9月といえば、21日の「敬老の日」を控え、離れて暮らす親や祖父母の暮らしぶりに、あらためて思いを馳せる方も多い時期ではないでしょうか。

老後の生活を支える大切な収入源である「公的年金(国民年金・厚生年金)」は、毎月ではなく2カ月に1回支給され、次回は2026年10月15日に振り込まれます。

厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」では、公的年金・恩給だけで生活している高齢者世帯は41.3%となっており、多くの人にとって年金は暮らしを支える重要な柱となっています。

一方で、残る6割近くの世帯は年金以外の収入も家計に組み込んでおり、年金だけで十分な生活を送れるかどうかは、世帯ごとの状況によって異なります。

本記事では、2026年度(令和8年度)の年金額改定や直近の支給スケジュール、平均受給額、年金を受け取るための基本手続きに加え、額面の受給額と実際の手取り額の違いに関わる「天引き」の仕組みについても解説します。

また後半では、2026年8月から日本年金機構より順次発送されている「公金受取口座登録の意向確認書」の概要や注意点についてもまとめました。

年金制度は複雑に感じることもありますが、支給日や改定内容、手続きのポイントを知っておくだけでも、将来の資金計画は立てやすくなります。今回は、直近の支給日から新たに始まる手続きまで、知っておきたいポイントを確認していきましょう。

1. この記事で押さえておきたい3つのポイント

  •  年金は受給年齢になれば自動でもらえるものではなく、自分で請求する必要があります。65歳からの受給を遅らせる「繰下げ受給」では、1カ月につき0.7%、最大84%まで年金額を増やせます。
  •  2026年8月からは「公金受取口座登録の意向確認書」が順次送付され、同意することで現在の年金受取口座を「公金受取口座」として登録・連携できます。
  •  制度変更に便乗した詐欺には注意が必要です。公的機関がATM操作を求めたり、電話で暗証番号を確認したりすることはありません。

2. 老後の収入を支える年金。実際に「年金だけ」で暮らす世帯はどれくらい?

老後の家計を考える際には、まず公的年金が生活費の中でどの程度の役割を担っているのかを知っておきたいところです。

実際に、所得のすべてを公的年金・恩給が占める高齢者世帯はどのくらいあるのでしょうか。

厚生労働省のデータをもとに確認していきましょう。

2.1 公的年金・恩給を受給する高齢者世帯の41.3%は「総所得のすべてが公的年金・恩給」

公的年金が所得に占める割合1/5

公的年金が所得に占める割合

出所:厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」

厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」によると、公的年金・恩給を受給する高齢者世帯のうち、所得のすべてを公的年金・恩給が占める世帯は41.3%でした。

一方で、約6割の世帯では、総所得の一部を公的年金・恩給以外の所得が占めています。

公的年金は老後の暮らしを支える大切な収入源ですが、年金だけで生活できるかどうかは、世帯ごとの収入や支出によって異なることがわかります。

2.2 まず確認したい「自分はいくら年金を受け取れるのか」

公的年金の受給額は、すべての人が同じではありません。

現役時代にどのような働き方をしてきたか、どの年金制度に加入していたか、保険料をどの程度納めてきたかによって、将来の受給額は変わります。

老後の生活設計を考えるには、まず自分が受け取れる年金額の目安を把握しておくことが重要です。

2.3 老後資金は「年金で足りるか」だけで考えない

親世代の暮らしを見ると、「年金収入だけで普段の生活費をまかなっている」という人がいる一方、旅行や住宅の修繕などまとまった支出が発生した際には、貯蓄を取り崩して対応しているケースもあります。

老後のお金を考えるときは、単に「年金だけで生活できるか」を確認するだけでなく、「旅行を楽しみたい」「趣味を続けたい」「今の住まいを維持したい」といった、自分が希望する老後の暮らしも考えることが大切です。

理想とする生活に必要なお金と年金見込額との差を把握できれば、資産形成や家計の見直しを考えるきっかけになります。

早い段階で不足額を知るほど、準備の方法も選びやすくなるでしょう。

次章からは、公的年金の支給について詳しく確認していきます。

3. 2026年度は年金額が引き上げ。受給額と支給日をチェック

公的年金は毎年度、物価や賃金の動きを踏まえて改定されます。

2026年度(令和8年度)は、国民年金が前年度比1.9%、厚生年金が2.0%引き上げられました。

  • 国民年金(満額):月額7万608円(前年度比+1300円)
  • 厚生年金(標準的な夫婦2人分):月額23万7279円(前年度比+4495円)

年金額は4年連続で増額となりました。

一方で、物価上昇率は3.2%であり、年金の引き上げ率を上回っていますが、実質的な購買力は低下しているため、家計管理や資産形成を計画的に進めることが重要になります。

