普通車を維持するなら「年金300万円以上」が目安? 年金家計とクルマの損益分岐点を独自試算 維持費をそのままタクシー代に回すと、週2回の利用でもお釣りが来る計算に

執筆者熊谷 良子
普通車を維持するなら「年金300万円以上」が目安? 年金家計とクルマの損益分岐点を独自試算
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目次
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1. 軽自動車でも年17万円、普通車なら24万円――物価高が直撃する「車の維持費」のリアル
2. 年金家計は車を持ち続けられるか――2025年最新データで見る家計の赤字実態
3. 筆者からのコメント
4. 親の車、79.5%が「方針未定」――子の8割が伝えた注意も届かない“認知ギャップ”
5. 「もったいない」を「感謝」に変える――維持費をタクシー代に置き換えると?
5.1 増える「代理売却」――子ども世代が担う車の終活
6. まとめにかえて|車を手放すことは「不便」ではなく「自由」へのシフトチェンジ
7. 【筆者コメント】
参考資料

お盆の帰省で実家に立ち寄り、「あれ、バンパーにこんな傷あったっけ」「車検の書類、まだ出していないみたい」と、親の車にふと違和感を覚えた方もいるのではないでしょうか。

高齢の親が車を手放せずにいる背景には、長年の愛着だけでなく、他の移動手段に切り替えるコストや手間が見えにくいという事情もあります。

総務省統計局の最新データによれば、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の家計は毎月4万2434円の赤字となっており、この状態で車の維持費(年間17万円台〜24万円台)まで背負い続けることは、決して当たり前の選択とはいえません。

本記事では、公的データをもとに車の維持費の実態と、年金家計で維持できる収入の目安、そして手放したあとの移動手段や「親孝行」としての新しい選択肢までを試算します。

ココがポイント
  • 軽自動車の年間維持費は約17万円、普通車は約24万円。買い替え積立を含めると実質30万〜50万円規模に膨らむ

  • 65歳以上夫婦のみ無職世帯の赤字は月4万2434円、単身無職世帯も月約3万円の赤字が生じている

  • 維持費をタクシー代に回せば週2回以上の往復利用が可能。手放すことは「我慢」でなく「賢い選択」になり得る

1. 軽自動車でも年17万円、普通車なら24万円――物価高が直撃する「車の維持費」のリアル

「車はただ置いておくだけでお金がかかる」とはよく言われますが、実際にどれくらいの現金が家計から出ていくのでしょうか。

総務省統計局『家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の実収入は月25万4395円である一方、消費支出は26万3979円、非消費支出(税・社会保険料)は3万2850円にのぼり、毎月の赤字額は4万2434円(年間50万9208円)まで拡大しています。飲食料品や光熱費の値上げが消費支出を押し上げ、年金収入の伸び以上に物価高が先行している状況がうかがえます。

軽自動車 vs 普通車:年間維持費の内訳比較(駐車場代を除く)1/2

軽自動車 vs 普通車:年間維持費の内訳比較(駐車場代を除く)

出所:本文記載の費用相場(自動車税・重量税は総務省・国土交通省の税率区分、その他項目は一般的な費用相場)をもとにLIMO編集部作成

  • 軽自動車(660ccクラス)の年間維持費:17万2900円(自動車税1万0800円、自動車重量税3300円、自賠責保険8800円、任意保険料5万円、車検・整備代4万円、ガソリン代6万円の合計)
  • 普通車(1500ccクラス)の年間維持費:24万1600円(自動車税3万0500円、自動車重量税1万2300円、自賠責保険8800円、任意保険料6万円、車検・整備代5万円、ガソリン代8万円の合計)
  • 月極駐車場(月5000円)を利用する場合は、これに年間6万円が加算される

持ち家で駐車場代がかからない場合でも、軽自動車で月額約1万4400円、普通車で月額約2万0100円の現金が確実に消えていきます。

さらに、バッテリーやタイヤ交換などの突発的な出費や、10年ごとの買い替え費用(1台150万円と仮定した場合、年間換算で15万円)を積み立てるとすれば、実質的な年間コストは軽自動車で30万円前後、普通車では50万円規模に達します。

2. 年金家計は車を持ち続けられるか――2025年最新データで見る家計の赤字実態

この重い固定費を払いながら、貯蓄を取り崩さずに車を維持し続けるには、どの程度の年金収入が必要なのでしょうか。

軽自動車 vs 普通車:年間維持費の内訳比較(駐車場代を除く)2/2

65歳以上高齢者世帯の家計収支比較(2025年・月額平均)

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとにLIMO編集部作成

  • 夫婦のみ無職世帯:実収入25万4395円に対し、支出計(消費支出26万3979円+非消費支出3万2850円)は29万6829円で、毎月4万2434円の赤字
  • 単身無職世帯:実収入13万1456円に対し、支出計(消費支出14万8445円+非消費支出1万2990円)は16万1435円で、毎月2万9979円の赤字

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」などによれば、標準的な夫婦2人分の厚生年金額(元会社員の厚生年金+夫婦2人分の基礎年金)は月額23万7279円(年間284万7348円)です。

2026年度の年金額は前年度から国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%引き上げられたものの、前年の物価変動率(3.2%)には届いておらず、実質的な購買力はむしろ目減りしています。

普通車の維持費(積立を含め実質月額約3万円)を加えると、貯蓄を減らさずに済む年金受給額の目安は、夫婦世帯で年間350万〜400万円、単身世帯でも軽自動車の維持に年間200万円程度が下限ラインとなります。国民年金のみに頼る世帯や、平均的な厚生年金世帯にとって、車の「維持」そのものがセカンドライフの家計を揺るがす最大級の固定費リスクといえます。

3. 筆者からのコメント

熊谷 良子

車の維持費は「毎月の生活費」として意識されにくく、自動車税や車検のタイミングでまとめてまとまった痛みを感じる支出です。だからこそ、月々の家計簿だけを見ていると、その重さに気づきにくいという特徴があります。

日本年金機構の「ねんきんネット」を使えば、自分が将来受け取る年金の見込み額を早い段階で具体的に確認できますし、日本損害保険協会などが公開している任意保険料の早見表を使えば、年齢や等級に応じた相場感をつかむこともできます。

維持費を年単位で書き出し、ねんきんネットの見込み受給額と照らし合わせておくだけで、「何となく不安」という状態から、「いつ、どう備えるか」を考えられる状態に変わります。

車を手放すかどうかを判断する前に、まずは自分の家計と年金の実像を数字で把握することから始めてみてください。

4. 親の車、79.5%が「方針未定」――子の8割が伝えた注意も届かない“認知ギャップ”
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著者
二種外務員資格(証券外務員二種)記者/編集者/校閲者/

【保有資格】
ニ種外務員資格(証券外務員二種)相続診断士認知症介助士・終活ガイド資格1級保有。

【経歴】

二種外務員資格や相続診断士などの資格を保有し、「お金とくらし」にまつわる情報を専門的かつ丁寧に発信する金融メディア編集者・ライター。

早稲田大学第一文学部史学科卒。人文・社会系一般書籍、中学・高校社会科教材、就職試験問題の制作関連業務で15年以上の経験を持つ。また、大手人材派遣会社における採用管理業務などの実務経験もある。

現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』において、金融系メディアの編集者兼執筆者として、コンテンツ制作や編集を担当。

総務省「家計調査」厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」などの一次資料に基づくデータ記事の執筆に強み。

専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも記事執筆をおこなう。紙媒体での経験に加え、家族の介護を通じて得た知見を生かしながら、「お金とくらし」にまつわる情報を丁寧に発信している。(2026年7月9日更新)