5. 「親の代わりに手続きを進めていいのか」と迷う子世代へ。申請しないと動かない場面で確認したいことをファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が整理します

親御さんの手続きを代わりに進めたい、というご相談は40代・50代の方から本当に多く寄せられます。公的な制度でも金融機関の手続きでも、申請しないことには何も始まらないため、どこから手をつけるべきか迷われる方が目立ちます。ここでは、実際のご相談をもとにした一事例として、子世代が代理で動くときの進め方をご紹介します。

5.1 教育費と親の資産が同時に重なる40代。「どこまで代わりに進めていいのか」という迷い

40代は、ご自身の教育資金や老後資金と向き合いながら、同時に高齢のご親族の資産や保険の見直しにも直面する時期に入ります。ただ、親御さんの契約内容まで細かく把握できている方は多くなく、日頃の面談では次のような声を耳にします。

40代のお客様
父は元本割れするのをあまり望んでいないというか、損したくないという気持ちが強いと思うんです。だから短期間で死亡保障が確保される商品のほうが安心感があると思っていて。ただ、父がどんな保険に入っているのか、私自身は詳しく把握できていません。

相談の場では、親御さんが元本割れをどう考えているのか、保障が確保されるまでの期間をどう受け止めているのかを、ご家族と一緒に言葉にしていきます。親御さんの意向がはっきりしてくると、選ぶ基準も定まりやすくなるものです。代理で手続きを進める場面ほど、この順番が効いてきます。

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が回答】意向を言葉にしてから、段取りを整える

橋本 優理
親の資産を勝手に金融商品に預けたり、保険を勝手に契約することはできません。
しかし、「親のことだからできない」と決めつけて何もしないまま放置しておくことは危険です。
まずは親御さんの保険の契約状況や金融資産の状況を棚卸しすることから始めてみましょう。
「なにかあったときに困るから」と直接的な表現をすると、まだ元気な親御さんは抵抗感を持つかもしれません。
帰省のタイミング等で、「自分も整理したからお母さんもやっておかない?」と気軽に声をかけてみると、話しやすくなるかもしれません。

5.3 ポイント1:親の契約状況を先に棚卸しする

まず取りかかりたいのは、親御さんの契約状況の棚卸しです。どんな保険に入っているか、預貯金がどこにあるかを把握しないままでは、そもそも新たな手続きが必要なのかどうかも判断できません。保険証券や通帳を一緒に並べ、現状を書き出すところから始めます。ここは親御さんご本人と一緒に進めることが前提で、ご家族だけで契約内容を照会したり変更したりできるとは限りません。誰がどこまで手続きできるのかは、契約や制度ごとに取り扱いが異なるため、各金融機関や公的な窓口にご確認ください。

5.4 ポイント2:手続きの負担が軽い進め方を選ぶ

次に考えたいのが、進め方そのものです。高齢の親御さんにとって、書類の記入や健康状態の告知は思った以上の負担になります。オンラインと対面のどちらで進められるのか、告知の範囲や方法にどのような違いがあるのかを事前に確認しておくと、申請の途中で止まりにくくなります。なお、公的な制度の申請は、必要書類や受付期限が制度ごとに定められています。要件・金額・期限を思い込みで判断せず、市区町村の窓口や年金事務所などの公的な窓口で最新の取り扱いをご確認ください。

5.5 ポイント3:ご家族へ早めに共有し、受取人の指定まで確認する

三つ目は、関係するご家族へ早めに共有しておくことです。きょうだいが複数いる場合、後から「聞いていなかった」となりやすいのが手続きの怖さです。可能であれば面談に同席していただき、受取人の指定まで含めて全員が把握している状態にしておくと、将来のすれ違いを避けやすくなります。ただし、誰が相続人にあたるかや、相続に関する手続きの要件・期限は、ご家族の状況によって変わり、法改正が入ることもあります。ここは断定せず、公的な窓口や弁護士・税理士などの専門家にご確認いただくのが確実です。

なお、運用性のある商品には元本割れの可能性があり、外貨建てであれば為替の影響も受けます。死亡保障が一定期間抑えられる商品もあるため、申請を急ぐ前に条件をよく確認し、親御さんご本人が納得できる範囲で進めていただくことが大切です。

ここでご紹介したのは一事例であり、必要な手続きも前提条件も、ご家族の構成や親御さんの契約内容、お住まいの自治体によって一人ひとり異なります。制度や税制の取り扱いは改正されることがあり、要件・金額・期限はご自身の状況で変わります。実際に動かれる際は、公的な窓口や金融機関で最新の内容をご確認のうえ、専門家に個別にご相談ください。

6. まとめにかえて

厚生年金の受給額を1万円刻みで積み上げると、10万円未満が305万3974人、20万円以上が302万7673人で、ほぼ同数でした。中間の10万円以上20万円未満が62.2%を占め、その外側に両端がほぼ均等に広がる形です。平均15万289円という数字だけでは、この構造は見えません。

一方、平均寿命は男性81.35年・女性87.33年と伸び続けています。65歳以上のうち認知症が約443万人(12.3%)、MCIを含めると約1002万人(27.8%)。およそ3.6人に1人が認知機能について何らかの注意が必要と推計されています。

そして終活の認知度は96.9%と高い一方、エンディングノートを書き終えている70歳代以上は約12.1%、8人に1人程度にとどまる計算でした。認知度と実行の間に大きな開きがあります。

判断能力が低下すると、預金口座の取引が制限され、家族であっても引き出せなくなることがあります。だからこそ、元気なうちに「どこに何があるか」を書き出しておくことに意味があります。全項目を埋めようとせず、預貯金と保険の一覧から始めてみてください。手続きの範囲や要件は個々の状況で変わりますので、金融機関や自治体の窓口で確認しながら進めるのが確実です。

参考資料

橋本 優理