族だけで契約内容を照会したり変更したりできるとは限りません。誰がどこまで手続きできるかは契約や制度ごとに異なりますので、金融機関の窓口で確認してください。

3. 終活とエンディングノート|認知度は高いが実行が追いついていない

【グラフ】終活に対するイメージ(全体・男女別・年代別)3/3

【全体・男女別・年代別】終活に対するイメージのグラフ

出所:NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)

長寿化と認知症リスクを見据え、注目されているのが「終活」です。NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)の「第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)」によると、「終活」という言葉の認知度は96.9%と高い一方、「エンディングノート」は認知されていても実行が進んでいません。とくに高齢になるほど「まだ早い」という心理や体力面の問題から、記入が進みにくい傾向があります。

3.1 エンディングノートの認知度・所有率・実行率

  • 認知度:60歳代以上で9割を超える。
  • 所有率:70歳代以上が24.2%と最も高いが、50歳代以下は1桁台。
  • 実行率(持っている人のうち):20歳代が9割以上書いているのに対し、70歳代以上は約5割にとどまる。

高齢になるにつれて、書くべき項目が多岐にわたることや、「まだ早い」という心理的な先送り、あるいは健康上の理由などから筆が進みにくくなるのかもしれません。資産や医療・介護の希望を反映するためにも、気力・体力が充実しているうちから準備を始めることが重要です。

【調査概要】NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)

  • 調査目的 :高齢社会における終活意識の実態を明らかにし、個人が豊かで安心した人生後半期を送るための支援策や啓発活動に役立てる
  • 調査対象 :20~89歳の男女
  • 調査地域 :全国
  • 調査方法 :インターネットリサーチ
  • 調査時期 :2024年12月4日(水)~12月6日(金)
  • 回答者数 :2052名
  • 割付方法 :人口構成比割付(令和2年国勢調査の性年代別人口比率に基づく)
  • 調査委託先 :株式会社マクロミル

3.2 【独自試算】書き終えている70歳代以上は約12.1%|8人に1人

「所有率24.2%」と「実行率約5割」という2つの数字を掛け合わせると、実際にエンディングノートを書けている人の割合が出ます。70歳代以上で計算してみましょう。

  • 所有率24.2% × 実行率約50% = 約12.1%
  • 言い換えると、約8人に1人

認知度は60歳代以上で9割を超えているのに、実際に書き終えている人は8人に1人程度という計算になります。認知度と実行の間に、大きな開きがあるということです。

この数字を、先に見た認知症の推計と並べてみます。65歳以上のうち認知症が12.3%、MCIを含めると27.8%。エンディングノートを書き終えている70歳代以上の約12.1%という割合は、認知症の推計値とほぼ同じ水準です。

両者は別の調査による別の数字なので直接比べるものではありませんが、「準備が整っている人の割合」と「判断が難しくなっている人の割合」が同程度にとどまっているという構図は押さえておきたいところです。所有率が最も高いのが70歳代以上で、実行率が最も低いのも70歳代以上という点も見逃せません。買ったものの書けていない、という状態が起きやすい年代だといえます。

※NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)「第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)」に記載された所有率と実行率を掛け合わせた目安の試算です。実行率は「持っている人のうち書いている人の割合」であり、記入の完成度は考慮していません。認知症の推計値は別の調査(政府広報オンライン)によるもので、対象年齢も異なります。

4. 監修者コメント:元気なうちにしか整えられないものがある

熊谷 良子

この記事は、年金の受給額分布、平均寿命、認知症の推計、そして終活意識の調査という性質の異なるデータを並べています。それぞれ調査主体も対象も違うため単純には結びつけられませんが、「長く生きる」「判断が難しくなる可能性がある」「準備は進んでいない」という3つの事実が同じ画面にある点に意味があります。

私自身、家族の介護を経験して痛感したのは、必要になってから調べるのでは間に合わないということでした。口座が凍結されてからでは、選べる手段が限られます。エンディングノートに限らず、どこに何があるかを書き出しておくだけでも、後に残る家族の負担は大きく変わります。

データの読み方として気をつけたいのは、所有率と実行率を分けて見ることです。この記事の試算のとおり、持っていることと書けていることは別です。買って安心してしまう段階で止まっている方は少なくないでしょう。全項目を埋めようとせず、預貯金と保険の一覧だけでも先に書く、という進め方でよいと思います。

そして手続きの話をひとつ。判断能力が低下したときの財産管理の仕組みや、医療・介護の負担軽減の制度は、要件も期限も個々の状況で変わります。ご家族だけで進められる範囲にも限りがあります。まずは金融機関の窓口や市区町村の相談窓口で、いま何ができるのかを確認してみてください。