公的年金は原則として偶数月の15日に、前月までの2カ月分がまとめて後払いされます。

15日が土日や祝日の場合には、その直前の金融機関営業日に支給日が繰り上がります。

2026年後半の支給日は次のとおりです。

【2026年度】年金支給日カレンダー

出所:日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」などをもとに筆者作成

  • 2026年 8月14日(金):2026年6月・7月分
  • 2026年10月15日(木):2026年8月・9月分
  • 2026年12月15日(火):2026年10月・11月分

次の支給日は10月15日(木)です。

2026年度の改定後の年金額はすでに6月支給分から反映されています。

次回の振込時にも、実際に入金された金額を確認しておくとよいでしょう。

4. 厚生年金・国民年金の平均受給額は?将来額の確認方法も紹介

日本の公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2階建ての仕組みになっています。

そのため、現役時代の働き方や収入、加入していた期間によって、実際に受け取れる年金額には大きな違いがあります。

4.1 厚生年金と国民年金、それぞれの平均月額をチェック

令和6年度(2024年度)の平均受給月額を確認してみましょう。

厚生年金については第1号被保険者のデータです(※注)。

厚生年金(※国民年金部分を含む)

厚生年金

厚生年金《平均月額の男女差・個人差に着目》

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 男女全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

(※注)厚生年金の被保険者は第1号から第4号まで区分されています。今回紹介している「第1号」は民間企業の会社員などを指し、「第2号」は国家公務員、「第3号」は地方公務員、「第4号」は私立学校教職員と分類されています。

国民年金

  • 男女全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

厚生年金は、加入していた期間や現役時代の収入が年金額に反映されます。

男女の平均受給額には約6万円の差があり、厚生年金の受給額は、加入期間や現役時代の収入などによって異なります。

国民年金は厚生年金ほど大きな男女差はありませんが、平均月額は約5万9000円です。

保険料を納めていない期間や免除された期間などがあることで、満額に達していない人も少なくありません。

自分が将来受け取れる年金額を知りたい場合は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用しましょう。

なお、シニア世代の「受給額分布」や「60歳代~90歳以上の各年齢の平均額」などの実際の受給額事情については、『【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金』で解説しています。

ただし、ここまで確認してきた金額はあくまで「額面」の受給額です。

ここからは、実際に口座へ振り込まれる金額に関わる「天引き」の仕組みについても確認しておきましょう。

4.2 年金が年18万円以上なら天引きの対象。介護保険料は65歳以上、後期高齢者医療は75歳以上から

「同じ年金額なのに、知り合いは天引きされていないらしい」—そんな話を耳にしたことはないでしょうか。天引きの対象になるかどうかには、はっきりした線引きがあります。

日本年金機構によると、年金から特別徴収(天引き)される対象は保険料ごとに決まっています。介護保険料は、65歳以上で老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受けている方のうち、年間の受給額が18万円以上の方です。

国民健康保険料(税)は、65歳以上75歳未満(後期高齢者医療制度の該当者を除く)で同様に年金を受けており、年間の受給額が18万円以上の方。後期高齢者医療保険料は、75歳以上の方、もしくは65歳以上75歳未満で後期高齢者医療制度に該当する方で、やはり年間18万円以上です。

住民税および森林環境税は少し条件が違います。65歳以上で、老齢もしくは退職を支給事由とする年金を受けている方が対象で、年間18万円以上という基準は同じです。裏を返せば、障害や死亡を支給事由とする年金だけを受けている方は、住民税の天引きの対象にはならないということでしょう。

共通しているのは「年間18万円以上」という基準です。月あたりにすると1万5000円。この額に届かない方は、年金からの特別徴収の対象から外れます。

自分がどの保険料の対象なのかは、年齢と年金額で決まります。まず年金振込通知書で控除欄を確かめ、詳しい内容は市区町村からのお知らせで見ておくとよいでしょう。

5. 監修者からのコメント

熊谷 良子

毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」は、50歳を境に記載内容の性質が変わることをご存じでしょうか。

50歳未満の間は、これまで納めてきた実績分だけをもとにした金額が記載されます。今後の加入期間は反映されないため、実際に受け取れる額より少なめに表示されるのが特徴です。

一方、50歳以上になると、今の条件のまま60歳まで加入を続けたと仮定した見込み額が記載されるようになります。より現実に近い数字になるため、老後の生活設計にぐっと役立てやすくなるでしょう。

紙の定期便が届くのを待たなくても、「ねんきんネット」に登録すればスマホやパソコンから最新の加入記録や見込額をいつでも確認できます。

今回ご紹介したように、年金額の改定や天引きの基準は毎年のように見直される可能性があります。届いた定期便は金額の大小だけでなく、前年からの変化にも目を通しておくと安心です。

年齢の節目ごとに数字の性質が変わることを知っておくと、将来の年金額の見通しを誤解なくとらえやすくなるはずです。